経理からFASに転職するためのステップ【志望動機、職務経歴書】

財務・会計の専門性を活かしたキャリアアップを目指す中で、「FAS(Financial Advisory Services)」への転職は非常に有望な選択肢です。特に、企業の経理担当者として実務経験を積んできた方にとって、FASでの業務は次なる挑戦の場となり得ます。

本記事では、経理職からFAS(財務アドバイザリー)へ転職するためのステップを詳しく解説し、最後に使える志望動機と職務経歴書の例も紹介します。

FASとは何か?

FAS(Financial Advisory Services)は、企業のM&A、財務戦略、企業価値評価、事業再生などを支援するプロフェッショナルサービスです。監査法人のアドバイザリー部門や外資系FASファーム、コンサルティングファームの一部門として存在しています。

主な業務内容は以下の通りです:

  • 財務デューデリジェンス(FDD)
  • 企業価値評価(バリュエーション)
  • 事業計画レビュー
  • PMI(M&A後の統合支援)
  • リストラクチャリング(事業再生支援)

「会計の知識を武器に、企業の変革に関わる」ことができる点が、FASの魅力です。

なぜ経理経験者がFASに向いているのか?

FAS業務では、企業の財務情報を正確に読み解き、分析・判断するスキルが求められます。その点、経理職で培った会計処理・決算業務・財務諸表の理解は非常に有効です。

  • 財務諸表の構造・仕組みへの深い理解
  • 月次・四半期・年次決算の経験
  • 監査法人・税理士とのやり取り
  • 会計基準(J-GAAP、IFRSなど)への理解

これらの知識は、FDDやバリュエーションといったFAS業務において、分析の基礎となる部分です。

FASへの転職ステップ

ステップ1:FAS業務の理解を深める

まずはFASの全体像を把握しましょう。単なる会計処理とは異なり、「投資家や買収企業側の視点」で財務情報を分析することが求められます。参考書籍やFASファームのレポート、M&A事例分析なども有効です。

  • FDDの構成(収益性分析、運転資本分析、EBITDA調整)
  • DCFやマルチプル法による企業価値評価
  • M&Aプロセス全体の流れ(Teaser、LOI、SPAなど)

ステップ2:資格取得・スキルの補完

  • 日商簿記1級(FAS未経験でも信頼性がある)
  • 公認会計士(論文式合格で応募可能なポジションあり)
  • USCPA(外資系FASファームで有利)
  • Excel・PowerPointスキル(モデリング・資料作成)

また、M&Aや企業分析に関する講座(グロービス、M&Aスクールなど)で基礎を固めるのもおすすめです。

ステップ3:職務経歴を「分析力」として棚卸し

単なる会計処理担当としてではなく、以下のような経験を「分析・判断力」の文脈で表現しましょう:

  • 月次予実分析とその差異要因の報告
  • 部門別・商品別の収益性分析
  • 連結決算やIFRS移行対応
  • 監査法人対応・内部統制文書の作成

FASファームが求めるのは「処理能力」ではなく「考察力」「構造理解力」であることを意識しましょう。

ステップ4:志望動機に「経理からの進化」を込める

志望動機では、「数字の裏側を読み、企業価値向上に貢献したい」という意志を伝えると効果的です。FASで何をしたいのか、どんなスキルを持って貢献できるのかを明確に言語化しましょう。

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志望動機(例)

私はこれまで事業会社にて経理業務全般を担当し、月次・年次決算、予実管理、会計監査対応などを中心に実務経験を積んでまいりました。その中で、財務数値の背景にあるビジネス構造や経営判断に対してより能動的に関与したいという思いが強くなり、FAS業務に関心を持つようになりました。

現在は財務デューデリジェンスや企業価値評価に関する専門書を通じて知識を深めており、ExcelでのモデリングやDCF法なども独習しています。
会計の実務経験に加えて、定量データを元に仮説を立て、改善提案を行ってきた経験を活かし、貴社のFAS部門にてM&Aや事業再生といった企業変革に貢献していきたいと考えております。

職務経歴書(例)

■職務要約

上場企業の経理部門にて約5年勤務。決算業務、財務諸表作成、監査対応、管理会計まで幅広く経験。業績分析や社内報告資料の作成も行い、定量データに基づく意思決定支援にも貢献。FAS業務へのキャリア転換を志向し、財務・企業評価に関する学習を継続中。

■職務経歴

株式会社〇〇(2019年4月~現在)

  • 月次・年次決算業務(会計ソフト:〇〇)
  • 監査法人対応(PBC資料作成、質疑応答)
  • 連結決算・子会社の財務報告と取りまとめ
  • 予算管理・予実差異分析(月次で経営層へ報告)
  • 新会計基準導入対応(収益認識基準など)

■資格・スキル

  • 日商簿記1級(2023年取得)
  • TOEIC 805点(英文財務諸表読解可能)
  • Excel(関数、ピボット、財務モデリング初級)
  • PowerPoint(報告資料・提案書作成経験あり)

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まとめ:経理からFASへ、「守り」から「攻め」の会計キャリアへ

経理職で積み重ねた会計知識や実務力は、FAS業務においても強力な武器となります。M&Aや事業再編といった「企業の未来に関わる仕事」に関心がある方にとって、FASは非常にやりがいのあるキャリアです。

本記事でご紹介したステップを参考に、ぜひ新たな挑戦に踏み出してみてください。必要なのは、「数字を処理する力」ではなく、「数字の意味を考え抜く力」です。

この記事を書いた人

コトラ(広報チーム)