金融(M&A)から経営企画(FP&A)に転職するためのステップ【志望動機、職務経歴書】

金融業界でM&Aアドバイザリーや投資銀行業務に従事してきた方が、次のキャリアとして事業会社の経営企画、特にFP&A(Financial Planning & Analysis)へ転身するケースが増えています。

M&Aで培った財務分析力や戦略的思考を、より経営に近い立場で活かしたい。そんな想いを持つ方にとって、FP&Aはまさに最前線で経営判断を支えるポジションです。

本記事では、M&A業務からFP&Aへのキャリア転換を成功させるためのステップと準備方法を解説し、最後に使える志望動機・職務経歴書のサンプルも紹介します。

FP&A(経営企画)とは?

FP&Aは、企業の財務計画・業績予測・予算策定・KPI管理・経営分析などを担い、経営陣の意思決定をサポートする専門部門です。

  • 年度予算・中期経営計画の策定支援
  • 予実差異分析・KPIトラッキング
  • 部門別・事業別収益性分析
  • 新規事業・投資案件の収支シミュレーション
  • 取締役会・経営会議向け資料作成

M&Aと同様にファイナンスの視点が求められる業務ですが、FP&Aはより「社内・経営寄り」の立場で業務を遂行します。

M&A出身者がFP&Aに向いている理由

M&Aアドバイザリー経験は、FP&Aでも大いに活かせます。以下のようなスキルは特に評価されます:

  • 財務モデリング・バリュエーションスキル
  • 収益性・成長性の定量分析力
  • 企業・事業の定性分析力(業界・競合分析)
  • 経営層への提案資料作成・プレゼン経験
  • クロスファンクショナルな調整・折衝力

FP&Aでは、単なるレポーティングに留まらず、「なぜそうなったか」「どう改善できるか」といったストーリー構築が重要になります。M&Aでの実務経験は、この思考力に直結しています。

転職成功に向けた4つのステップ

ステップ1:FP&Aの役割とKPIへの理解を深める

事業会社のFP&Aでは、財務三表だけでなく、PL以外の「非財務KPI」に基づいた分析・管理が重要になります。M&A出身者には馴染みの薄い業務もあるため、以下を意識して理解を深めましょう:

  • LTV、CAC、ARPU、Churn RateなどのKPI
  • 事業部門との連携による予実管理
  • SaaS型、サブスク型ビジネスの収益構造
  • 月次決算サイクルとマネジメントレポートの流れ

加えて、事業ポートフォリオの最適化や新規事業の採算性分析などにも携わるため、幅広いビジネス知識が求められます。

ステップ2:業務経験の棚卸しとFP&A業務への翻訳

M&Aでの業務経験を「経営分析」「意思決定支援」という文脈で再定義しましょう。以下のように翻訳できます:

  • 買収検討におけるDCF分析 → 投資採算のシミュレーション経験
  • 業界分析・競合比較 → 事業ポートフォリオ分析力
  • ピッチブック・IM作成 → 経営会議資料の構成・ストーリーテリング力
  • PMI支援 → 経営管理・KPI導入支援

特に「経営層との距離感」や「実行支援型のプロジェクト経験」は、FP&Aでも大きなアピールポイントになります。

ステップ3:実務スキル・ツールのキャッチアップ

FP&AはExcelだけでなく、BIツールやERP、クラウド型経営管理ツールなどの活用が進んでいます。以下のようなスキルがあるとより強みになります:

  • Excel上級(関数、ピボット、Power Query、マクロなど)
  • Power BI / Tableau / LookerなどのBIツール経験
  • SAP、OracleなどのERPの理解
  • 会計知識(日商簿記2級レベル以上)

ステップ4:志望動機と職務経歴書で「社内視点」を意識

M&Aは「外部からの企業評価」、FP&Aは「内部からの事業評価」です。志望動機では、この視点の違いを理解した上で、「自社成長への貢献意欲」を示すと好印象です。

また、職務経歴書では「経営的観点」「戦略的思考」を前面に出し、単なる財務分析スキルの羅列にならないよう注意しましょう。

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志望動機(例)

私はこれまで投資銀行にて、国内外企業を対象としたM&Aアドバイザリー業務に携わり、企業価値評価や業界分析、財務モデリング等を通じて、経営判断を支援してまいりました。

複数の案件を通じて、財務の視点だけでなく「事業をいかに成長させるか」という本質的なテーマに強い関心を持ち、より中長期的な視点で経営に関与したいと考えるようになりました。

今後は、事業会社のFP&A部門にて、経営判断の基礎となる数値分析・KPIモニタリング・シミュレーション等を通じて、経営層との対話を重ねながら企業価値の向上に貢献したいと考えております。

職務経歴書(例)

■職務要約

大手証券会社の投資銀行部門にて5年間勤務。M&Aアドバイザリー業務において、企業価値評価(DCF、マルチプル)、業界分析、財務モデリング、提案資料作成、実行支援など幅広く経験。現在は事業会社の経営企画・FP&A部門へのキャリア転換を志向。

■職務経歴

〇〇証券株式会社(2018年4月~現在)

  • 担当業務:M&Aアドバイザリー(買収・売却双方)
  • 経験案件数:20件以上(クロージング10件)
  • 業務内容:
    • 企業価値評価(DCF、LBO、マルチプル)
    • 業界・競合分析、提案資料作成
    • 財務モデリング、シナリオシミュレーション
    • クロスボーダー案件のデューデリジェンス支援
    • 買収後PMIフェーズでの経営管理KPI設計サポート

■スキル・資格

  • Excel上級(VLOOKUP, IF, INDEX/MATCH, Pivot, VBA)
  • PowerPoint:経営会議向け資料作成多数
  • 英語:TOEIC 870(英文IM、DD資料対応経験あり)
  • 日商簿記2級

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まとめ:金融の分析力を「企業の意思決定」へ

M&Aアドバイザリー業務で培った分析力・提案力・戦略的思考は、事業会社のFP&Aでも大いに活かせます。外部からの評価者から、社内の意思決定支援者へ。より近い距離で経営に関与し、企業の成長を後押しするキャリアへ転身するチャンスです。

本記事を参考に、次なるステージに向けた準備を進めてみてください。

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この記事を書いた人

コトラ(広報チーム)