コトラ（広報チーム） 
営業職の離職率が高い背景とは
営業職の離職率の現状データ
営業職は他の職種と比較して離職率が非常に高い職種として知られています。2021年、日本労働調査組合の調査によると、営業職で離職を検討したことがある人の割合は80.8%に達しています。また、2023年の厚生労働省の調査結果では、全職種における平均離職率が15.4%であるのに対し、営業職はこの数値を大きく上回る傾向があります。このようなデータは、営業職特有の職務環境や仕事内容が、離職率に深く影響していることを示しています。
営業職と他職種の離職率比較
営業職の離職率を他の職種と比較すると、その差は顕著です。例えば、IT業界やメーカーの離職率は10%程度とされていますが、不動産業界や保険業界の営業職では20%以上に達するケースもあります。また、第二新卒や既卒者において最初に選ばれることが多い職種が営業職（26.7%）ですが、転職理由として「職場環境への不満」や「他にやりたい仕事がある」といった声が多く挙げられている点も見逃せません。この背景には、営業職が他の職種よりもストレスが大きく、モチベーションの維持が難しいという現実があると言えます。
離職率の高さが生じる要因
営業職の離職率が高い理由として、厳しい目標達成ノルマが挙げられます。日々の業務においてプレッシャーを感じる場面が多く、特に成績が悪い場合には職場の人間関係や評価体制に不満を持つ人も少なくありません。また、営業職は成果主義が採用されることが多く、努力が必ずしも報われないと感じる従業員も増加しています。そのほか、ワークライフバランスが保ちにくい長時間労働や休日出勤も、高い離職率につながる要因と言えます。
離職率が高い職種の特徴
営業職が離職率の高い職種として挙げられるだけでなく、そのほかにも特徴があります。特に、不動産営業や保険営業など、高額商品を取り扱う業界では成果を出すためのハードルが高く、離職率が約80％に達することも珍しくありません。このような職種では、成果が出るまでに時間がかかる上、精神的な負担が大きいため、若い世代が早期に退職するケースも多いです。一方、現場での研修体制やフォロー体制が整っていないことも、こうした離職率の高さを後押ししている要因となっています。
www.kotora.jpなぜ離職率が高いのか？主な理由とその背景
厳しいノルマとプレッシャー
営業職において離職率が高い理由のひとつに、厳しいノルマとそれに伴うプレッシャーが挙げられます。営業職は成果が直接的に評価される職種であり、達成すべき売上目標が常に課されます。また、目標未達成の場合には上司からの指摘や評価の低下につながることも少なくありません。達成感を得られた場合の魅力がある一方で、プレッシャーが原因で精神的な負担を抱える人も多く、結果として退職を選ぶケースが見受けられます。
長時間労働や休日出勤の負担
営業職では顧客対応や契約活動のために、長時間労働や休日出勤が日常的になりやすい実態があります。例えば、訪問営業では顧客のスケジュールに合わせる必要があり、商談が退社時間を過ぎても続くことは珍しくありません。また、業界によっては月末や年度末などに契約の締め切りが集中し、休日返上で業務にあたる場面も見られます。こうした働き方は、プライベート時間の喪失につながり、結果的に離職を選択する理由となっています。
メンタルケア不足と職場環境の課題
営業現場では、業績重視の文化が強く、ストレスを抱えながらも相談しにくい職場環境が課題となっています。営業ノルマやクレーム対応など、日々の業務は心の負担に直結することが多いにもかかわらず、メンタルヘルスケアの仕組みが整っていない企業も少なくありません。場合によっては、精神的な不調を抱えたまま仕事を続けることでパフォーマンスが低下し、最終的に退職を選ぶ原因になることがあります。
対人関係ストレスの大きさ
営業職は顧客や上司、チームメンバーとの関係が密接であり、人と接する時間が非常に多い職種です。そのため、顧客とのトラブルや上司からの過度な要求、同僚との競争意識などがストレスの大きな要因となりがちです。特に、新人営業や経験の浅い営業担当者にとって、厳しいフィードバックやプレッシャーを与えられる環境は働き続けることを困難に感じさせる一因となります。このような対人関係のストレスは、離職率の高さに直接的な影響を与えています。
営業職の離職率が高いことで生じる企業の課題
組織全体のパフォーマンス低下
営業職の離職率が高いと、組織全体のパフォーマンスが低下してしまう可能性が高まります。営業職は企業の収益を直接支える重要なポジションであり、離職により顧客対応が滞ったり、商談が中断することがあります。また、新たに採用した人材が即戦力となるまでには時間がかかり、その間、営業チーム全体の士気に影響を与えかねません。これらの要因が重なることで、全体の売上低下や目標未達成につながるリスクが大きくなります。
採用コストと人材教育の負担増
営業職の離職率が高いと、企業は人材確保のために多くの採用コストを割かざるを得なくなります。求職者向けの求人広告や人材紹介会社への依頼などのコストが増える上、新規採用社員の教育にも時間と費用がかかります。営業職は専門的な知識やスキルが求められる職種であり、教育の負担が増えると現場のスタッフにも過剰な負荷がかかり、さらなる離職を招く悪循環に陥る恐れもあります。
会社の評価や評判への影響
営業職の離職率が高いという情報は、社内外問わず企業の評価や評判に悪影響を与える可能性があります。現代では、企業情報が求職者によって簡単に調べられる時代であり、口コミサイトやSNSを通じて離職率の高さや職場環境の問題点が拡散されるケースもあります。その結果、有望な人材が採用できなくなったり、既存の取引先から信頼を失うリスクが発生します。これが企業のブランドイメージにも影響を及ぼし、長期的な経営課題となりうるのです。
離職率引き金による退職連鎖のリスク
営業職の離職者が増えると、職場内で退職連鎖が引き起こされるリスクがあります。一人の退職が他の社員の不安を増幅させ、働き続けることに疑問を感じるケースが少なくありません。また、離職者が顧客情報や取引先との関係性を持ち去るケースもあり、社内の士気低下や人間関係の悪化がさらなる離職につながる可能性があります。こうした連鎖的な離職は、結果的に企業全体への打撃を大きくするため、早急な対策が必要です。
営業職の離職率低下に向けた解決策とは
現場の声を反映した目標設定の見直し
営業職の離職率が高い背景には、厳しいノルマや現場と乖離した目標設定が大きな要因として挙げられます。そのため、離職率を低下させるためには、現場の声をしっかりと反映した現実的かつ達成可能な目標設定が重要です。営業担当者が無理なく達成感を得られる目標を設定することで、過度なプレッシャーを軽減し、モチベーション向上につなげることができます。また、目標を設定する際には、チームや個人での成果をバランス良く評価する仕組みを取り入れることも効果的です。
働きやすい職場環境の整備
職場環境の悪化も営業職の離職率を高める要因の一つです。職場環境を改善するためには、柔軟な働き方の推進や、適切な労働時間の管理が求められます。特に、リモートワークやフレックスタイム制の導入が有効とされています。これにより、社員はより自分に合った働き方を選べるようになり、ワークライフバランスが向上します。また、職場の物理的環境を整えることも重要で、快適なオフィス空間の整備や効果的な業務ツールの導入が生産性向上につながります。
メンタルサポート体制の強化
離職率の高い営業職においては、メンタルケアの不足も問題視されています。メンタルヘルス対策として、定期的なストレスチェックの実施や、専門カウンセラーの導入が挙げられます。また、メンタル面のフォローを行う仕組みとして、上司や同僚との定期的な面談を取り入れることも効果的です。これにより、従業員の悩みや不満を早期に把握し、適切な対処を行うことが可能となります。
教育制度とキャリアパスの充実化
営業職の離職率を下げるためには、明確なキャリアパスと充実した教育制度の提供が重要です。営業職は結果が求められる職種であるため、スキルアップのための研修やコーチングプログラムを導入する企業が増えています。また、将来のキャリアプランを明確に描けるよう、昇進や異動の基準を明示することが効果的です。こうした取り組みにより、営業職の社員が長期的な勤務を見据えて仕事に取り組む意欲を高めることができます。
個人に合った営業スタイル支援
営業職の仕事は個人の適性やスキルによってパフォーマンスが大きく変わるため、個々に合った営業スタイルの支援が必要です。例えば、得意分野に基づいた顧客層の割り振りや、業務の進め方を自分で調整できる仕組みの導入が有効です。また、デジタルツールやデータ分析を活用することで、効果的な営業戦略が立てやすくなります。個人の強みを最大限に活かせる支援体制を整えることで、離職率の低減と企業の業績向上を図ることができます。
営業職における新しい働き方の提案
リモート営業の可能性と導入事例
近年、リモート営業は営業職の新しい働き方として注目されています。特にコロナ禍をきっかけに、オンラインでの商談や顧客とのやり取りが一般的になりました。リモート営業を導入することで、移動時間の削減やワークライフバランスの向上が期待できるだけでなく、地方や遠方の顧客にも効率的にアプローチが可能です。例えば、SaaS企業の一部では営業スタッフ全員がリモート環境で働く体制を整え、離職率の低下と収益の向上を両立しています。これにより、営業職特有の負担が軽減され、より持続可能な働き方が実現できます。
フレキシブルな勤務時間の導入
営業職における離職率の原因の一つとして、長時間労働や休日出勤が挙げられます。このような環境を改善するために、フレキシブルな勤務時間の導入が求められています。例えば、営業活動の時間を自由に調整できるフレックスタイム制度は、仕事とプライベートの両立を図る上で非常に有効です。顧客に合わせて柔軟にスケジュールを組むことで効率的な働き方が可能になり、社員の満足度向上だけでなく、会社としての生産性向上にも繋がります。
成績評価ではなく努力評価へのシフト
営業職では成績に基づく成果主義的な評価が一般的ですが、それが過剰なプレッシャーを生む要因になっています。離職率を低下させるためには、「努力評価」へシフトすることが必要です。この評価方法では、具体的な営業活動や努力を数値やプロセスとして記録し、それを評価する仕組みを整えることが求められます。例えば、顧客訪問や商談回数、資料作成への取り組みなど、活動内容を正当に評価する制度を導入する企業が増えています。このような仕組みは単なる数字の結果だけでなく、日々の積み重ねを認識し社員のやる気を引き出す助けになります。
チーム制営業で個人負担を軽減する試み
営業職でのストレスの大きな原因となるのが、個人にかかる業務負担です。この問題を解消するため、多くの企業が「チーム制営業」を取り入れる試みを行っています。チームで案件や顧客を担当することで、一人にかかる負担を軽減し、より戦略的な営業活動が可能になります。また、チームメンバーとのコミュニケーションが活性化することで、相談しやすい環境が生まれ、メンタルケアの面でも効果が期待できます。実際に、ある大手不動産企業ではチーム制の導入後、営業職の離職率が大幅に減少したケースも報告されています。