企業のサステナビリティ(持続可能性)への取り組みが求められる中、総務職からサステナビリティ企画・推進部門へのキャリアチェンジを目指す方が増えています。総務の業務で培った全社横断的な調整力やリスク管理、社内外のコミュニケーション力は、サステナビリティ部門でも十分に活かすことができます。本記事では、総務からサステナビリティ領域への転職を実現するためのステップを具体的に解説し、最後に志望動機と職務経歴書のサンプルをご紹介します。
ステップ1:サステナビリティの基本領域を理解する
まずは、サステナビリティ推進部門が担う役割や活動領域を明確に理解することが重要です。主な業務は以下のとおりです:
- サステナビリティ戦略の立案・実行(中長期目標の策定)
- ESG情報開示(統合報告書、サステナビリティレポート等)
- TCFD、CDP、SBT、TNFDなど外部対応
- グローバルガイドライン(GRI、ISO26000等)の理解と対応
- 社内への浸透活動(研修、社内報、イベント企画)
これらの活動に、総務での「社内制度設計」「調整業務」「規程整備」などの経験が親和性を持つことを認識しましょう。
ステップ2:ESG・サステナビリティの知識を習得する
知識面では、以下のトピックを中心に体系的な学習を進めましょう。
- ESG(環境・社会・ガバナンス)の基本概念
- SDGsと企業活動の接点
- 非財務情報の開示指標(GRI、SASB、ISO等)
- 国内外のESG評価機関やTCFDの要件
以下のような資格や講座が実務理解の助けになります:
- サステナビリティ検定(日本能率協会)
- CSR検定
- 日経BPや環境省などのオンラインセミナー
ステップ3:総務経験をサステナ領域でどう活かすか明確化
次に、自身の総務経験の中から、以下のような業務をサステナビリティに応用できる形で整理します:
- 社内規程整備 → ESGポリシーや行動規範策定支援
- 社内啓発活動 → サステナ研修・イベント企画・社内報連携
- 法令対応・リスク管理 → ガバナンス強化施策や開示支援
- BCP/災害対応 → 環境リスクや社会的リスクへの備え
ステップ4:ストーリーとして志望動機を組み立てる
「なぜサステナビリティか?」「なぜ自分なのか?」を論理的に語れるように、キャリアの文脈と社会的意義を掛け合わせて志望動機を組み立てましょう。たとえば:
- 企業と社会をつなぐ立場にいた経験から、より戦略的に社会課題に関与したい
- 社内を巻き込んだ制度運用経験を、サステナビリティ浸透に活かしたい
- 自分の仕事を通じて、次世代の企業価値向上に貢献したい
志望動機(例文)
私はこれまで総務部門において、社内制度設計、社内イベント企画、リスク管理、規程整備などの業務を担当してまいりました。そうした中で、組織全体を支える業務の延長線上として、より社会や環境への配慮を戦略的に組み込むサステナビリティ企画・推進の領域に強い関心を持つようになりました。貴社が取り組むTCFD対応やサステナビリティ戦略に共感しており、これまでの横断的調整力や制度運用の実務経験を活かし、社内外をつなぐ推進担当者として貢献したいと考えております。
職務経歴書(サンプル)
氏名:川村 真美 連絡先:mami.kawamura@example.com|080-1234-5678 【職務要約】 大手メーカーの本社総務部にて8年間勤務。社内規程整備、BCP策定、社内イベント運営、ESG関連の情報収集と社内共有を担当。社内外との調整や多部署連携を通じて全社的な施策実行に貢献。近年はサステナビリティ経営への関心から、レポート作成補助やTCFD関連の資料収集にも関与。 【職務経歴】 株式会社〇〇(2015年4月〜現在) 総務部 主な業務内容: - 就業規則や行動規範など社内規程の見直し(年次更新) - BCP(事業継続計画)の策定と訓練実施 - 全社イベント(社内報、表彰制度、健康経営啓発)の企画・実行 - 環境法令、ESG開示の基礎情報収集と経営企画部への連携 - TCFD関連の社外セミナーへの出席、情報整理 主な成果: - 社内ESG情報共有ポータルの立ち上げを主導 - 規程改訂の進行管理で関連部署10以上と連携 【スキル】 - 社内制度運用/文書作成/調整力/企画運営力 - Word、Excel、PowerPoint中上級 - ESG/サステナビリティ基礎知識(独学+外部研修) 【資格・学習】 - CSR検定2級 - 環境省主催TCFD講座(オンライン)受講 - サステナビリティ検定学習中 【学歴】 明治大学 商学部 卒業(2015年3月)
総務部門での経験は、制度構築や社内浸透などサステナビリティ推進に欠かせない土台を形成しています。関心と学習意欲を明確に示し、企業と社会の橋渡し役としてのキャリアを築いていきましょう。