組織・人事コンサルタントは、人材マネジメントや組織開発のプロフェッショナルです。その経験は、企業の内部で中長期的な人事戦略を立案・推進する「人事企画」ポジションへの転職において非常に価値があります。外部支援者としての論理性・専門性に加え、内部推進者としての当事者性を備えることで、より高いレベルの人事変革を担うことが可能です。本記事では、コンサルタントから人事企画職に転職するためのステップと、具体的な志望動機・職務経歴書のサンプルをご紹介します。
ステップ1:人事企画の役割を理解する
人事企画の役割は、企業戦略を実現するための人・組織の仕組みを企画・推進することです。主な業務は以下のとおりです:
- 人事制度(等級・評価・報酬)の企画・改定
- 組織再編・人員配置戦略の立案
- タレントマネジメントや後継者育成方針の策定
- 人的資本開示(ISO30414、統合報告書対応)
- エンゲージメント施策、働き方改革、HRBP設計
これらは、コンサルティング経験で扱ってきたテーマと多くが共通しています。
ステップ2:外部支援から内部推進への“視座の転換”を意識する
コンサルタントとしての強みは、論理構築力、フレームワーク活用、プロジェクトマネジメント力などです。一方で、人事企画では「自ら推進する」力や「社内の巻き込み力」が求められます。以下のようなスキルの転用を意識しましょう:
- 戦略立案 → 人事戦略への落とし込み
- プロジェクト推進 → 社内での制度導入・定着支援
- クライアント対応力 → 社内関係者との利害調整力
ステップ3:コンサル経験を人事企画に応用可能な実績として整理する
以下のようなテーマの経験があれば、転職活動で有効にアピールできます:
- 評価・報酬制度設計プロジェクトのリード
- 組織再編・組織設計に関わる企画・実行支援
- 人的資本経営・開示対応支援
- 人事システム刷新(タレントマネジメント、HRTech導入など)
ステップ4:志望理由と“内部に入りたい理由”を明確にする
採用側が最も重視するのは「なぜコンサルではなく、企業の中で人事をやりたいのか?」という点です。以下のような切り口で一貫性を持って語れるよう準備しましょう:
- 提案だけでなく、自分の手で制度を運用・改善したい
- 事業理解を深め、経営と一体となって人事戦略を動かしたい
- クライアントの枠を超え、長期的な組織変革に関わりたい
志望動機(例文)
私はこれまで組織・人事コンサルタントとして、複数企業の評価制度改革やタレントマネジメント戦略立案、人的資本開示対応などのプロジェクトに従事してまいりました。多様な業界・規模の企業と向き合う中で、制度設計や分析にとどまらず、自らが組織の一員として中長期視点で人事戦略を推進したいという思いが強まり、事業会社での人事企画への転職を決意しました。貴社が掲げる「人を軸とした成長戦略」に深く共感しており、これまでの知見を活かして、経営・事業と一体となった組織変革に貢献したいと考えております。
職務経歴書(サンプル)
氏名:山田 太一 連絡先:taichi.yamada@example.com|080-1234-5678 【職務要約】 大手人事コンサルティングファームにて約6年間勤務。人事制度改革、組織再編、人材開発戦略などのプロジェクトに従事。中堅〜大手企業に対する人事戦略立案から制度設計、運用支援まで一貫して担当。人的資本経営やHRTechの導入支援も経験。事業会社での人事企画職を志向。 【職務経歴】 株式会社〇〇コンサルティング(2018年4月〜現在) 組織・人事コンサルタント 主な業務内容: - 評価・報酬制度の再設計(等級統合、コンピテンシー再構築等) - タレントマネジメント方針の策定支援(スキルマップ、キャリアパス設計) - ISO30414準拠の人的資本開示支援(KPI設計、統合報告書連携) - 人事情報システム(SAP SuccessFactors)導入に伴う業務要件整理 - エンゲージメントサーベイ導入と分析レポート作成 主な実績: - 5,000名規模製造業の制度改定プロジェクト(PJリーダー) - グローバル企業の人的資本KPI設計支援(開示対応含む) - 大手金融機関における人材育成体系の再構築(事業部ヒアリング対応) 【スキル・資格】 - HR領域の制度設計経験(等級・評価・報酬) - タレントマネジメント/人材開発設計/人的資本開示支援 - Excel/PowerPoint/Word上級 - TOEIC 840点 【学歴】 一橋大学 社会学部 卒業(2018年3月)
コンサルタント出身者が人事企画へ転職する際は、“外部支援者”としてのロジックと、“内部推進者”としての意志の両方を備えていることを伝えることが重要です。現場と経営をつなぐ人事のプロとして、より戦略的な人事キャリアを歩んでいきましょう。