2024年法改正で何が変わる?人事労務担当者必見のポイント10選

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2024年の法改正概要

適用猶予業種の労働時間の上限規制開始

 2024年4月1日より、これまで適用が猶予されていた業種にも労働基準法に基づく「時間外労働の上限規制」が導入されます。この改正により、例えばトラックドライバーなど長時間労働が問題視されてきた職業でも、時間外労働が年間960時間以内に制限されます。これにより働き方改革が一層進むことが期待されますが、企業側は労働時間管理の徹底が求められるため、柔軟なシフト管理や業務の効率化が急務となります。

裁量労働制の対象労働者要件の変更

 裁量労働制の対象となる労働者の要件が見直され、2024年4月1日から新しい基準で運用が開始されます。この変更により、特定の職種や業務内容に該当しない従業員への誤った適用を防ぐことが目的とされています。社労士による助言や適切な雇用契約書の作成・管理が重要となりますので、法改正を正確に理解し運用することが企業に求められます。

労働条件明示ルールの改定

 2024年4月1日から、労働条件通知書や雇用契約書に明示すべき内容が追加されます。新たに、就業場所や業務の変更の範囲、リモートワークに関する条件などの詳細が明示必須となります。この改定は労働者の権利を保護する目的ですが、企業側では契約書や通知書の再構築が必要になります。特に複雑な雇用形態を持つ企業では、労働法に詳しい専門家のサポートを受けることを検討すると良いでしょう。

社会保険適用範囲の拡大

 2024年10月1日をもって、健康保険や厚生年金への加入対象がさらに拡大します。これにより、短時間労働者であっても一定の条件を満たせば適用対象となります。この改正は、非正規雇用を含む多くの労働者の保障を図るものです。企業は対象となる従業員の確認を早急に行い、必要な手続きを進めることが求められます。また、新たな社会保険料負担が生じるため、十分な予算計画も重要な対応事項です。

障害者法定雇用率の引き上げ

 2024年4月1日から、障害者法定雇用率が現行の2.3%から2.5%に引き上げられます。さらに、2026年7月には2.7%へと段階的に引き上げが予定されています。この改正により、企業は新たに障害者雇用に取り組む必要がある場合があります。未達成の場合、助成金の減額や罰則リスクも生じるため、計画的な採用活動や、既存の業務における合理的配慮の提供が求められます。

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企業が対応すべきポイント

労働時間管理の見直し

 2024年の法改正により、すべての業種で労働時間の上限規制が適用されるようになります。これに伴い、企業は従業員の労働時間を適正に管理する仕組みを構築する必要があります。特に時間外労働の罰則付き上限規制の導入があるため、労働時間の記録方法や残業管理体制の見直しが求められます。また、労働時間をより効率的に管理するため、勤怠管理システムを導入することも効果的な対策と言えるでしょう。

就業規則の改訂と周知徹底

 法改正に伴い、裁量労働制の対象者要件や労働条件明示ルールが変更されます。これに合わせて就業規則の見直しが必要です。特に労働条件通知書の項目の追加や更新内容は、就業規則と矛盾が生じないよう注意が必要です。改訂した就業規則は従業員に周知徹底することが法律上義務付けられていますので、社内研修や掲示板、電子デバイスへの通知などの方法を活用して、全従業員に共有しましょう。

社会保険手続きへの対応

 2024年10月より、社会保険の適用拡大が施行されます。これにより、短時間労働者への社会保険適用の範囲が広がり、従来の適用対象外だった従業員も新たに対象に含まれる可能性があります。そのため、従業員の労働時間や雇用契約の確認が必要です。また、適用される従業員の増加に伴い、社会保険料のコストが増加することも考慮した計画を策定することが重要です。これらの手続きを正確に遂行するため、社労士との連携も効果的です。

障害者雇用率達成のための対策

 障害者雇用促進法の変更により、2024年4月から法定雇用率が2.5%に引き上げられます。これに対応するため、企業は障害者雇用計画の作成や、雇用における配慮事項を再確認する必要があります。障害者が働きやすい職場環境を整備するだけでなく、継続的に雇用できるよう支援体制を強化することが求められます。自治体や専門機関のサポートを活用しつつ、採用候補者とのマッチングを進めることが有効です。

法改正研修の実施

 人事労務担当者として法改正の内容を正確に理解することは必須です。特に2024年の法改正は多岐にわたるため、必要に応じて専門家を招いた研修を実施し、最新情報を共有する体制を整えることが重要です。また、従業員に対しても改正内容を正しく周知することで、法令遵守を徹底できるようにします。社労士などの専門家と連携し、企業全体で法改正に適応する取り組みを行うことが効果的です。

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人事労務における具体的対応ケース

改正に伴う雇用契約書の変更

 2024年の法改正により、労働条件通知書や雇用契約書に明示すべき項目が4つ増加します。この変更に対応するためには、すべての労働者に対して明確な雇用契約書を発行し直す必要があります。改正された内容は、就業場所や業務の変更の範囲を明示することなどが含まれており、未対応の場合、法令違反とみなされる可能性があります。人事労務担当者は、法改正を反映した雇用契約書のフォーマットを準備するとともに、従業員に適切に説明することが求められます。特に、社労士との連携により法令遵守を徹底することが重要です。

労使間協議の要点と対応

 2024年の法改正において重要なのが、労使間の連携強化です。裁量労働制に関する労働者の適用要件が変更されるため、従業員の実務にどのような影響があるのかを念頭に、事前に労働組合や労働者代表との協議が必要となります。また、労働条件通知書の改定や障害者雇用率の引き上げといった項目についても、従業員の理解を得るためにオープンなコミュニケーションが不可欠です。労使間で透明性を高めた協議を行うことで、職場環境をより円滑に進化させることができます。

コスト増加に対する予算計画

 2024年の法改正では、企業にとってコスト増加が避けられないケースも想定されます。例えば、障害者雇用率の引き上げに対応するための採用や設備投資、また社会保険適用範囲の拡大に伴う保険料負担の増加が挙げられます。このため、人事・総務担当者は予算計画を見直し、必要に応じたコストの最適化を図る必要があります。平均賃上げ率が高水準となっている現状を踏まえ、企業は人件費の増加を前提とした柔軟な財務計画を立てることが求められます。

短時間労働者への対応事例

 法改正による社会保険の適用範囲拡大は、短時間労働者に大きな影響を及ぼします。2024年10月1日以降、新たに社会保険の加入対象となる短時間労働者に対し、事前に十分な説明を行い理解を深めることが必要です。また、保険料負担が発生することから、短時間労働の希望者が減少するリスクも考慮する必要があります。この対応の一環として、短時間労働者向けの説明会を実施する、あるいは個別面談を行い、柔軟な勤務体制を提案することが問題解決につながります。

改正法に不対応の場合のリスク

 法改正への対応を怠ることは非常に大きなリスクを伴います。例えば、労働条件明示ルールに不対応であった場合、労働基準法違反と判断され、企業には行政指導や罰則が課される可能性があります。また、障害者雇用率の未達成は、企業イメージの損失や納付金の増加につながりかねません。さらに、裁量労働制や労働時間管理の不備は、従業員とのトラブルを引き起こし、労使関係の悪化を招く恐れがあります。法改正の内容を確実に把握し、迅速かつ適切な対応を行うことが、人事・労務の重要な役割です。

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今後の動向と見通し

フリーランス保護法に見る多様な働き方への影響

 2024年度の法改正では、多様な働き方の促進と労働者の保護が重要なテーマとなっています。特に注目されているのが、フリーランス保護法の導入です。この法改正により、従来の雇用形態に含まれないフリーランスに対する保護が強化され、不公正な契約条件や未払いなどのリスクが低減されると期待されています。これにより、多様な働き方を支援する環境が整備され、企業は優秀な人材をフレキシブルに活用する機会を増やすことができます。人事労務担当者にとっては、フリーランス契約の管理や新しい法規制の周知が課題となるでしょう。

デジタル化とリモートワークへの対応強化

 2024年の法改正において、デジタル化とリモートワークの環境整備も重要な議題として取り上げられています。新型コロナウイルスの影響からリモートワークが急速に普及した背景を受け、労働基準法などの調整や規制緩和が進展しています。例えば、リモートワークにおける労働時間管理や安全衛生管理に関するガイドラインが改定される動きも報告されています。人事担当者は、リモート環境での労働条件の適切な明示や、クラウド型労務管理ツールの導入などにより、業務効率化を図ることが求められます。

政府の将来的な改正方針

 政府は、今後も労働環境の改善を目的とした法改正を計画しています。2024年の改正を皮切りに、裁量労働制や社会保険制度の更なる見直しが議論されています。これに加えて、次世代を見据えた働き方の改革、例えば人工知能(AI)の活用に合わせた法的対応や、人材不足への長期的な解決策などが注目されています。社労士をはじめ専門家の間でも、こうした動向を把握して最新情報を企業に提供する重要性が高まっています。

人材不足と法改正の関係性

 少子高齢化に伴う労働人口の減少により、人材不足は深刻な社会問題となっています。2024年の法改正では、人材不足を背景に労働環境の改善が優先課題として挙げられています。特に障害者雇用促進法の改正は、多様な人材の活用を促進するための具体的な取り組みとして期待されています。また、働き方改革により、職場環境を柔軟にすることで、育児や介護を抱える労働者の負担軽減を図ることも目指されています。人事労務担当者は、これらの改正に対応することで、採用や定着率向上のための戦略的対応が可能となるでしょう。

人事業務の効率化に向けた提案

 2024年の法改正に対応するにあたり、人事業務の効率化がこれまで以上に重要となります。法改正により、労働条件明示ルールの改定や、社会保険手続きにおける業務増加も予想されるため、デジタルツールやアウトソーシングの活用が有効です。例えば、労務管理システムや電子契約サービスを導入することで、事務作業を効率化し、本質的な人材戦略に時間を割くことが可能となります。また、社労士との連携を強化して法改正に関する知識を共有することで、コンプライアンスを確保すると同時に、効果的なリスク管理を実現することができます。

この記事を書いた人

コトラ(広報チーム)