ITリスク/ITガバナンスコンサルタントから内部監査、内部統制に転職するためのステップ【志望動機、職務経歴書】

サイバーセキュリティやIT統制に対する社会的関心が高まる中で、ITリスク/ITガバナンス領域のプロフェッショナルが、企業の内部監査・内部統制部門へ転職する動きが活発化しています。

ITコンサルタントとしての知見を、企業の「防御力」や「統治機能」の強化に活かすことができるという点で、双方の職務には強い親和性があります。本記事では、ITリスク・ガバナンスのコンサルタントが、企業の内部監査・内部統制業務へ転職するためのステップを解説し、最後に志望動機と職務経歴書のサンプルもご紹介します。

ITコンサルと内部監査/統制の違い

ITリスクコンサルタントと内部監査/内部統制の業務は近接していますが、立場や目的にいくつかの違いがあります。

  • ITコンサル: 顧客企業のIT統制・ITリスクを外部支援する立場。助言や設計が中心。
  • 内部統制担当: 自社のリスク管理・業務統制を「設計・整備・運用・改善」する立場。
  • 内部監査人: 内部統制の整備・運用が有効であるかを評価・監査する立場。

コンサルタントは「支援者」であるのに対し、内部監査・統制担当者は「実行責任者」あるいは「評価者」です。従って、当事者意識や自社業務への深い理解が求められるようになります。

なぜITコンサル出身者が評価されるのか?

以下のようなスキル・経験を持つITコンサルタントは、内部監査・統制領域で非常に重宝されます:

  • IT統制(ITGC、ITAC)の評価・改善提案経験
  • ISMSやSOCなどのセキュリティ/ガバナンスフレームワークに精通
  • 業務フロー分析、リスク・コントロールマトリクス(RCM)作成
  • J-SOXや内部統制報告制度に関する知識
  • プロジェクトマネジメントスキルと高い文書化力

企業は「自社に知見を移転してくれる人材」「IT統制をわかりやすく業務部門と橋渡しできる人材」を求めており、ITコンサル出身者はそのニーズにフィットしています。

転職成功のための4ステップ

ステップ1:内部監査・統制の実務を理解する

コンサル業務と実務運用では求められる視点が異なります。監査・統制業務のプロセスを以下のように整理しましょう。

  • 内部統制:リスクの洗い出し → コントロール設計 → 文書化(業務記述書・RCM) → テスト → 改善
  • 内部監査:リスクベースの年間計画 → 個別監査 → 監査報告書作成 → 改善フォローアップ

また、監査対象には業務監査・システム監査・テーマ監査など多様なものがあります。事前にどのタイプの監査に関与するかを確認しておくとよいでしょう。

ステップ2:コンサル経験を実務文脈に変換する

以下のように、自身のプロジェクト経験を内部監査・統制業務に結びつけて整理してみましょう:

  • ITGCアセスメント → システム統制の評価・改善支援
  • リスクアセスメント支援 → 統制設計・文書化への展開
  • 業務棚卸 → 内部統制整備・RPA導入時の統制検討
  • BCP・DRレビュー → 経営層向けリスク報告の素養

文書化能力・コミュニケーション能力・リスク感度などの汎用スキルも、内部監査において重要視されます。

ステップ3:関連資格・知識を補完する

  • CIA(公認内部監査人):国際的に通用する監査資格
  • CISA(公認情報システム監査人):IT監査領域に強み
  • J-SOX制度・COSOフレームワーク・3線モデル
  • ISMS、NIST、FISC等の規制・標準

実務経験がなくとも、基礎知識を習得していることで「転職後の早期立ち上がり」が期待される印象を与えることができます。

ステップ4:志望動機で「守りの中の攻め」を語る

内部監査・統制は「守り」の仕事と思われがちですが、近年は経営課題を抽出・提言する「攻めの監査」が重視されています。

  • 組織課題を全社横断的に抽出したい
  • リスク起点での業務改善提言を行いたい
  • 経営の透明性を支える立場として貢献したい

志望動機では「単なる遵守」ではなく、「経営との接点を意識した貢献意欲」を明確に伝えることがカギです。

転職のご相談(無料)はこちら>

志望動機(例)

私はこれまでITリスク・ガバナンス領域のコンサルタントとして、上場企業におけるJ-SOX対応支援や、IT統制のアセスメント、業務・システムリスクの洗い出しと改善提案に従事してまいりました。業務部門・情報システム部門・経営層の橋渡し役として、リスクベースでの提言を行う中で、より自社に深く関与し、統制の実装と継続的改善に携わりたいと考えるようになりました。

貴社の監査・統制部門であれば、これまでのIT知見と文書化・提案力を活かしながら、リスク起点での監査・統制高度化に貢献できると考え、志望いたしました。

職務経歴書(例)

■職務要約

大手コンサルティングファームにて、IT統制/ITリスク管理/ITガバナンスの支援業務に従事。J-SOX対応、IT統制評価、RCM整備支援、業務棚卸、BCPレビュー、IT内部監査支援など多数経験。論理的思考力とドキュメンテーション力を活かした改善提案が強み。

■職務経歴

株式会社〇〇コンサルティング(2019年4月~現在)

  • J-SOX対応支援(上場企業10社以上)
    • ITGC/ITACの現状調査、RCM作成支援
    • サンプルテスト代行、改善提案資料作成
  • 情報システムリスクアセスメント
    • 全社IT統制に係るリスク評価、優先課題の提示
    • システムアクセス権管理プロセスの改善提案
  • IT監査支援
    • 監査手続書案作成、監査論点整理、経営層報告支援

■保有資格・スキル

  • CISA(Certified Information Systems Auditor)
  • 基本情報技術者、TOEIC 820
  • J-SOX、ISO27001、NIST、FISCなど各種基準への理解
  • Excel(関数・VBA)、PowerPoint(報告資料作成)

転職のご相談(無料)はこちら>

まとめ:「支援者」から「実行者・評価者」へキャリアを拡張する

ITリスク・ガバナンス領域での経験は、企業の内部監査・内部統制部門において非常に有用です。特に、リスクを体系的に整理し、わかりやすく伝え、実効性のある改善を導く能力は、社内の信頼と影響力を築く上で大きな武器となります。

「支援する立場」から「自ら守る/評価する立場」へ。キャリアの重層化を図りたい方にとって、内部監査・内部統制への転身は最良の選択肢となるかもしれません。

この記事を書いた人

コトラ(広報チーム)