コトラ（広報チーム） 
税理士の平均年齢が高い理由とは？
税理士の平均年齢をデータで見る
税理士業界は、他の職業と比較して平均年齢が非常に高いという特徴があります。具体的には、日本税理士会連合会のデータによると、税理士の平均年齢は60歳に達しています。さらに、年齢層の分布を見ると、60歳代が30.1%と最も多く、次いで50歳代（17.8%）、70歳代（13.3%）が続いています。一方で、20歳代はわずか0.6%と非常に少数にとどまっており、若い世代の税理士が非常に少ないのが現状です。
税務署OBの影響と高齢税理士の割合
高齢の税理士が多い要因の一つに、税務署を退職したOB税理士の存在が挙げられます。税務署で長年勤務した後に税理士登録を行うケースが一般的であり、これが業界全体の平均年齢を押し上げる要因となっています。税務署OBは税務知識や実務経験が豊富であるため、顧客からも高い信頼を得やすく、現場での需要が高い傾向があります。このため、OB税理士が自身のキャリアを継続しやすい環境が整っているといえるでしょう。
定年制がない職業ならではの特徴
税理士という職業には定年制が設けられていません。これは、多くの一般的な職業と異なる点であり、年齢に関係なく働き続けることが可能です。多くの税理士が、自身の健康状態やモチベーションが続く限り業務を継続する傾向にあります。また、税理士資格は専門性が高く一度取得すれば生涯有効であるため、年齢にかかわらずそのスキルを活かすことができます。このような特徴が、業界に高齢税理士が多い要因の一つとなっています。
長く続けられる業務内容とその背景
税理士業務の性質もまた、長期間にわたって働き続けやすい理由となっています。税務申告や企業の財務コンサルティングといった業務は、体力よりも経験や知識が求められるため、高齢になっても比較的負担が少なく続けられる職業です。さらに、一度税理士として独立すると、長く付き合う顧客が多く、信頼関係が構築されるため、顧客側から高齢の税理士に変わらず仕事を依頼するケースも多いのです。こうした背景が、税理士の平均年齢が高い一因となっています。
www.kotora.jp税理士試験の現状とその難易度
税理士試験の合格者の年齢層
税理士試験は長期にわたって取り組む必要があるため、合格者の平均年齢はやや高い傾向にあります。具体的なデータを見ると、令和4年度の官報合格者の年齢層では41歳以上の割合が44.2％を占め、若手層よりもミドル層やシニア層の合格者が多いことがわかります。比較的若い年齢層である20歳以下は全体の4.0％、21歳～25歳は17.3％と少ない割合にとどまっています。このように、税理士試験の平均合格年齢は相対的に高くなっており、若年層にとってハードルの高い試験とされています。
税理士試験の科目別難易度の特徴
税理士試験は、11科目の中から選択して受験する「科目合格制」が採用されているため、受験者が効率的に科目を選択して合格を目指すことが可能です。しかし、科目によって難易度に違いがあり、特に「法人税法」や「所得税法」といった主要科目は難易度が高いことで知られています。反対に、「簿記論」や「財務諸表論」は基礎科目とされますが、それでも短期間での合格は難しく、多くの受験者が数年かけて対策を行います。この分野別の難易度が、受験者の年齢層に影響を与えている要因の一つといえます。
合格者数の減少とその影響
近年、税理士試験の受験者数と合格者数は減少傾向にあります。令和5年度の受験者数は32,893人であり、これに対する合格者数は7,125人と全体の22％程度にとどまっています。この減少は、試験の難易度が高いことに加え、試験制度自体が長期に渡ることから、次世代の受験者にとって負担が大きいことも要因とされています。合格者数の減少は、税理士の高齢化に拍車をかけ、若手税理士の不足をより深刻なものにしている状況です。
公認会計士との試験制度の比較
税理士試験は科目合格制を採用しているのに対し、公認会計士試験は一括合格制の制度となっています。この違いにより、税理士試験の受験者は仕事や家庭と両立しながら長期的に挑戦できる一方で、資格取得までに多くの時間がかかる傾向があります。一方、公認会計士試験では短期集中型の学習が求められるため、若い層を中心に合格者が多い傾向があります。このような試験制度の違いが、両資格の平均合格年齢や受験者層に違いを生んでいると考えられます。
若手税理士が少ない現状とその背景
資格取得までにかかる時間の長さ
税理士が若手人口に乏しい理由の一つとして、資格取得までにかかる時間の長さが挙げられます。税理士試験は非常に難易度が高く、科目合格制度が採用されているため、合格までに数年から10年以上かかることも珍しくありません。さらに、試験を受ける前に2年以上の実務経験が必要なため、資格取得に至るまでの道のりは他の資格と比べて長期に及ぶ傾向があります。
また、税理士試験の平均合格年齢も比較的高く、41歳以上が合格者全体の34.5%を占めています。その背景には、受験者層が社会人や転職希望者に集中する現状があるためです。このように長期間の学習と実務経験が要求されることから、若年層が資格取得を目指す際のハードルとなっています。
若手人口減少と業界への影響
税理士業界に若手税理士が少ない状況は、単に試験の難易度や取得までの時間の長さだけでなく、日本全体の少子高齢化とも関連しています。若年層の人口減少により、そもそも税理士を目指す若者の数が減少しているのです。
特に税理士業務は高齢者向けの相続税対策や年金関連サポートなど、高齢者が顧客となるケースが多く、顧客との長期の関係を築く必要があります。そのため、若手が業界に参入しづらく、若い世代が不足することが、業界全体の高齢化をさらに深刻化させる要因となっています。
こうした人口構造の変化により、税理士業界では新たな人材確保が難しくなり、将来的には税理士1人あたりの負担が増加する懸念もあります。
税理士業界は魅力的なのか？若者の意見
若者が税理士を目指す動機についても課題が見られます。税理士は高収入や社会的地位の高い職業である一方、近年では業務がデジタル化され、AIやクラウド会計ソフトの普及によって仕事の一部が自動化される傾向があります。このため、若い世代が税理士に対して「時代遅れの職業」という印象を抱くケースも少なくありません。
一方で、顧客と直接関わり、長期的な信頼関係を築くことができる職業としての魅力は依然として存在します。ただし、若い世代がこの職業の意義や将来性を感じられる仕組みや環境整備が求められています。例えば、業界内のキャリアパスの明確化や、試験制度や業務内容をより魅力的に説明する努力が必要でしょう。
若手税理士が増えない現状を打開するためには、試験制度の見直しだけでなく、業界としてのプロモーションや職業イメージ改善が不可欠です。税理士の平均合格年齢を引き下げる取り組みも含め、若者が目指しやすい環境を整えることが今後の税理士業界の持続的な発展に繋がります。
税理士業界の未来と解決策
業界が直面する課題とは
税理士業界は現在、多くの課題に直面しています。その中でも特に深刻なのは、業界全体の高齢化問題です。税理士の平均年齢は60歳を超えており、20代の税理士の割合はわずか0.6%という非常に低い水準に留まっています。この年齢分布の偏りは、若手の税理士が少なく、業界内の新陳代謝が進みにくい状況を反映しています。また、高齢税理士の引退が進む一方で、若手の育成が追いついていないため、将来的には顧客対応に支障が出るリスクも懸念されています。
若手税理士の育成と活用方法
若手税理士を育成し、業界内で活用していくことは、この高齢化問題を解決する上で不可欠です。税理士試験は非常に難易度が高く、平均合格年齢も他の資格試験と比べて高いことが特徴です。これにより、若手が参入しにくい状況となっています。育成のためには、資格取得のプロセスを支援する奨学金制度や、学習時間を確保しやすい勤務環境の構築が求められます。また、取得後のキャリアアップを後押しするために、新規参入者に対するマーケティング支援や顧客獲得のための教育プログラムの充実も重要です。
税理士のデジタル化と効率化
税理士業界の未来を切り開くためには、デジタル化の推進が欠かせません。近年、税務業務にもクラウド会計ソフトやAI技術が導入され、より効率的に作業を進められる環境が整いつつあります。しかし、多くの高齢税理士にとってデジタル化はハードルが高く、その普及が遅れる一因となっています。特に、手作業による申告書作成に頼り続けているケースも少なくありません。業界全体で効率化を進め、デジタルツールの教育を促進することが必要です。これにより、若手税理士にとっても働きやすい環境が整備されるでしょう。
業界全体の変革が求められる理由
税理士業界が直面する高齢化問題を解決し、未来を明るいものにするためには、業界全体の変革が必要です。税理士の平均合格年齢が高い背景には、試験科目の難易度や取得に要する時間の長さが関係しています。この状況を打破するためには、試験の仕組みに改善の余地があります。また、若手税理士が活躍しやすい環境を整えることで、世代間のバランスを確保することが求められます。さらに、デジタル化や効率化だけでなく、業界が一丸となって新しいビジネスモデルを模索していく必要もあります。時代の変化に合わせて柔軟に対応することが、業界全体の持続可能性を高める鍵となるでしょう。