AIベンチャーでの経験は、技術理解、データ活用力、スピード感のある業務推進力、そして新規事業や資金調達・経営分析の実務に触れる機会が多く、財務アドバイザリー領域との親和性が高いポジションにあります。FAS(Financial Advisory Services)では、M&A、事業再編、バリュエーション、財務DDなど高度な財務知識と事業理解が求められる一方で、変化の激しい現場における実行力や柔軟性も重視されます。本記事では、AIベンチャー経験者がFASへの転職を目指すためのステップと、志望動機・職務経歴書の例をご紹介します。
1. FASが評価するAIベンチャー出身者のスキル
- スタートアップでの事業開発・データ活用経験
- 資本政策・資金調達・IR資料作成の実務
- 経営陣と近い距離でのKPI設計・モニタリング
- プレゼン力・ドキュメンテーションスキル
- Excelベースでのシミュレーション構築
上記に加え、AIやデータビジネスの事業モデルに精通していることは、テック企業支援において差別化された強みとなります。
2. 転職ステップ
STEP1:実績の棚卸しと財務寄りへの翻訳
自社で行ってきたKPI分析、資金繰りシミュレーション、収益モデル設計などを「財務視点」で再構成し、定量化・ストーリー化してまとめます。
STEP2:会計・財務モデリングのキャッチアップ
簿記2級レベルの会計知識、DCFやLBOなどの財務モデル構築スキルを習得し、面接や書類でアピールできる状態にしておくことが重要です。
STEP3:志望動機の言語化
「事業当事者の経験を活かし、より多くの企業の成長支援に関わりたい」「ファイナンスと戦略の交差点で、構造的な支援を行いたい」といった視座を示します。
STEP4:FAS各社の特色理解と対策
デロイト、KPMG、PwC、EYなどのFASファームは、組織体制や注力領域が異なるため、各社の特徴と自身の親和性を整理します。
3. 志望動機(例)
AIベンチャーにて、事業開発、資金調達支援、KPI設計・管理を中心に、経営陣と共に戦略実行を推進してまいりました。業務を通じて、財務と事業の両輪で企業価値向上に寄与するFAS業務に強く関心を持ち、より多くの企業に対して価値提供したいと考えるようになりました。
貴社の持つM&Aや事業再編支援における豊富な実績とプロフェッショナル集団の中で、私のスタートアップでの柔軟性と実行力、財務視点を活かし、クライアントの企業価値向上に貢献していきたいと考えております。
4. 職務経歴書(例)
氏名:佐々木 陽一
生年:1992年生まれ(32歳)
学歴:京都大学 経済学部 卒業(2015年)
職務要約
大手SIerにてキャリアをスタート後、AIベンチャー企業に転職。プロダクト開発、事業推進、資金調達支援、経営管理業務を幅広く担当。特に財務・事業データの可視化と経営意思決定支援に注力し、スタートアップ経営を下支えしてきた。今後はFAS領域で企業価値向上を支援する立場としてキャリアの幅を広げたい。
職務経歴
株式会社〇〇AIソリューション/2019年4月~現在
所属:経営企画部/AIプロダクト推進部
- 資金調達支援:シリーズBでの資本政策策定支援。資金繰り計画と投資家説明資料の作成を担当。
- KPIマネジメント:プロダクトの解約率・利用率・LTVなどの指標を分析。改善施策を提案し継続率を15%向上。
- 事業シミュレーション:営業・エンジニアリソースの組み換えによる売上高・利益率への影響をモデル化。
- 業務改善:バックオフィスにおけるRPA導入を推進し、年間150時間の工数削減を実現。
スキル・資格
- 財務分析/資本政策/シミュレーション設計
- Python/Excel VBA/Tableau/Power BI
- 日商簿記2級(2023年取得)
- TOEIC 875(海外投資家向けピッチ対応経験あり)
AIベンチャーで培った柔軟性と実行力、そして財務視点での思考を武器に、FAS業務での新たな挑戦を叶えてください。