ESG(環境・社会・ガバナンス)への対応が企業経営において不可欠となる中、ESGコンサルティング業界への転職を希望するビジネスパーソンが増加しています。特に、リスクマネジメント・サステナビリティ・ガバナンスといった観点に日常的に関わっている生命保険会社の出身者は、ESG分野において高い親和性を持つ存在といえるでしょう。
本記事では、生命保険会社の業務経験を活かして、ESGコンサルティングファームへ転職するための具体的なステップを解説し、記事の後半には志望動機と職務経歴書のサンプルを掲載しています。
1. ESGコンサルティングとは何か?
ESGコンサルティングとは、企業の持続可能性戦略(サステナビリティ)を支援する専門サービスです。具体的には以下のような業務領域があります:
- 環境(E)領域:脱炭素・GHG排出量可視化、TCFD対応、再生可能エネルギー戦略
- 社会(S)領域:人権デューデリジェンス、ダイバーシティ、サプライチェーンマネジメント
- ガバナンス(G)領域:企業統治、リスクマネジメント、コンプライアンス体制強化
- 非財務情報開示支援:統合報告書、サステナビリティレポート作成支援、GRI/SASB/ISSB対応
ESG領域は、ファイナンス・リスク・人事・戦略といった他分野と密接に連携するため、生命保険会社での知見は非常に有効に活かされます。
2. 生命保険会社出身者がESG領域で評価される理由
生命保険業界には以下のような特徴があり、ESG業務に親和性があります:
- リスク管理の専門性:保険数理・ERM(統合リスク管理)・ストレステスト等の知見
- サステナビリティとの接点:保険商品の開発、地域・高齢者支援、ESG投資の実践
- ガバナンス構築経験:規制対応、内部統制、コンプライアンスの実務経験
- 非財務情報開示対応:TCFD対応、サステナビリティレポート作成、マテリアリティ特定等
また、生命保険会社の「長期的視点」「公共性」「リスク感度」は、ESG領域においても高く評価される素養です。
3. 転職までのステップ
Step 1:ESG領域の専門性を深める
ESGコンサルは、環境・社会・ガバナンスのうちどこに強みを持つかを明確にする必要があります。興味・得意領域に合わせて、TCFD、ISSB、GRI、GHGプロトコル、人権方針などのリーディングフレームを学びましょう。
Step 2:現在の業務経験を「ESG文脈」で再定義する
たとえば「高齢者向け商品開発」は「インクルーシブな社会構築支援」、「ERM強化」は「ガバナンス体制構築支援」と再解釈できます。
Step 3:志望動機とキャリアパスを明確にする
なぜ保険業界から転職するのか、なぜESGなのか、5年後・10年後にどんな影響を社会に与えたいのかを言語化しましょう。
Step 4:ケース対策・小論文対策
ESGコンサル選考では「企業のマテリアリティをどう特定するか」「GHG排出量をどう可視化するか」などの課題に答える論述やプレゼンが求められるケースもあります。
4. 志望動機(例文)
私はこれまで生命保険会社にて、新商品開発、ERM体制構築、非財務情報開示支援などの業務に従事してまいりました。業務を通じて、生命保険が担う社会的責任と、持続可能性を意識した経営の重要性を実感する中で、より多くの企業のESG課題に伴走したいという思いが芽生えました。 特に貴社が推進されている「脱炭素経営支援」や「人権・サプライチェーンガバナンスの構築支援」に強く関心を抱いており、自身の金融知識と内部統制・リスク管理の知見を活かして、クライアントの価値創造に貢献していきたいと考えております。
5. 職務経歴書(記載例)
【職務要約】 大手生命保険会社にて約7年間勤務。商品企画・ERM体制整備・非財務情報開示・TCFD対応支援等を経験。ガバナンス・コンプライアンス・リスク管理に精通し、ESGの実務推進経験を多数有する。社内横断的なPJマネジメント経験も豊富。 【職務経歴】 ■在籍期間:2016年4月 ~ 現在 ■会社名:株式会社〇〇生命(従業員10,000名) ■職種:商品企画 → リスク統括部 → サステナビリティ推進部 【主な実績】 ● サステナビリティ推進PJ(TCFD対応) - GHG排出量スコープ1・2算定ルール策定、スコープ3調査準備 - 気候リスクと財務影響のシナリオ分析の支援 - ESG情報開示体制の構築と報告書ドラフト作成(GRI参照) ● ERM強化と統合リスクレポート作成 - 統合リスクフレームワーク策定(オペレーショナル/市場/信用/気候リスク) - 経営層向け報告資料の作成と年次レビュー運営 ● 商品企画(社会的インパクト重視型) - 介護・女性向け・がん特化型など、社会的課題に寄与する商品企画に従事 【スキル】 - サステナビリティ戦略構築、GHG排出量算定、非財務情報開示(GRI/TCFD) - リスク管理(ERM)、ESG投資評価基準理解、統合報告構成 - PowerPoint(構成設計・図解)、Excel(数値集計)、Word(報告書作成) - TOEIC 860点 【資格】 - 日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA) - サステナビリティ検定(CSR検定1級) - 日商簿記2級 【自己PR】 「社会課題に対し、金融を通じて価値創造を行う」という視点で保険業務に向き合ってきました。今後は、より多くの企業のサステナビリティ戦略構築を支援し、社会全体のESG推進を後押しするコンサルタントとして貢献していきたいと考えております。
6. 面接で問われること(例)
- なぜ保険業界からコンサルに転職しようと思ったのですか?
- ESGの中でどの領域に最も関心がありますか?理由は?
- あなたが携わった中で、最もESG的だった業務は何ですか?
- あなたが支援する場合、企業のどこから着手すべきだと考えますか?
ESGの概念理解だけでなく、自身の業務経験を「ESGの観点で語る」力が問われます。
7. まとめ:生命保険で培った社会性と持続性の視点を、ESGという新たな舞台へ
生命保険会社で働く中で培った「公共性」「リスク感度」「中長期的視点」「非財務情報への理解」は、ESGコンサルティングにおいて大きな強みになります。
企業の未来を共に描き、社会と経済の持続可能性に貢献する存在として——あなたのキャリアは、ESGという新たなステージでさらに輝くことでしょう。
ぜひ、「金融×サステナビリティ×実行支援」のプロフェッショナルとして、一歩を踏み出してみてください。