コトラ（広報チーム） 
リース業界の現状と市場規模
国内リース市場の規模と成長率
日本のリース業界は、企業の設備投資を支える重要な役割を果たしてきました。2023年度のリース取扱高は4兆6299億円となり、前年比7.4%の増加を記録しています。この成長率は、新型コロナウイルスの影響による低迷を乗り越えた市場の回復を示しています。また、今後2024年から2025年にかけては、リース取扱高がさらに12.0%増加すると予測されており、特に輸送用機器に関して13.9%の成長が期待されています。
市場全体として、以前のピークであった1991年度（8兆8016億円）には及ばないものの、デジタル化や環境対応など新たな需要の高まりが市場成長の原動力となっています。特に情報通信機器分野の需要が市場をけん引しており、近年ではこの分野が最大のリース需要先となっています。
主要分野別のリース需要動向
リース業界における主要な需要分野として、情報通信機器や輸送用機器が挙げられます。情報通信機器分野は、企業のデジタル化推進に伴い高い需要を維持しています。例えば、IoT機器やクラウド管理サーバーなどへの投資が活発で、リース契約を通じて導入されるケースが増えています。
また、輸送用機器においては、企業が脱炭素社会の実現を目指し、環境対応型の車両や設備を導入する需要が急増しています。具体的には電動化技術を搭載した車両や、自動運転関連機器のリース取引が拡大中です。このような分野における成長は、ESG投資への高い関心が背景となっており、リース市場全体に対しても穏やかな需要拡大をもたらしています。
リース業界を取り巻く内外環境の変化
リース業界を取り巻く環境は、近年大きな変化を遂げています。国内では、設備投資の需要が低迷する中で、情報通信技術の進化や新リース会計基準（IFRS16）の導入が市場に影響を与えています。これにより、企業はリース件数の戦略的な最適化に注力するようになり、オンバランス処理による財務的影響を考慮しつつ、リースを活用するケースが増えています。
一方、国際的な視点では、脱炭素化の推進が市場に新たな機会を生み出しています。リース業界は、環境対応型の機械や設備をスムーズに利用者へ提供することで、持続可能な社会の実現をサポートしています。また、日本国内の銀行系リース会社や独立系企業が海外市場に進出し、グローバルな競争力の強化を図っている点も注目です。これらの内外要因を背景に、リース業界は持続的な発展を遂げることが期待されています。
リース業界に影響を与える最新トレンド
デジタル化とDX（デジタルトランスフォーメーション）の進展
リース業界において、デジタル化やDXの進展は今後の成長における重要なポイントです。特に、リース契約のオンライン化やデジタルツールの導入が進むことで、顧客とのやり取りの効率化が図られています。また、AIやビッグデータを活用することで、企業はリース対象設備の利用状況を可視化し、資産管理を高度化することが可能です。一方で、業界における競争が激化する中で、こうしたテクノロジーをどのように駆使して独自性を出すかがカギとなっています。リース業界レポートによると、こうした動きに対応する企業が市場で優位性を持つことが予測されています。
環境エネルギー分野とサステナビリティの影響
近年、環境エネルギー分野における先進的な取り組みがリース業界にも波及しています。脱炭素社会の実現を目指す中で、再生可能エネルギー設備や電気自動車（EV）のリース需要が高まっています。また、多くの企業がESG経営を強化しているため、サステナブルな設備への投資意欲が上昇しており、それに伴いリース取扱高も増加傾向にあります。特に、太陽光発電や蓄電池リースなど、環境に優しい設備を中心とするマーケットが拡大しています。このような分野への積極的な参入は、リース企業の競争力を高める要因として注目されています。
情報通信機器やIoTリースの拡大
情報通信機器やIoT関連設備のリース需要の増加は、リース業界の成長を支える柱となっています。リモートワークやデジタルトランスフォーメーションの進展によって、企業のITインフラの重要性がますます高まっています。それに伴い、最新の通信機器やIoTデバイスをリースで利用する企業が増えています。2023年度のリース取扱高でも、情報通信機器分野が主要な需要を占めており、このトレンドはさらに加速すると見込まれています。また、短期間で最新技術を導入可能なリース方式が、企業の競争力向上に寄与している点も特徴的です。
リース業界が抱える課題と解決策
ファイナンスリースとオペレーティングリースの課題
リース業界において、ファイナンスリースとオペレーティングリースはそれぞれ異なる特性を持ち、それに伴う課題も異なります。ファイナンスリースは、主に企業の独自設備に対して担保的な役割を果たしていますが、2008年のリース会計基準の変更により、オンバランス処理が求められるようになったことで、利用者にとって財務負担感が増加しました。一方、オペレーティングリースは中途解約が可能で柔軟性があるものの、リース会社側に在庫リスクや残価リスクが生じやすく、リース対象品の管理や運用が課題となっています。
これらの課題に対する解決策として、ファイナンスリースでは新サービスの付加価値化が重要です。例えば、顧客が財務負担を軽減できるよう保険や保証を組み合わせたパッケージ型リース商品を提供することが考えられます。一方、オペレーティングリースでは、AIやIoTを活用した設備利用状況のモニタリングによる残価リスクの軽減や、リース満了後のリユース市場の形成によりリスクを緩和する取り組みが有効と言えます。
低金利環境下での収益モデルの転換
長らく続く低金利環境は、リース業界にとって収益モデルの転換を迫る大きな課題となっています。リース業の収益はこれまで金利差益に依存する部分が大きかったため、金利低下に伴い収益率が低下する傾向にあります。この状況は供給元である金融機関系リース会社にも影響しており、持続的な成長が困難になりつつあります。
収益モデルの転換に向けて、リース業界は調達コスト削減と新市場の開拓に注力すべきです。また、設備リースに付随するメンテナンスやサポートサービスの提供、環境に配慮した脱炭素設備リースの拡充など、差別化された収益源の確立も進めるべき課題となっています。さらに、近年注目されているサブスクリプションモデルを取り入れ、特定の設備やサービスの利用料金を継続的に徴収する仕組みを強化することも一つの解決策として考えられます。
競争激化への対応と差別化戦略
リース業界は現在、銀行系やメーカー系のみならず、独立系企業や海外企業の参入によって競争が激化しています。特に、規模感のある巨大企業が展開する格安リースサービスとの競争や、新技術を活用したサービス提供型リース（例：IoTデバイスやDX関連設備のリース）への対応が急務となっています。また、リース市場の成熟化に伴い、単なる価格競争に終始しない付加価値の提供が重要です。
競争激化に対応するためには、企業の独自性を活かした差別化戦略の構築が鍵となります。具体例として、ESG（環境・社会・ガバナンス）経営を意識した環境対応型の設備リース商品の提供や、業界特化型サービスによる専門性の確立が挙げられます。また、顧客データを活用したニーズの把握に基づくカスタマイズされた柔軟な提案も有効です。さらに、最新技術を活用しリース契約から稼働管理までを簡略化したワンストップサービスを提供することで、他社との差別化を図ることが求められます。
リース業界の未来展望と成長のカギ
新たな市場への進出とグローバル化
リース業界は、新たな市場への進出やグローバル化を通じてさらなる成長を目指しています。特に成長が期待される分野として、新興国市場でのインフラ設備や輸送用機器の需要が挙げられます。2024年から2025年にかけて、日本のリース取扱高が前年比12.0％増加するとの予測もあり、グローバルに広がる設備投資のニーズを取り込むことが鍵となるでしょう。また、三菱HCキャピタルのように航空機リースに巨額を投資する動きも見られ、競争力を強化するためには、成長が期待される分野への戦略的なリソースの配分が重要です。
先端テクノロジーとの融合によるサービス高度化
リース業界では、先端テクノロジーとの融合が注目されています。特に、IoTや人工知能（AI）といった技術を活用することで、従来のリースサービスの枠を超えた付加価値の高いサービスを提供できます。例えば、情報通信機器や産業機械のリースを通じて、リアルタイムでの稼働状況のモニタリングや効率的な管理を支援するサービスが可能になります。このようなサービスの高度化は、顧客満足度を向上させるだけでなく、業界全体の競争力を一段と押し上げるでしょう。
顧客ニーズに基づく柔軟なサービス提供
多様化する顧客ニーズに応えるため、柔軟なサービス提供がリース業界における重要なテーマとなっています。従来のファイナンスリースやオペレーティングリースに加え、カスタマイズ可能なリースプランや契約期間の柔軟化が求められている状況です。また、脱炭素や環境対応といったESG経営の観点から、サステナブルな設備やエネルギー関連機器をリースする事例も増加しています。これらの新ニーズに適応したサービスを提供することで、リース業界は市場のさらなる拡大と競争力の向上を実現できるでしょう。