税理士業界の廃業危機に迫る!その真相と未来を探る

税理士業界の現状と廃業の実態

税理士業界の廃業率データと傾向

税理士業界の廃業率は年々注目を集めています。2023年の税理士事務所の廃業数は前年の30件から81件に急増し、増加率は170%にも達しました。この結果、2023年の税理士事務所の廃業率は4.97%となり、他業種の中でも上位4位に位置しています。この廃業率の上昇は、持続化給付金などの支援策の縮小や物価高、人件費の上昇など、外的環境の変化が影響を及ぼしていると考えられます。

特に2023年の夏以降、全業種で休廃業が増加傾向にあり、43都道府県で休廃業が前年から増加しました。税理士業界もその例外ではなく、高齢化の進行や新たな制度の導入が廃業率に寄与したとされています。このような状況下で「黒字廃業」や「資産超過型廃業」が増加するなど、廃業に至る背景には多様な要因が絡んでいます。

高齢化と後継者不足が及ぼす影響

税理士業界で深刻な課題となっているのが高齢化と後継者不足です。税理士の平均年齢は高く、業界全体として若手税理士の育成や後継者探しに苦戦している状況があります。廃業に至った税理士事務所の多くが、このような後継者問題を背景に持っているというデータも報告されています。

さらに、休業や廃業に至った企業の経営者の平均年齢が70.9歳となっている現状が、それを裏付けています。高齢の税理士が業務を続けることが難しくなる一方で、若手の税理士は独立する道を選ばず、他の職種に流れる傾向も確認されています。後継者不足が続く限り、税理士業界の廃業率は今後も高止まりする可能性があります。

インボイス制度の導入と税理士への影響

2023年のインボイス制度導入は、税理士業界に大きな影響を与えました。この制度により、事業主や個人事業主にとって、適切な書類管理が必要となり、税理士への依存が高まるかと見通されていました。しかし、実際には制度の煩雑さと対応コストが増加し、特に小規模の税理士事務所には負担となりました。

インボイス制度関連の業務が増えた結果、対応しきれない税理士事務所が廃業に追い込まれるケースも出ています。一方で、顧問先が減少している税理士にとっては、新たな顧問契約の獲得の好機ともなっています。制度の影響は税理士事務所の経営体力次第で分かれており、今後も業界全体に二極化をもたらす可能性があります。

他業種との比較に見る税理士業界の特徴

税理士業界の廃業率を他業種と比較すると、全国平均と比べても高い水準を示しています。例えば、同じ士業である社会保険労務士事務所の廃業率は5.24%で、税理士事務所と同様に上位層に位置しています。一方で、パチンコホールの廃業率が6%を超えるなど、業界間での特徴はあるものの、税理士業界は特に競争環境の変化に晒されていると言えます。

また、顧問先の減少や収益性の低下といった経営課題に加え、デジタル変革や新制度対応の負担といった外的要因が、税理士業界を厳しい競争状況に押し込めています。それでも他業種と比較して税理士業界が持つ強みとして、安定した需要や専門性の高さが挙げられます。しかし、この強みを維持するためには、業界全体での改革が必要不可欠です。

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廃業増加の具体的な要因は何か?

競争激化による顧問先の減少

競争激化が税理士業界に与える影響は非常に大きく、顧問先の減少が深刻な問題となっています。特に、中小企業を主な顧客とする税理士事務所では、顧問税理士を持たない新規創業者へのアプローチが課題として浮き彫りになっています。また、税理士の数自体が増加している中で、他の税理士との競合は一層激しくなり、顧問先を確保するための差別化戦略が求められています。

顧問料低下と収益性の問題

競争激化が引き金となり、税理士業界では顧問料の低下が顕著になっています。特に、価格競争が常態化しており、これが収益性の低下につながっています。顧問料の低下は経営面だけでなく、税理士業務の質の維持にも悪影響を及ぼし、結果的に顧客満足度の低下を招きかねない状況です。このような中で、廃業に追い込まれる税理士事務所が増加しているのが現状です。

デジタル化やDX化の影響を受ける業務

デジタル化やDX(デジタルトランスフォーメーション)の進展も税理士業界に重大な影響を与えています。クラウド型の会計ソフトや自動化ツールの普及により、従来の手作業中心の会計業務が減少しました。この結果、税理士が提供するサービスの役割が曖昧化し、サービスの付加価値を高める必要性が問われています。一方で、これらの最新技術に適応できない税理士事務所が競争力を失い、廃業に至るケースも少なくありません。

人材不足と採用競争激化の現状

税理士業界においても人材不足が深刻な問題となっています。特に、税理士事務所の経営者が高齢化する中で後継者が見つからず、事務所を閉鎖せざるを得ないケースが多発しています。さらに、大手企業や他業種との採用競争が激化している今、若い優秀な人材を税理士業界へと引き込むのが難しくなっています。このような状況下で、人材不足が税理士事務所の経営を圧迫し、廃業の増加要因となっています。

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税理士業の存続のために求められる対策

ブランディングによる差別化の試み

近年、税理士業界では廃業率が上昇し、競争の激化が課題となっています。このような状況下での生存戦略として、他の税理士事務所との差別化を図るブランディングが重要です。税理士事務所ごとの強みや専門分野を明確化し、顧客にわかりやすくアピールすることで、新規顧問先の獲得が期待できます。また、例えば創業支援やM&Aコンサルティングに特化するなど、付加価値の高いサービスを提供することで、競争優位性を築くことが可能になります。顧客に「選ばれる税理士事務所」となるためには、地域密着型やオンライン対応の強化といった独自性のある取り組みも効果的です。

クラウドサービスと共存する新しい働き方

クラウド会計サービスやAIを活用したサービスの普及により、税務業務の一部が自動化されつつあります。このデジタル化の波を拒むのではなく、うまく共存することで新しい働き方が生まれます。例えば、クラウドサービスを利用して日常の記帳業務の効率化を図り、そのぶん顧問先へのコンサルティングや財務アドバイスに時間を充てることが可能です。また、リモート対応を積極的に採用することで、働き方改革を進めつつ、全国規模で新たな顧客層にもアプローチできます。これにより、経営の効率化と顧問料低下の課題の両方に対応できるのです。

若年層の魅力づけと後継者育成

税理士業界では高齢化が深刻な課題となっており、後継者不足は廃業の大きな要因の一つです。この問題に対処するには、若年層への税理士業界の魅力づけが不可欠です。特に税理士試験を目指す学生や資格保有者に実務経験を積む機会を提供し、育成の環境を整えることが重要です。また、若手税理士に成長の場を与えるためには、デジタルツールの活用や、税務以外のサービスを含む幅広い業務に参画できる仕組みが有効です。さらに、柔軟な働き方や教育プログラムを提供することで、若い世代から魅力的な職業と認識されることが期待できます。

税務以外の業務拡大による収益源確保

税理士事務所が廃業を回避し、持続可能な運営を実現するためには、税務以外の分野に事業を拡大することが効果的です。例えば、経営コンサルティング、資産運用アドバイス、事業承継支援、クラウド会計ソフトの導入支援など、多岐にわたるサービスを提供することで、新たな収益源を確保することができます。また、近年注目されているインボイス制度やデジタル化に対応する専門サービスも需要が高まっています。これらの新しい分野に積極的に取り組むことで、顧問先企業へのさらなる価値提供が可能となり、競合との差別化を図る手段となります。

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税理士業界の未来に向けた展望

継続的学習と業務の高度化への対応

税理士業界が未来に向けて持続可能な成長を実現するためには、継続的な学習と業務の高度化が欠かせません。特に、近年では税制の頻繁な改正やデジタル化の進展が進み、税理士にはより高い専門知識と新しい技術への適応能力が求められています。たとえば、インボイス制度の導入に伴い、電子帳簿保存法への対応やクラウド会計ソフトの運用スキルなど、従来業務を超えた知識の習得が重要です。継続的な自己研鑽を怠らず、これら新たなニーズに柔軟に対応する税理士が、顧客にとってより信頼できる存在となるでしょう。

政府の支援策とその期待

税理士業界の課題克服においては、政府の支援策が期待されています。たとえば、中小企業を対象とした税務支援制度の強化や、税理士によるデジタル化支援を推進する政策が挙げられます。特に、顧問税理士がいない新規創業者や小規模事業者にも利用しやすい制度の整備が、双方の負担軽減と業界の支援に繋がると考えられます。また、税理士事務所向けにIT導入支援金やDX化促進の補助金を活用するための啓蒙活動を進めることで、事業の効率化や費用削減が期待されています。このような施策を活用し、税理士が根強く社会的役割を果たしていくために、政府と業界が連携して取り組む必要があります。

中小企業との連携強化と税理士の役割再評価

中小企業の経営を支える上で、税理士の存在感を再評価する動きが求められています。中小企業は、人手不足や物価高など、現代的な経営課題に直面していますが、こうした環境下で税理士は単なる税務支援にとどまらず、経営戦略の相談役や資金調達のアドバイザーとして重要な役割を果たせます。特に、現在の「黒字廃業」や「あきらめ廃業」の増加傾向を踏まえ、税理士が積極的に中小企業に介入し、これらの状況を未然に防げる支援が求められています。このように、顧問先企業と税理士が密接に連携することで、中小企業の存続と成長を助ける新たな価値を提供できます。

海外との比較に見る日本税理士業界の可能性

海外の税理士制度や業界の実態と比較すると、日本の税理士業界にはさらに伸び代があることが分かります。たとえば、欧米諸国では、税理士が財務コンサルタントやリスクアドバイザーの役割も兼ねるケースが多く、より広範なサービスを提供しています。さらに、クラウドサービスの導入やAIを活用した業務の効率化が進んでおり、これらは日本の税理士業にとっても大きな参考となるでしょう。一方で、日本特有の高齢化や後継者不足問題に対応するため、税理士業界独自の創造性も必要です。これらグローバルな事例を取り入れつつ、日本の中小企業に適した税務・経営サポートを提供することが、国内の税理士業界の発展につながるでしょう。

この記事を書いた人

コトラ(広報チーム)