金融機関でM&A業務に従事してきた方が、より事業の現場に近いポジションで事業成長を直接担う「ビジネスデベロップメント(BizDev)」へとキャリアチェンジするケースが増えています。特に、M&Aで培った戦略眼・分析力・交渉力は、新規事業開発やパートナーシップ推進において非常に有効に活かされます。本記事では、M&A業務からBizDev職への転職を成功させるためのステップを解説し、最後に志望動機と職務経歴書のサンプルをご紹介します。
1. M&Aとビジネスデベロップメントの役割の違いと共通点
- 共通点:成長戦略の立案、アライアンス推進、事業価値評価、経営層との折衝
- 相違点:M&Aは対象会社の選定・交渉・クロージングに注力、BizDevはその後の実行・収益化までコミット
BizDevは「実現すること」に重きを置き、社内外との調整や、実行フェーズにおける継続的な価値創出が求められます。
2. M&A経験が活きるBizDev業務とは?
- 業界分析・競合調査 → 新規市場参入戦略の立案に応用可能
- 財務モデリング・DD経験 → パートナー選定や事業性評価に有効
- 経営陣・投資家との交渉力 → 戦略的提携・資本提携交渉に直結
- プロジェクトマネジメント → アライアンスの実行推進に転用
3. 転職ステップ
- 方向性の明確化:事業会社かスタートアップか、業界・フェーズを検討
- ポジション研究:BizDevの定義は企業によって異なるため、職務内容を深く調査
- 自己分析:M&Aで得たスキルのうち、事業創出・実行に活かせる点を抽出
- 書類作成:志望動機と職務経歴書で「実行フェーズに関わりたい」意思を明確に
- 面接対策:過去の交渉経験、提案事例、KPI志向などを具体的に語れる準備
4. BizDev職で求められる人物像
- 事業全体の構造を理解し、戦略を設計・実行できる人
- 社内外のステークホルダーを巻き込み推進できるリーダーシップ
- 売上・利益といったKPIを意識し、成果を生み出す志向性
- スピード感と柔軟性をもって施策を回せるオペレーション力
5. 志望動機(サンプル)
これまでM&Aアドバイザリー業務に従事し、製造業・IT企業を中心に戦略立案から交渉支援、クロージングまで多様な案件を担当してきました。企業価値向上に向けた提案を行う中で、戦略の実行フェーズに継続的に関与したいという想いが強まり、BizDev職へのキャリアチェンジを志望しています。貴社は新規事業開発に注力し、アライアンスや事業投資も積極的に展開されており、自身の戦略的視点・定量分析力・交渉経験を活かし、貴社の事業成長に貢献できると考え志望いたしました。
6. 職務経歴書(サンプル)
氏名:田中 一樹
生年月日:1990年4月10日
最終学歴:一橋大学 商学部 卒業
職務経歴:
2015年4月 ~ 現在:〇〇証券株式会社
所属:投資銀行本部 M&Aアドバイザリー部門
役職:アソシエイト → シニアアソシエイト
- クロスボーダーM&A案件(IT・製造業)の戦略立案・交渉支援(20件以上)
- バリュエーション、財務モデルの構築、買収後PMI計画の策定支援
- 中堅企業へのMBO、スピンオフ提案、資本提携支援
- デューデリジェンスの統括と資料作成(財務・法務・事業DD)
保有資格:
・日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
・TOEICスコア 910点
・PMP(Project Management Professional)
スキル:
・財務モデリング(Excel, VBA)
・資料作成(PowerPoint、Pitch Book)
・英語での交渉・資料作成対応可能
7. まとめ
M&Aの経験は、事業の「設計力」や「構造化力」に強みをもたらし、BizDevとしての即戦力にもなり得ます。事業に深く入り込んで意思決定を行い、結果に責任を持つという姿勢を持ちつつ、柔軟でスピーディな行動力を意識することで、新たなフィールドでも活躍できるはずです。戦略と実行をつなぐ「両利きのキャリア」を築くための一歩として、BizDev職への転身をぜひ検討してみてください。
