製薬業界での経験は、ヘルスケア政策、産業調査、医療制度分析などに強みを持つシンクタンクにおいて、高く評価されるバックグラウンドです。市場調査力や制度対応力、部門間の調整力を持つ製薬出身者は、調査・政策提言を担う立場でも即戦力となり得ます。本記事では、製薬会社からシンクタンクに転職するためのステップと、志望動機・職務経歴書のサンプルをご紹介します。
1. 製薬業界とシンクタンク業務の共通点と違い
- 共通点:規制業界での知識、官民との調整、科学的・制度的根拠に基づく提案力
- 相違点:製薬会社は製品を通じた社会貢献、シンクタンクは調査・提言を通じた制度・政策への貢献
シンクタンクでは、広い視点で社会課題を捉え、論点を整理する力が求められます。製薬会社での制度・薬価・規制理解は、医療・福祉領域の調査研究で活かされます。
2. 活かせるスキルと経験
- 医療制度や薬価制度への理解と対応経験
- MRやマーケティングを通じた現場課題の収集力
- 行政対応(厚労省・AMED等)や業界団体との連携
- Excel・PowerPoint・Wordを用いた分析・報告書作成
- プロジェクト進行管理、部門横断的な調整力
3. 転職準備のステップ
- シンクタンクの領域理解:医療政策、地方創生、DXなど自分の親和性を確認
- 文章作成・提言スキルの強化:論点整理・論文構成力の訓練
- 公的制度や政策動向の把握:厚労省の検討会資料・有識者会議レポートなどを定期的に読む
- 職務経歴書の構成見直し:調査分析・制度理解・提案要素を前面に
- 志望動機の明確化:“製薬業界経験を社会構造提言に昇華したい”という視座を持つ
4. 面接で問われるポイント
- なぜ事業会社からシンクタンクへ?
- 医療・ヘルスケア領域でどのような課題意識を持っているか?
- 制度や規制をどうビジネスに落とし込んだ経験があるか?
- 論理的な資料作成経験
- 調整力・対官公庁のやり取りの有無
5. 志望動機(サンプル)
製薬会社にて、MRおよびマーケティング業務を通じて、医療現場のニーズや制度変更への対応、行政・業界団体との調整業務などに従事してまいりました。日々の業務を通じて、個別製品に留まらず制度全体や業界構造に踏み込んだアプローチをしたいと考えるようになり、シンクタンクでの医療政策・産業構造に関する調査・提言業務に関心を持ちました。貴機関が掲げる“調査を通じた社会課題の解決”というミッションに強く共感し、自身の経験を通じて現場と制度をつなぐ役割を担いたく、志望いたしました。
6. 職務経歴書(サンプル)
氏名:小林 美咲
生年月日:1990年5月12日
最終学歴:大阪大学 薬学部 卒業
職務経歴:
2014年4月 ~ 現在:株式会社〇〇 製薬事業本部
- MRとして大学病院・基幹病院を担当(がん領域、循環器)
- マーケティング部門にて新薬上市準備(市場調査、資材制作)
- 厚労省主催の薬価改定に向けた意見整理、業界団体との調整
- 営業戦略会議にて製品ポジショニング報告資料作成
保有資格・スキル:
・薬剤師免許
・Excel、PowerPoint、Wordによる資料作成
・医療政策・薬価制度の知識
・ヘルスケア産業動向に関するリサーチ力
7. まとめ
製薬会社での経験は、現場に根ざした問題意識と制度理解を併せ持つ貴重なバックグラウンドです。シンクタンクで求められる“俯瞰力”や“構造的分析力”を養いながら、これまでの経験を活かして社会全体に貢献するキャリアへと転換するチャンスがあります。医療と政策の橋渡し役を担う存在として、次なるキャリアを築いてみてはいかがでしょうか。