営業職でも残業代請求は可能!その仕組みと注意点を解説

営業職でも残業代を請求できる理由

法律で定められた労働時間の基本

労働基準法では、全ての労働者に対して1日8時間、週40時間を労働時間の基準と定めています。この基準を超えた場合には原則として残業代が発生し、その分の割増賃金として最低でも通常の時給の1.25倍が支払われる必要があります。この適用は営業職でも同様であり、営業職だからといって例外扱いされることはありません。営業職の労働時間管理も基本的には他の職種と同様に扱われるべきで、これが残業代請求の根拠となります。

営業職における残業代の適用範囲

営業職で残業代が適用される範囲は非常に幅広いです。たとえば、外回りの営業や歩合制の給与体系であったとしても、法定労働時間を超えた労働を行った場合には残業代が発生します。また、「営業手当」などが支給されている場合でも、その手当が残業代相当であると認められるには、契約書や給与規定で具体的に明記されている必要があります。適切に説明されていない場合や、手当が実際の労働時間に見合わない場合は、別途残業代を請求する権利があります。

法定労働時間を超えた場合の労働基準法適用

営業職であっても、従業員である以上、法定労働時間を超えた場合には労働基準法が適用されます。これにより、1日8時間、週40時間を超えて発生する残業について適切な割増賃金が支払われなければなりません。会社側が「営業職は残業代が出ない」という認識で運用している場合でも、法律の定めに反しているため、労働者側は過去の未払い分を請求できる可能性があります。この法律は全ての業種で適用されるため、営業職であっても例外ではありません。

営業職に特有の誤解とその背景

営業職において「残業代が支払われない」という誤解が生じる背景には、いくつかの要因があります。その一つが「営業手当」や「インセンティブ」が残業代の代替として支給されているという誤認です。しかし、これらの手当は通常の成果報酬や基本給の一部にすぎず、労働基準法上の残業代とは異なるものです。また、外回りの営業職の場合、労働時間が不透明であることから会社側がみなし労働時間制を主張する場合がありますが、その正当性には限界があるため注意が必要です。

「みなし労働時間制」とその限界

外回りの営業職で広く適用される制度の一つに「事業場外みなし労働時間制」があります。労働時間の管理が難しい職種に対して、あらかじめ一定の時間を労働時間とみなす制度ですが、これが適用されるには厳しい条件があります。例えば、実際には労働時間が把握可能である場合や、明らかにみなし時間を超える労働が行われている場合には、この制度は適用されません。したがって、みなし労働時間制が設定されていても、適切に運用されていなければ残業代を請求できる余地があります。

転職のご相談(無料)はこちら>

営業職の残業代に関する主なケース

固定残業代に含まれるケース

営業職の場合、固定残業代が給与に含まれているケースは珍しくありません。固定残業代とは、あらかじめ一定時間分の残業代を給与に含めて支給する制度のことです。しかし、この制度が適用される場合でも、労働契約や賃金規程に具体的な記載がなければ違法となる可能性があります。また、固定残業時間を超える労働が発生した場合には、その超過分の残業代が別途支払われる必要があります。営業職が未払い残業代を請求する際、この固定残業代の内訳や労働時間の記録が重要なポイントとなります。

営業手当が適用されている場合

営業手当が支給されている場合、この手当が残業代の代わりとみなされるケースがあります。しかし、営業手当が残業代として認められるためには明確な条件があります。それは、労働契約書や賃金規程で営業手当が残業代に相当することが明示され、かつ法定労働時間を超えた場合の労働時間を具体的に計算できることです。単に営業手当が支給されているとしても、それが適切な残業代の代替として処理されていなければ、未払い残業代が発生している可能性があります。

外回りで事業場外みなし労働が適用される場合

営業職では外回りが多くなるため、「事業場外みなし労働時間制」が適用される場合があります。この制度は、訪問先や外出中の労働時間を細かく把握することが難しい場合に、一定の労働時間を働いたものとみなす仕組みです。しかし、労働者が実際に管理下にあったり、行動が記録されていたりする場合には、この制度は適用されません。営業職においても、この制度の適用が適切であったかどうか確認することが、未払い残業代の発生状況を判断する重要なポイントです。

インセンティブと残業代の関係

営業職において、インセンティブ(成果報酬)が支給される仕組みを採用している企業もあります。このインセンティブは、営業成績に応じて報酬の一部として支払われるものですが、残業代とは別物です。つまり、インセンティブが支給されていたとしても、それだけで残業代が免除されるわけではありません。法定労働時間を超えて労働している場合には、別途残業代を請求する権利があるため、賃金の内訳をしっかり確認することが重要です。

裁量労働制が適用される場合

営業職には稀ですが、裁量労働制が適用される場合もあります。裁量労働制とは、労働時間の管理を大幅に緩和し、一定の労働時間を働いたものとみなす仕組みです。しかし、この制度は高度な専門職や企画業務に限定されているため、営業職にはほとんど適用されないことが特徴です。不当な適用が行われていた場合には、過去の労働時間を再計算し、適切な残業代を請求できる可能性があります。近年では裁量労働制を不当に適用することで未払い残業代が発生した事例も増えているため、注意が必要です。

転職のご相談(無料)はこちら>

営業職が残業代請求を行う手順

残業時間の証拠を集める方法

営業職の残業代を請求するためには、まず自分が実際に働いた残業時間を証明する証拠を集めることが重要です。タイムカードや勤怠管理システムの記録がある場合は、それを利用するのが最も確実です。また、営業職の場合は外回りや訪問が多いため、スケジュール帳、メールの送受信履歴やスマートフォンの位置情報など、業務時間中の行動を示すデータが役に立ちます。これらの証拠を整理しておくことで、残業代請求時に説得力のある主張が可能です。

適切な相談先・労働基準監督署の活用

残業代請求において早い段階で適切な相談先に相談することは有効です。特に、労働基準監督署は労働者の権利を守るために設置されている機関であり、未払い残業代の問題に関しても相談が可能です。労働基準監督署では、労働基準法違反について調査を依頼したり、是正勧告を通じて企業に対応を求めることができます。また、相談には自身の業務内容や残業に関する具体的な証拠を持参するようにしましょう。

会社や上司との交渉方法

残業代を請求する際は、まず会社や上司との話し合いを試みることが一般的です。この際、感情的にならず、客観的な証拠を元に根拠を示すことが大切です。また、法律で定められた労働時間や割増賃金のルールを踏まえた主張をすることも効果的です。対話を記録として残しておくことや、必要に応じて信頼できる第三者に立ち会ってもらうこともトラブルを防ぐために役立ちます。

弁護士に相談するタイミングとポイント

会社との交渉が難航したり、自分では法的な対処が難しいと感じた場合には、弁護士に相談するのが良いタイミングです。弁護士は労働問題に関する専門的な知識を持ち、交渉や訴訟手続きにおいて強い味方になります。相談の際には、これまで集めた証拠や会社とのやり取りの記録を整理し、明確に状況を伝えることが重要です。また、労働事件に強い弁護士を選ぶことで、よりスムーズな対応が期待できます。

請求時に注意すべき法令や手続き

残業代を請求する際には、労働基準法に基づいた法令や適切な手続きを理解しておくことが重要です。例えば、残業代の請求には時効が存在し、発生から3年以内に請求を行う必要があります。また、営業職の場合、営業手当や固定残業代制度が導入されていることがありますが、それらが適正に運用されていない場合には問題となります。契約内容や就業規則を確認し、請求の際には具体的な法律の条文を参照しながら進めることが望ましいです。

転職のご相談(無料)はこちら>

営業職の残業代請求における注意点

時効の適用と未払い請求のタイミング

営業職での残業代請求には「時効」が適用されます。具体的には、残業代の請求が発生した月の給料日の翌日から3年以内に請求しなければなりません。この3年という期間を過ぎると未払い分の請求はできなくなります。そのため、未払い残業代がある場合には、できるだけ早く請求を行うことを心がける必要があります。また、請求する際には給与明細やタイムカードなどの証拠を確保し、正確な残業時間を明示することでスムーズな手続きが可能となります。

固定残業代制度との関係を確認する

営業職では、固定残業代という名目で一定額の残業代があらかじめ支給される場合があります。しかし、固定残業代には必ず限度時間が設定されており、実際の残業時間がその限度を超えた場合には、その超過分を追加で請求する権利があります。特に「営業手当」として支給される場合、それが固定残業代に該当するのか契約書や賃金規程での明示が必要です。曖昧な説明がある場合には、詳細を確認することが重要です。

退職後に請求を行う場合の手続き

退職後でも残業代の請求は可能です。退職しても労働者としての権利は守られるため、未払いの残業代がある場合には請求することができます。ただし、退職後も前述の時効が適用されるため、迅速な対応が求められます。退職後の請求手続きでは、未払い残業代の証拠としてタイムカードやメールの送受信記録、日報などを活用することが効果的です。また、労働基準監督署に相談することで、適切な対応方法を教えてもらうことができます。

適用される法律や判例について理解しよう

営業職の残業代請求においては、労働基準法を正しく理解することが大切です。法定労働時間を超える労働には割増賃金が支払われる規定があり、営業職であっても例外ではありません。また、裁量労働制や事業場外みなし労働時間制などが不適切に適用され、未払いが発生しているケースも見受けられます。例えば、2023年には野村不動産が裁量労働制を不正適用したとして是正勧告を受けました。このような判例は請求の際の参考になりますので、類似の事例を調査・活用しましょう。

会社とのトラブル回避のための予防策

残業代の請求において会社とのトラブルを回避するためには、事前準備が重要です。まず、冷静かつ根拠に基づいて事実を提示するための証拠を整えることが必要です。次に、話し合いの際は感情的にならず、労働基準法に基づく正当な権利として請求を主張しましょう。また、トラブルを未然に防ぐためには、労働契約書や給与明細を定期的に確認し、不明な点があれば早めに会社と話し合うことが有効です。最終的に解決困難な場合は、労働基準監督署や弁護士に相談することを検討してください。

この記事を書いた人

コトラ(広報チーム)