IT会社から銀行のDX推進に転職するためのステップ【志望動機、職務経歴書】

近年、金融機関の間で「DX(デジタルトランスフォーメーション)」の重要性が急速に高まっています。特に銀行業界では、オンラインチャネルの拡充、ペーパーレス化、バックオフィスの自動化、データドリブン経営の実現といった課題に取り組む動きが活発化しています。

そうした中、IT業界出身者が「銀行のDX推進部門」へ転職するケースが増加しています。IT企業で培った技術力・プロジェクト推進力・UI/UX思考などが、銀行の変革において重要な戦力となるためです。

本記事では、IT会社から銀行のDX部門への転職を成功させるためのステップやポイント、必要なスキル、注意点を解説し、最後に志望動機・職務経歴書のサンプルも掲載します。

なぜ銀行はDX人材を求めているのか?

銀行業界は長らくレガシーシステムに依存しており、情報システム部門とビジネス部門の分断、紙文化、非効率な事務処理といった課題を抱えてきました。しかし、以下の要因により、DXの加速が急務となっています。

  • 低金利・人口減による収益構造の変化
  • フィンテック企業や異業種との競争激化
  • 非対面・デジタルチャネルのニーズ増加
  • 業務効率化・人員最適化の必要性

これにより、銀行は「内製化」「アジャイル開発」「データ活用」「顧客体験の再設計」といったキーワードをもとに、IT業界出身の即戦力人材の採用を進めています。

IT出身者が銀行DXに転職するための4ステップ

ステップ1:銀行の業務・組織構造を理解する

まずは銀行業界の仕組みを正確に理解することが不可欠です。IT会社との最大の違いは「規制産業」であること。「顧客の資産を預かる」ビジネスである以上、コンプライアンス、ガバナンス、監査対応などの制約が多い点を認識しましょう。

  • 業務:預金、融資、決済、外為、資産運用など
  • 組織:営業部門/事務部門/IT・DX部門/審査・リスク管理部門
  • 関連規制:金融商品取引法、銀行法、FISCガイドライン

また、各行には「全行共通システム」「勘定系・情報系」「オープンAPI戦略」などの用語が飛び交います。最低限の知識はキャッチアップしておきましょう。

ステップ2:銀行DX領域の業務内容を理解する

銀行のDX部門で担当する業務は多岐にわたります。以下は代表的な例です:

  • モバイルアプリ・WebチャネルのUI/UX刷新
  • 営業支援システム(CRM、SFA)の導入・刷新
  • RPA・AIを活用した業務自動化
  • 勘定系から情報系へのデータ連携・分析基盤構築
  • オープンAPI連携・マイナポータル連携の開発
  • アジャイル開発組織の構築とマネジメント

これらはいずれも、IT企業での経験(PM、PL、SE、UI/UX、クラウド開発など)を活かしやすい領域です。

ステップ3:キャリアの共通点を整理・変換する

転職活動では、IT企業での実績を「銀行業務にどう貢献できるか」に翻訳して伝える必要があります。以下のように変換してみましょう:

  • クラウド開発 → オンプレからのクラウドシフト推進
  • UI/UX設計 → モバイルバンキングの改善
  • データ基盤構築 → 顧客行動分析・提案モデル構築
  • アジャイル開発 → プロジェクトマネジメント・ベロシティ向上

「技術力」ではなく「課題解決力」「金融文脈での価値創出」が問われる点に注意しましょう。

ステップ4:志望動機と職務経歴書で「変革志向」を示す

保守的とされる銀行において、変革を推進する人材には「組織との橋渡し」「関係者調整力」「粘り強い実行力」が求められます。志望動機や職務経歴書では、「金融機関の変革に共感していること」「非エンジニアとの協業経験」「実装フェーズでの貢献実績」を盛り込みましょう。

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志望動機(例)

私はこれまでIT企業にて、クラウド環境でのシステム構築やアプリケーションの要件定義・開発・運用に従事してまいりました。特に大手小売業との共同プロジェクトでは、店舗とECを連携したアジャイル開発体制を構築し、業務効率とUX向上に貢献してまいりました。

その中で、金融業界におけるDXの必要性と可能性に強い関心を持ち、技術起点ではなく「生活者起点」でサービスを再設計できるフィールドに魅力を感じ、銀行でのDX推進にチャレンジしたいと考えるに至りました。

これまでのクラウド開発・プロジェクト推進・ユーザー視点の設計力を活かし、金融業界における価値ある変革を担ってまいりたいと考えております。

職務経歴書(例)

■職務要約

SIerおよび自社サービス企業にてWeb・業務システムの要件定義・設計・開発・運用までを一貫して経験。近年はアジャイル開発やクラウドシフト案件、UI/UX改善プロジェクトを担当。現在は金融業界のDX支援に強い関心を持ち、銀行業務への理解を深めながら転職活動を実施中。

■職務経歴

株式会社〇〇テック(2020年4月〜現在)

  • 役職:プロジェクトリーダー
  • 担当業務:
    • 金融系業務支援SaaSのクラウド構築(AWS)
    • 金融CRMシステムのアジャイル開発(React / Node.js)
    • ユーザーインタビューを通じた画面改修と導線改善
    • 営業・マーケ・開発の横断連携による改善サイクル運用

株式会社△△ソリューションズ(2016年4月〜2020年3月)

  • 役職:SE→サブリーダー
  • 担当業務:
    • 大手地方銀行の基幹業務システムの更改プロジェクト
    • RPA導入支援(UiPath)による支店事務の省力化支援
    • 帳票電子化のPoCおよび本番導入支援

■保有スキル・資格

  • AWS Certified Solutions Architect – Associate
  • 基本情報技術者、応用情報技術者
  • UiPath RPA Developer Foundation
  • 業務フロー図、ワイヤーフレーム、データモデリング作成スキル

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まとめ:IT人材の「文脈力」が銀行の変革を後押しする

銀行業界は、これまでにないスピードで変革の時代を迎えています。IT業界での経験は、技術力だけでなく、「課題を定義し、仕組みとして解決する」思考が評価される場面へとシフトしています。

銀行のDX推進というフィールドは、まさにIT人材が「経営」「現場」「顧客」のすべてと対話しながら新しい価値を創造していける場です。本記事を参考に、ぜひ次なるキャリアを切り拓いてください。

この記事を書いた人

コトラ(広報チーム)