サステナビリティ時代に監査法人が果たす新たな使命とは?

heart - サステナビリティ時代に監査法人が果たす新たな使命とは?loading - サステナビリティ時代に監査法人が果たす新たな使命とは?お気に入りに追加

サステナビリティと監査法人の現状

サステナビリティが求められる背景

 近年、地球規模での環境問題や社会的課題が深刻化する中、持続可能な社会の実現に向けた取り組みが求められています。地球温暖化や気候変動、労働環境の改善、公正な経済活動など、幅広い分野での対応が必要となり、これらは「サステナビリティ」という概念のもとに統合されています。この背景には、ESG(環境・社会・ガバナンス)投資の拡大が見られ、投資家やステークホルダーが企業の持続可能性に対する関心を高めていることが挙げられます。また、IFRSが主導する国際基準の整備や、日本国内でのサステナビリティ情報の開示ルール強化によって、サステナビリティが単なる理念にとどまらず、経済活動の主軸として重要性を増しています。

監査法人が直面する課題と新たな役割

 サステナビリティが重要視される中、監査法人もその役割の変革が求められています。従来の財務情報の保証業務だけでなく、非財務情報、特にサステナビリティ関連の情報に対する信頼性を担保することが期待されています。しかしながら、非財務情報の評価基準や保証手法はまだ発展途上であり、これが監査法人にとって大きな課題となっています。また、専門知識を持つ人材の育成や新しい国際基準への対応体制の整備も急務です。一方で、真実性・信頼性の高い情報を提供することで、企業と投資家の間に信頼を構築し、資本市場の健全性を保つという新たな使命を果たすべき責務が監査法人にあります。

重要性を増す非財務情報の開示

 サステナビリティ情報を含む非財務情報の開示は、企業経営においてますます重要な役割を果たしています。特に日本では、2023年3月期の有価証券報告書からサステナビリティ情報の記載が義務化される動きがあり、プライム上場企業に対する開示基準も加速しています。この過程で、非財務情報は中期的な経営戦略や業績評価に必要不可欠な要素と位置付けられ、ガバナンスの透明性を高める役割を担っています。監査法人においても、サステナビリティ情報の保証業務を適切に実施し、その信頼性を高めることで、市場全体の透明性向上に寄与する必要があります。こうした対応は、企業の持続可能な価値創造の基盤を形成するものと考えられます。

転職のご相談(無料)はこちら>

気候変動・ESGへの対応と監査法人の責務

ESG投資の拡大と監査法人の対応

 近年、ESG投資への注目が急速に高まりを見せています。特に、環境(Environmental)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)に関連する情報が投資家の意思決定において重要な要素となりつつあります。この流れの中で、監査法人には新たな対応が求められています。企業が公表するESG情報の信頼性をいかに確保するかが、大きな課題となっているのです。

 監査法人は、これまで財務情報の監査で培った専門知識を基礎としつつ、ESG分野におけるスキルと体制を充実させる必要があります。例えば、エネルギー消費量や炭素排出量といった非財務情報の計測や開示に対し、客観的な保証を行うことで資本市場全体の信頼性を高める役割が期待されています。さらに、投資家が求める情報に迅速かつ正確に応えるための取り組みも強化する必要があります。

気候変動リスクの評価と保証業務

 気候変動は企業経営に多方面で影響を及ぼし、そのリスク評価は非常に重要です。例えば、製品供給網や施設運営が気候変動の影響を受ける可能性があるため、多くの企業がリスク管理プロセスの一環としてその影響を分析する必要があります。しかし、その透明性や信頼性が不十分であると、投資家やステークホルダーの理解を得るのが難しくなります。

 監査法人は、気候変動リスクに関する情報の信頼性を担保する保証業務を提供することで、企業と投資家をつなぐ重要な架け橋となります。この業務には、企業が公開するデータが適切に計測され、報告されているかを検証するプロセスが含まれます。また、国際基準や規制要件に即して保証業務を実施することにより、企業の気候変動対応の信ぴょう性を高めることができます。

ステークホルダーの信頼を得るための透明性向上

 企業がESGやサステナビリティ情報を提供する際には、単なる開示だけではなく、その信頼性と詳細性が重視されています。なぜなら、不十分な情報開示はステークホルダーの信頼を損ない、資本市場における評価に悪影響を及ぼす可能性があるからです。したがって、企業にとっての課題は、透明性を高めることにあります。

 この透明性の向上において、監査法人は重要な役割を果たします。監査法人が企業の非財務情報に対し保証業務を提供することで、その透明性が高まり、ステークホルダーとの信頼関係が強化されます。また、国際的な基準やベストプラクティスを取り入れることで、情報開示の質をさらに高めることが可能です。これにより、企業はサステナビリティ時代において持続可能な価値を創造し、市場全体の発展に貢献することが期待されています。

転職のご相談(無料)はこちら>

非財務情報の保証と国際基準への準拠

ISAE3000やISSA5000の背景と意義

 非財務情報の保証業務において、国際的なガイドラインであるISAE3000やISSA5000の重要性が増しています。これらの基準は、企業が開示するサステナビリティ情報やESGデータの信頼性を向上させるために設けられたものです。ISAE3000は国際監査基準審議会(IAASB)によって策定され、非財務情報の保証を行う際の基本的なフレームワークとなっています。一方、ISSA5000は、特にサステナビリティ報告に焦点を当てており、環境や社会的課題に対応する国際的な期待を反映しています。これらの基準は、監査法人が非財務情報の信頼性を担保し、資本市場の信頼性を支える役割を果たすために欠かせないものです。

非財務分野における保証業務の実践

 非財務分野における保証業務は、これまでの財務情報とは異なる専門知識やアプローチが求められる分野です。ここで強調されるのは、サステナビリティやESG関連の情報が投資家やステークホルダーにとって重要性を増していることです。監査法人は、このような情報の開示が適切であることを保証する責務を負っています。例えば、気候変動リスクに関する情報や、企業が掲げる持続可能な目標の進捗状況に関して、データの正確性や裏付けに関する保証を提供しています。これにより、非財務情報の透明性が向上し、投資家や社会からの信頼を得ることが可能となります。

国際的な期待への応え方

 非財務情報の保証においては、国際基準への準拠が求められるだけでなく、地域ごとの環境や社会的課題への対応も必要です。例えば、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)の基準やTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)など、世界的な動きに同期したアクションが重要です。監査法人は、これらの基準に基づく監査業務を展開しつつ、企業のサステナビリティ活動を評価・支援する体制を整える必要があります。また、GPIFのような機関投資家からもサステナビリティ情報の正確性や透明性が強く求められており、これに応じた保証業務を行うことが日本市場における信頼性の向上につながります。こうした取り組みによって、監査法人は国際社会の期待に応えるための重要な役割を果たしています。

転職のご相談(無料)はこちら>

監査法人の未来図と新たな人材像

非財務情報専門家の必要性

 近年、サステナビリティを巡る社会的要求が急速に高まる中、監査法人には新たな専門性が求められています。その中でも特に重要なのが、非財務情報に特化した専門家の存在です。従来の財務情報を核とした開示体制に加え、気候変動や社会的責任などの非財務情報の信頼性を保証する能力が必要不可欠となっています。このような背景には、サステナビリティ情報が中期的な経営戦略やガバナンス説明にも直接関わるという点が挙げられます。監査法人が非財務情報専門家を積極的に育成し、社内外の専門性を高めることが長期的な価値創造の基盤となり得ます。

デジタル技術を活用した監査業務の進化

 監査業務の効率化と精度向上を実現するには、デジタル技術の活用が重要な鍵となっています。特にビッグデータやAI技術は、膨大な量の非財務情報を分析する上で不可欠なツールです。デジタル技術を活用することで、データの正確性と透明性を確保しつつ、複雑性の高い情報開示のプロセスを簡潔かつ迅速に進められると期待されています。さらに、リモート環境でも確実な監査を行うことが可能になるため、監査法人の信頼性向上につながります。このようなデジタル技術の導入は、サステナビリティ時代における監査法人の責務達成を支える重要な手段となります。

持続可能な価値創造を支える監査法人の役割

 サステナビリティが企業経営の柱として位置付けられる現在、監査法人には「持続可能な価値創造を支えるサポーター」としての役割が期待されています。この役割を果たすためには、単なる情報の信頼性保証にとどまらず、企業が長期的なビジョンを描けるようアドバイザリー業務を展開することが重要です。また、投資家やステークホルダーからの信頼性を確保し、企業と社会の橋渡しとなることで、資本市場のさらなる発展に寄与することができます。監査法人が持続的な付加価値を提供する存在となるためには、非財務情報の充実とその効果的な保証を軸に据えた新たな方向性を打ち出すことが不可欠です。

この記事を書いた人

コトラ(広報チーム)