SIer(システムインテグレーター)としての経験は、ITコンサルティングファームにとって非常に魅力的なバックグラウンドです。特に日系のITコンサルティングファームでは、業務理解、要件定義、プロジェクト推進に強みを持つ人材を求めています。本記事では、SIerから日系ITコンサルへの転職を目指す方に向けて、そのためのステップを整理し、志望動機と職務経歴書の例文もご紹介します。
1. SIerとITコンサルの違いを理解する
SIerとITコンサルは業務領域に共通点がある一方で、立ち位置や価値提供のアプローチが異なります。
- SIer:顧客の要件に基づいたシステム開発・構築を担う。実装フェーズが中心。
- ITコンサル:経営課題や業務課題の抽出・分析から、システムの全体構想や戦略策定、実装支援までを担う。
つまり、上流の「Why(なぜやるか)」「What(何をやるか)」を扱う割合が高いのがITコンサルです。SIer出身者が目指すなら、自身の経験をどう上流工程につなげられるかを整理することが重要です。
2. 自身のSIer経験をコンサル的に言語化する
以下のような要素を「業務改善」「構想支援」などの文脈で表現しましょう。
- 要件定義での課題ヒアリング/業務整理
- 業務フロー改善提案、Fit&Gap分析
- プロジェクトマネジメント(PM/PMO)
- 上流フェーズに関与した経験(RFP作成、業務要件整理)
- マルチベンダーやユーザー部門との調整・ファシリテーション
3. 転職前に身につけておきたいスキル・知識
- 業務コンサルの基礎知識:BPR、業務要件定義、KPI設計など
- IT構想力:全体アーキテクチャ設計やロードマップ策定
- ドキュメンテーション/プレゼン力:資料作成・課題整理スキル(PowerPoint中心)
- ロジカルシンキング/構造化力:MECE、Why-So/So-What思考など
これらは書籍・動画・e-learningでのキャッチアップが可能です。また、業務で近しい経験があれば、それを上流寄りに言語化しておくことがポイントです。
4. 志望動機の構成と例文
志望動機は以下の3点を明確に構成すると説得力が高まります。
- なぜITコンサルになりたいのか(動機)
- なぜ日系コンサルファームなのか(志向性のマッチ)
- 自身の経験をどう活かせるか(提供価値)
■ 志望動機(例)
私はSIerとして多数の業務システム構築プロジェクトに携わる中で、開発フェーズだけでなく、業務設計や課題分析、IT戦略立案といった上流工程に対して強い関心を持つようになりました。今後はシステム導入だけでなく、クライアントの経営課題や業務変革に深く関与し、価値提供を行いたいと考えております。
貴社は業務とITの橋渡しを行う支援スタイルに強みを持ち、業務コンサル・PMOとしての活躍機会も多く、私のSIerでの要件定義・PM経験が活かせると感じ志望いたしました。
5. 職務経歴書の記載例
【職務経歴概要】
株式会社◯◯システム(2017年4月〜2024年3月)
職種:SE/PM(主に流通・製造業向け)
【業務内容】
・業務系システムの要件定義〜基本設計、開発・テスト、導入
・業務フロー分析/課題ヒアリング/改善提案
・PM/PLとして進捗・課題・リスク管理、顧客折衝
・マルチベンダーコントロール、RFP作成支援
・ユーザー部門とのワークショップ・打合せ対応
【主なプロジェクト実績】
・大手製造業向け基幹システム刷新プロジェクト(PMO)
・流通業向け販売管理システム構築(要件定義〜導入)
・購買システムのBPR支援(現状分析〜Fit&Gap)
・ユーザー部門との業務プロセス整理およびUI改善支援
【活用スキル】
・業務要件定義/プロジェクトマネジメント
・Excel、PowerPoint、Visio、Teams、Backlog、JIRA
・ロジカルシンキング/ファシリテーション/業務改善提案
まとめ:SIerの経験は、ITコンサルの土台になる
SIerで培った要件定義や業務理解、プロジェクト推進のスキルは、ITコンサルにおいて大きな強みとなります。自身の経験を「上流寄り」「構造的」に言語化し、課題解決の志向を明確にすることで、日系ITコンサルへの転職は十分に可能です。新しいフィールドでの活躍を目指し、一歩踏み出してみましょう。