コトラ（広報チーム） 
現状のリース業界の動向と課題
国内外での市場規模と成長率の推移
リース業界の市場規模は、国内外で異なる成長を見せています。日本国内では1990年代に取扱高がピークを迎え、1991年には約8.8兆円に達していました。しかし、2000年代後半には経済不況や会計基準の変更、さらに税制の改定などが影響し、取扱高は減少傾向となり、2010年には約4.6兆円にまで落ち込んでいます。一方、海外では技術革新や需要の多様化を背景に、成長が続いている地域も多く見られます。
また、近年、リース業界ニュースを見ても、特にIT関連機器や環境対応型リース商品の分野で新たな市場拡大が報告されています。加えて、個人向けオートリースや航空機リースなど、特定のセグメントは引き続き堅調な成長を見せており、グローバル市場のさらなる拡張が期待されています。
設備投資動向とリース需要の関係性
リース業界は基本的に企業の設備投資動向と密接に連動しています。経済の成長局面では新規設備への投資が活発化し、リース需要が増加します。一方で、不況期や経済の低迷が続く局面では、設備投資が抑制されるためリース需要も減少する傾向があります。
例えば、近年では製造業や建設業における投資動向がリース需要に大きな影響を及ぼしているほか、リモートワークの普及によって、テレワーク関連機器やロボットのリース需要が急増しているという動向もあります。これにより、特定のセクターでのリース需要が拡大し、新たな成長機会を提供していることが分かります。
業界が直面する課題：規制変化と競争激化
リース業界が直面している主な課題の一つに、規制の変化があります。特に会計基準の変更や税制改定により、業務運営や需要に影響が出ているケースが挙げられます。また、リース取引の所有権に関する偽造書類や多重リース詐欺といった不正取引への対応も、業界全体での解決が求められる課題です。
さらに、競争の激化も深刻な課題となっています。国内市場は成熟化が進む一方で、海外企業が参入することで競争環境がより複雑化しています。このような中、新しい技術やサービスモデルを取り入れることが、各リース会社の競争力を左右する重要な要素となっています。
新型コロナや地政学リスクが与える影響
新型コロナウイルス感染症の拡大は、リース業界に多大な影響を及ぼしました。特に航空機リースや大型商用機器リースの需要が落ち込む一方で、リモートワーク関連機器や消毒・衛生用品関連機器のリース需要が急増しました。また、多くの企業が経費を抑えるために所有から利用へと舵を切る流れが加速し、これがリース市場にとって新たな追い風となりました。
さらに、地政学リスクの高まりも業界に影響を与えています。輸送や貿易の混乱、素材価格の高騰などはリース商品の調達コストに影響を及ぼし、各社がその対策を模索する状況が続いています。リース業界ニュースでも頻繁に取り上げられているように、こういった環境変化への迅速な対応力が今後の成長の鍵を握るでしょう。
リース業界を革新する新技術とトレンド
生成AIやIoT活用による運営効率化
リース業界では、生成AIやIoT技術の活用が進んでいます。生成AIはデータ分析や需要予測における精度向上に寄与し、企業の意思決定を迅速化しています。一方で、IoT技術の導入は、リースされた機器や設備の稼働状況やメンテナンス状況をリアルタイムで把握することを可能にし、運営効率を飛躍的に向上させています。例えば、建設機械や車両のIoT連携により、使用状況に応じた効率的なリースプランの提案や、利用者の事故リスクの軽減も実現されています。これにより、コスト削減とともに顧客満足度の向上が狙われています。
電動モビリティとオートリースの未来
電動モビリティの普及に伴い、オートリース市場にも新たな波が訪れています。脱炭素社会を目指すグローバルな動きや日本政府の政策を背景に、電動車両の需要は急速に拡大しています。特に法人向けや個人向けのオートリースでは、電動車両への切り替えが進み、これがリース業界の成長を後押ししています。また、電動車両特有の特徴に合わせたリースプランの開発も進行中で、充電ステーションの提供やバッテリーマネジメントに関するサービスを含めた新しいビジネスモデルが注目されています。これにより、持続可能な社会実現を支える重要な役割を果たすと考えられています。
サーキュラーエコノミーにおけるリースの役割
サーキュラーエコノミー（循環型経済）の概念が広がる中、リース業界は持続可能性を推進するために重要な役割を担うようになっています。リースは「所有」ではなく「利用」に価値を置くビジネスモデルであるため、廃棄物の削減やリソースの効率的利用が可能です。具体例としては、建設機械や事務機器のリースに関するリユースやリサイクルの仕組みがあります。これにより、使用済み機器の寿命が延び、環境負荷が軽減されます。さらに、資源を循環させるこのモデルを通じて、企業はSDGs（持続可能な開発目標）の達成に寄与することが期待されています。
データ分析やブロックチェーンの応用
リース業界におけるデータ分析の進化は、顧客ニーズのより深い理解や新たなサービス開発を促進しています。市場動向を分析することで、最適なリースプランや価格設定を提案し、競争力を高めることが可能になります。同時に、ブロックチェーン技術の導入も注目されています。この技術は、リース契約の透明性向上と詐欺リスクの軽減に貢献します。例えば、多重契約や偽造書類といった業界の課題を解決するために、契約履歴を改ざん不可能な形で記録できるブロックチェーン技術の活用が期待されています。これにより、取引の信頼性が向上し、業界全体の健全な成長につながると考えられています。
リース業界におけるサステナビリティ戦略
環境対応型リース商品の普及
リース業界では、環境問題への配慮がビジネス戦略の中核として注目されています。特に再生可能エネルギーや電動モビリティの普及に伴い、それらに対応したリース商品が広がりつつあります。たとえば、太陽光発電や風力発電設備のリースは企業の脱炭素への取り組みを促進するものとして、需要が拡大しています。また、電動車両や省エネルギー型機器の導入を支援するリースプランも提供され、低炭素社会の推進に貢献しています。
こうした環境対応型リース商品の拡大は、企業にとって環境負荷を軽減しながら設備投資を抑えられる点が特長です。ニューススイッチなどのビジネスニュースでも紹介されるように、リース業界にとってこれは新たな価値提供の大きな機会となっています。
SDGs達成に向けた企業の取り組み
SDGs（持続可能な開発目標）達成に向けた取り組みは、リース業界でも重要なテーマとなっています。特に、企業が環境・社会・ガバナンス（ESG）を重視する流れが加速する中で、リース商品におけるサステナビリティの概念が欠かせなくなっています。
たとえば、商業用車両のリースサービスでは電動モビリティが主役となりつつあり、新型バッテリーシステムやエネルギー効率の高いソリューションが採用されています。また、建設機械や医療機器などでも持続可能な資源管理を目指し、リースを通じて長寿命化や再利用可能な設計が推進されています。
このような動きにより、リース業界はSDGsの目標達成に向けた重要な役割を担っています。その結果として、企業は社会的な信頼性を高めると同時に、競争力のあるビジネスモデルを構築しています。
医療・介護への対応分野の拡大
高齢化社会を迎える日本で、医療および介護分野に対するリース業界の関与が拡大しています。医療機器の導入は初期費用が大きいため、リースによる提供が施設側の財政負担を軽減する手段として広がっています。また、AIやIoTを活用した最新の医療技術を搭載した機器のリースが増えつつあり、設備導入スピードの加速にも寄与しています。
さらに、介護分野ではエアマット、電動車椅子、介護ロボットといった介助支援機器のリースが進んでおり、介護負担の軽減や効率化を実現しています。これらの設備は高齢化社会において重要な役割を果たしており、リース業界としても成長が見込まれる分野です。
ニューススイッチなどのメディアでも取り上げられるように、医療・介護分野におけるリースは社会課題の解決と事業機会の創出を両立する動きとして注目されています。
リース業界の展望と新たなビジネスモデル
M&Aによる業界再編の加速
リース業界では近年、M&Aによる業界再編が加速しています。この背景には、国内市場の成熟化や競争環境の激化があり、大手リース会社が経営効率を高めるために規模拡大を目指していることが挙げられます。特に、三井住友ファイナンス＆リース（SMFL）のような企業が積極的な買収戦略を展開し、航空機リース業界などで国際的な地位を強化しています。今後もM&Aを通じて、新市場への参入やサービスの多角化が期待されます。
グローバル展開と海外市場の可能性
リース業界は、国内市場の競争過多や成長の鈍化を背景に、海外市場への展開を積極的に進めています。特にアジアや新興国市場は、インフラ整備や産業機械の需要増加により有望視されています。たとえば、航空機リース分野で世界第2位となった三井住友ファイナンス＆リースに代表されるように、日本企業がグローバルでのプレゼンスを高めています。国内企業が培った運営ノウハウや先進技術を活用することで、さらに競争力を向上させることが期待されています。
多様な業種へのリースサービスの拡大
従来のリース商品に加えて、リース業界は多様な業種へのサービス展開を進めています。例えば、オートリースでは法人向けリース車両の需要がコロナ禍以前の水準に回復し、個人向けオートリースも新しいサービスが次々と投入されています。また、医療機器やロボットといった先進技術の普及により、医療・介護分野や物流分野でのリース需要も拡大しています。これらの分野でのリース事業は、産業の効率化やコスト削減に寄与し、今後も成長が期待されています。
リース会計基準の改定と業界への影響
最近のリース会計基準の改定は、業界全体に大きな影響を与えています。この改定により、リース契約に伴う資産や負債がより厳格に会計処理されるようになり、特に財務報告に透明性を求められる企業にとって重要な課題となっています。一方で、この変化は業界において新しいサービスの開発や契約形態の見直しを促進しており、結果的にリース企業が提供する付加価値の向上に繋がっています。また、この改定が業界の標準化を進めることで、グローバル市場での競争力向上にも貢献すると考えられています。