M&Aアドバイザリーとしての財務分析力、業界理解、経営者との対話力は、リサーチ・アナリストとしても高く評価されます。証券会社やシンクタンク、PEファンド、アセットマネジメント会社などで活躍するアナリストに求められるのは、精緻な定量分析だけでなく、仮説構築力や業界洞察、トレンドの発信力です。本記事では、M&A(金融)からリサーチ・アナリストに転職するためのステップと、志望動機・職務経歴書のサンプルをご紹介します。
ステップ1:リサーチ・アナリストの業務とスキルを理解する
リサーチ・アナリストの業務には、主に以下の内容が含まれます:
- 上場企業や特定業界に関する財務分析・業績予測
- マクロ動向・業界トレンドの調査・レポート作成
- 企業訪問・経営者インタビューによる情報収集
- 投資家・機関投資家向けの情報提供・説明対応
M&A業務で養った定量分析力、企業調査経験、プレゼン能力は、アナリスト業務に直結します。
ステップ2:M&A業務をリサーチ・アナリスト視点に翻訳する
以下のように、自身の経験を“アナリスト的価値”に変換して伝えましょう:
- 企業価値評価 → 株式価値・業績予測モデル作成力
- 業界リサーチ → 中長期トレンドを読む構造分析力
- 経営者との折衝 → 経営目線のインサイトと取材力
ステップ3:リサーチ・アナリストに求められる特性を補完する
アナリスト職では、次のような特性が重要です:
- 独自の仮説構築力と論理的整合性
- 文章力(レポート執筆)と発信力
- 情報収集・分析の継続力と探究心
自身の分析スタイルや業界への関心を「リサーチテーマ」として整理しておくと、面接でも説得力が高まります。
ステップ4:志望理由とリサーチテーマの明確化
面接では「なぜM&Aからリサーチに?」という理由が問われます。以下のような観点で整理するとよいでしょう:
- 案件単位ではなく、長期的視点で業界・企業を深掘りしたい
- 社会変化や市場動向の中で、仮説と分析を通じて投資判断に貢献したい
- 情報の発信を通じて、企業と投資家をつなぐ立場に魅力を感じている
志望動機(例文)
私はこれまで投資銀行にてM&Aアドバイザリー業務に従事し、複数業界の企業に対する財務分析、企業価値評価、業界調査、経営者との折衝支援などに携わってまいりました。その中で、目先のディールにとどまらず、特定業界や企業を中長期的に深く理解し、その構造変化を投資家や社会に伝える「リサーチ」の仕事に強く魅力を感じるようになりました。貴社の持つ深いインダストリーカバレッジと高度な分析文化に惹かれており、これまでの実務経験と分析力を活かし、質の高い調査レポートを提供していきたいと考えております。
職務経歴書(サンプル)
氏名:高橋 遼 連絡先:ryo.takahashi@example.com|080-1234-5678 【職務要約】 大手証券会社の投資銀行部門にて約5年間、M&Aアドバイザリー業務に従事。主にバイサイド案件において、企業価値評価、財務分析、業界調査、契約支援などを実施。自動車、化学、通信業界など幅広いセクターを経験。情報構造化とレポート力に強み。 【職務経歴】 株式会社〇〇証券(2019年4月〜現在) 投資銀行部門 M&Aアドバイザリー部 主な業務内容: - 財務モデリング(DCF、マルチプル、LBO等) - 業界リサーチ、競合分析、バリュエーションレポート作成 - 経営者インタビュー支援(ヒアリング資料作成・議事録) - マーケット情報を踏まえた提案資料作成 主な実績: - 自動車部品業界の中堅企業買収案件でDD支援から契約締結まで担当 - PEファンド向け案件にてExitタイミングの分析レポートを作成 【スキル・資格】 - Excel/PowerPoint/Word 上級 - 英語(読解・文書作成)/TOEIC:860点 - CFA Level 1 合格 【学歴】 一橋大学 経済学部 卒業(2019年3月)
M&Aの「深い企業分析力」は、リサーチ・アナリストにとって強力なアセットです。大切なのは、視点を“案件成功”から“長期的価値の発見と共有”へと転換すること。自身の知見と視座を活かし、産業と投資家の架け橋となるキャリアを築いていきましょう。