AIやSaaSといった先端技術を軸に成長するスタートアップ業界で経験を積んだビジネスパーソンが、次なるステップとしてM&A仲介業界に挑戦するケースが増えています。
「テクノロジーの力で事業成長を支援してきたが、より上流で経営そのものに関与したい」「経営者と対峙する立場で、中長期の意思決定に携わりたい」——そんな想いを持つ方にとって、M&A仲介業界は極めて相性の良いフィールドです。
この記事では、AIベンチャーでの経験をどうM&A仲介業界に活かすか、転職成功のステップと必要なスキル、選考対策、志望動機・職務経歴書の記載例を含めて詳しく解説します。
1. なぜAIベンチャー出身者がM&A仲介に向いているのか?
ベンチャー企業での経験、とりわけAIやSaaSなど先端領域でのビジネス開発・法人営業・プロジェクト推進経験は、M&A仲介業界でも大きな強みとなります。その理由は以下の通りです。
- 経営に近い立場で動いた経験がある:ベンチャーでは営業から事業戦略までを幅広く担うケースが多い
- 不確実性への耐性が高い:変化の激しい環境でスピード感と柔軟性を持って働いてきた
- 経営者と直接会話してきた:商談相手はCxOクラスが中心で、経営課題への感度が高い
- 数字責任・成果責任を負ってきた:ARR/LTV/MRRなどのSaaS型KPIに基づいた営業経験
これらの能力は、まさにM&A仲介に求められる「経営者視点」「提案営業力」「当事者意識」に直結します。
2. M&A仲介の仕事内容とキャリアパス
M&A仲介業務は「売却企業」と「買収企業」の両者を担当し、プロジェクト全体を一貫して推進するダブルハンド型が基本です。
- ソーシング: 事業承継ニーズのある企業を発掘、面談・ヒアリング
- 企業分析: 財務・事業・組織の全体像を把握し、ノンネーム資料を作成
- マッチング: 買い手候補の提案・打診・面談調整
- 条件交渉: 価格、雇用、役員構成などの調整
- クロージング: 最終契約(基本合意書・譲渡契約書)の締結サポート
成約までに半年〜1年以上を要する案件もあり、「信頼関係」「粘り強さ」「経営理解」が求められます。
3. AIベンチャー経験をM&A仲介で活かすための整理法
自分の強みをM&A業務に応用できるよう、以下のように再定義しましょう。
AIベンチャーでの経験 | M&A仲介で活かせる力 |
---|---|
スタートアップ向けSaaSの法人営業 | 経営層との商談・課題整理力 |
KPIベースの営業推進 | 数字にコミットする姿勢と継続力 |
BtoBセールス&提案資料作成 | 案件資料作成力、ロジカルなプレゼン |
代表直下での新規事業立ち上げ | 経営思考、泥臭い調整、巻き込み力 |
「無形商材を売る」力はそのまま「無形の企業価値を伝える」M&A仲介で極めて重要なスキルとなります。
4. 転職成功のためのステップ
Step 1:自分の経験を構造化する
営業実績(受注額、ARRなど)、関わった経営層、担当プロジェクトの規模・役割を明確に言語化。
Step 2:M&A業界の業務理解とビジネスモデルを学ぶ
仲介会社ごとの特徴(フィーモデル、成約件数、案件単価、育成制度など)を調査しておく。
Step 3:志望動機とキャリアパスを明確にする
「なぜ今、M&Aか」「今後どう成長したいか」を一貫したストーリーで整理する。
Step 4:面接対策を進める
プレゼン力やロジカルシンキング、財務三表の基本、企業調査などを事前に準備する。
5. 志望動機(例文)
私はこれまでAIベンチャーにて、法人向けSaaSの営業およびビジネス開発に従事し、スタートアップから上場企業まで多くの経営層と対話しながら、事業成長を支援してまいりました。 その中で、単なる業務効率化ツールの導入支援にとどまらず、企業そのものの経営・戦略・承継といった根本的な意思決定に関わる仕事がしたいと考えるようになり、M&A仲介というキャリアに強く惹かれるようになりました。 貴社が大切にしている「経営者に寄り添う姿勢」と「案件の本質に向き合うスタンス」に共感しており、これまで培ってきた課題整理力・提案力・スピード感を活かして、経営者の人生に深く関われる存在を目指したいと考えております。
6. 職務経歴書(例文)
【職務要約】 AIベンチャーにて約3年間、法人営業、カスタマーサクセス、新規事業開発に従事。SaaSプロダクトを用いた提案営業を通じて、経営者や役員との折衝を多数経験。ARR2億円超のチーム目標を牽引し、業界ごとのアプローチ設計やKPI改善にも貢献。スピード感と提案力を強みとし、顧客課題に深く入り込む営業スタイルを実践。 【職務経歴】 ■企業名:株式会社○○AIソリューションズ(従業員80名、SaaS提供) ■在籍期間:2021年4月〜現在 ■職種:法人営業/BizDev 【主な業務内容】 ・月間20件以上のインバウンド・アウトバウンド商談対応 ・SaaSプロダクトの提案~契約~導入~オンボーディング ・顧客の課題分析、要望のプロダクトフィードバック、事例資料作成 ・業界別KPI設計と営業戦略立案(製造業・人材業界中心) 【実績】 ・担当ARR:6,500万円/年(前年比+150%) ・新規受注件数:月平均3.2件(チーム内トップ) ・CS NPS改善プロジェクトのリード(平均8.1→9.2) ・取締役直下の新規事業(AI採用支援)立ち上げメンバー参画 【スキル】 ・法人営業、課題ヒアリング、KPI設計、プロジェクト推進 ・PowerPoint(構造的提案書)、Excel(関数、分析レポート)、Notion/Slack ・Google Analytics、MAツール活用、CRM構築支援 【資格】 ・日商簿記3級(財務三表の基礎理解) ・中小企業診断士学習中(経営理論・財務会計科目合格) 【自己PR】 成約率やARRといった「数字責任」を持ちつつも、お客様の課題解決にこだわり抜く営業スタイルを大切にしてきました。今後は、企業そのものの未来に関わる仕事を通じて、経営者の意思決定を支える存在になりたいと考えております。
7. 面接で問われやすい質問と対策
- なぜAIベンチャーからM&A仲介に?
→ 「業務改善支援から経営そのものの意思決定支援に関心がシフトした」と構造的に回答。 - 営業数字をどう追っていたか?
→ 目標値、KPI(受注数、CVR、ARRなど)と成果を具体的に述べる。 - 経営者とどう信頼関係を築いてきたか?
→ 傾聴、課題解決型提案、納期遵守など“信用”構築プロセスを語る。 - 今後どのような案件に携わりたいか?
→ 承継M&A、成長M&A、業界再編など、自身の関心領域を明確に伝える。
8. まとめ:ベンチャー出身者だからこそ、経営者の“リアル”に向き合える
AIベンチャーで培った「変化への柔軟性」「スピード」「課題解決力」「経営者との接点」は、M&A仲介の仕事において強力なアドバンテージです。
経営者の人生の意思決定を支える、という責任あるポジションに、自分の力をぶつけたい——。そう感じたら、M&A仲介というキャリアはきっとあなたにとって大きな挑戦の場になるはずです。
「経営を支える当事者」としての新たな一歩を、ぜひ踏み出してみてください。