監査法人が推奨するウォークスルーで見つける業務プロセスの盲点

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ウォークスルーとは何か?その基本概念と目的

ウォークスルーの定義と概要

 ウォークスルーとは、業務プロセスや内部統制の整備状況を確認するための評価手法の一つです。この手法では、代表的なサンプル取引を基に業務の流れを実際に追い、どのような手順やプロセスを経て記録や取引が行われているのかを詳細に確認します。ウォークスルーは、業務プロセスやその内部コントロールの理解を深めるだけでなく、リスクや問題点の特定にも役立つのが特徴です。

内部統制とウォークスルーの関係性

 内部統制は、財務報告の信頼性確保や業務の有効性向上、法令遵守などを目的として構築される仕組みです。ウォークスルーは、この内部統制の評価や改善に欠かせない手法であり、特に整備状況評価において大きな役割を果たします。内部統制報告制度(J-SOX)の運用開始以降、多くの企業がウォークスルーを採用し、財務報告の信頼性を確保するために使用しています。

ウォークスルーが業務プロセスで果たす役割

 ウォークスルーの最大の役割は、業務プロセスの詳細を把握し、その中でリスクや改善すべきポイントを見つけ出すことです。各プロセスの流れを一つひとつ追うことで、どのような内部統制がどこで機能しているのか、また逆にどの部分にコントロールの欠陥があるのかを明らかにします。これにより、業務フローの最適化やリスク軽減につながる具体的な施策を導き出すことができます。

監査法人がウォークスルーを推奨する理由

 監査法人がウォークスルーを推奨する理由の一つは、その有効性にあります。ウォークスルーを通じて業務プロセスを詳細に分析することで、内部統制の整備状況を正確に評価でき、潜在的な課題も発見しやすくなります。また、ウォークスルーの評価結果を基に財務報告におけるリスクを特定し、早期に対処することで、企業の財務報告の信頼性向上や監査品質の向上に寄与することから、監査法人にとって重要な手法とされています。

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ウォークスルーの実施手順とポイント

業務プロセスのフロー把握

 ウォークスルーを実施する際には、まず業務プロセス全体の流れを正確に把握することが重要です。これには、取引の開始から会計処理に至るまでの一連の業務フローを詳細に確認し、対象となるプロセスがどのように機能しているかを理解することが含まれます。監査法人による支援のもと、業務記述書やフローチャートを活用し、業務内容や操作手順を明確に文書化していくプロセスが不可欠です。また、複数の部署や担当者が関与する場合は、それぞれの役割と責任範囲についても整理が必要です。

リスクポイントの特定とキーコントロール

 業務フローを把握した後は、リスクポイントの特定を行います。リスクポイントとは、不正やエラーが発生しやすい箇所や業務上の重大な問題が潜在する領域を指します。たとえば、売上計上や在庫管理における不備、または承認プロセスの欠陥などが挙げられます。これらのリスクに対処するためには、キーコントロール(重要な内部統制の手段)を適切に配置することが求められます。リスク・コントロール・マトリックス(RCM)を活用してリスクと対応するコントロールを紐付けることで、監査法人からの評価基準を満たすことが可能となります。

実施時のツールとドキュメンテーション方法

 ウォークスルーを正確に実施するためには、適切なツールとドキュメンテーションが欠かせません。主に使用されるのは、業務記述書、フローチャート、そしてRCM(リスク・コントロール・マトリックス)の「3点セット」です。業務記述書は、日常業務の具体的な手順や詳細を文書化したものです。フローチャートは、業務フローを視覚的に表現するツールとして利用され、特にプロセス間の関係性を理解するのに役立ちます。一方、RCMはプロセスに潜むリスクを識別し、それに対応したコントロール手段をまとめるためのマトリックス形式のツールです。これらの資料は後に監査法人による精査や内部報告書作成にも役立つため、正確かつ詳細に作成することが求められます。

監査法人との事前協議の重要性

 ウォークスルーを実施する前には、監査法人との事前協議を行うことが重要です。この協議では、評価対象となる業務プロセスの選定や、リスク評価の基準について合意を得るための話し合いが行われます。これにより、評価の目的や範囲が曖昧になるリスクを軽減し、効率的かつ正確なウォークスルーの実施が可能となります。また、監査法人の専門的な視点を借りることで、自社内では気付けなかった盲点や不備を事前に把握することができるため、最終的な監査結果に与える影響を最小限にとどめることが期待できます。

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ウォークスルーで明らかになる業務プロセスの盲点

典型的なプロセス上のリスク例

 業務プロセスには、内部統制が徹底されている場合でも予期せぬリスクが潜むことがあります。例えば、「承認フローの曖昧さ」や「手続きの属人化」が挙げられます。承認の責任範囲が明確でない場合、不正やミスが検知されにくくなる可能性があります。また、特定の担当者しか分からない業務プロセスは、突発的な人員欠如によって業務が停滞するリスクを抱えています。これらのリスクを精査・改善するために、監査法人がウォークスルーを推奨しているのです。

内部統制が不十分な業務フローの兆候

 内部統制が不十分な業務フローには、いくつかの特徴的な兆候があります。例えば、「取引の記録や文書が一貫性を欠いている」、「プロセス間の連携が不十分でエラーが頻発する」、「特定のコントロールポイントで証憑書類が不足している」などです。これらの兆候が放置されると、財務報告の信頼性を損なうリスクが高まります。ウォークスルーの実施を通じて、これらの兆候を特定し、強化すべき内部統制項目を洗い出すことが可能です。

盲点を見つけるための具体的な手法

 ウォークスルーを効果的に活用するためには、業務プロセスの盲点を発見する具体的な手法を活用することが重要です。まず、「業務記述書」や「フローチャート」を基にプロセス全体を視覚化し、流れの中でリスクが潜む箇所を洗い出します。次に、「リスク・コントロール・マトリックス (RCM)」を用いて、リスクと対応する内部統制の整備状況を体系的に評価します。また、実際に取引のサンプルを追跡調査し、不備が生じるポイントでの証憑書類や記録を確認することで、業務フローの矛盾や欠陥を明らかにすることができます。

発見した問題の改善事例

 ウォークスルーの結果、業務プロセスの中で発見された問題を改善した具体的な事例をいくつか挙げます。一例として、承認フローを再構築し、承認者を明確化することで、不正やミスを防止した企業があります。また、属人化していた業務を標準化し、マニュアル作成や定期的なトレーニングを実施したことで、業務継続性の向上を実現した事例もあります。さらに、重要な証憑書類が欠落している課題に対しては、文書管理システムを導入し、証憑の管理と追跡可能性を確保する取り組みが成功した例もあります。このように、発見された課題に適切に対処することで、業務プロセス全体の効率性と信頼性の向上が図れます。

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ウォークスルー結果の活用と業務改善の進め方

ウォークスルー結果の報告と分析

 ウォークスルーの結果は、業務プロセスの整備や内部統制における課題を明確にするための重要な情報源です。この結果を報告書にまとめる際には、業務プロセスの詳細、発見されたリスクポイント、そしてそれに対応するコントロールの有効性の評価を具体的に記載することが重要です。監査法人との情報共有を意識しつつ、成果物を分かりやすく整理することで、関係者全体の理解と対応力を高めることができます。また、報告された内容を基に、リスクの発生要因や業務フローの不備を分析することで、企業全体の内部統制環境のさらなる強化が期待されます。

発見事項に基づく優先改善項目の特定

 ウォークスルーを通じて明らかになったリスクや業務プロセスの課題に対して、優先改善項目を特定することが次のステップです。リスクの重大性や緊急性を基準に改善対応の優先順位を設定することで、限られたリソースを最適に活用できます。特に、財務報告に直接影響するリスクや、監査法人が強く指摘する領域は優先的に対応するべきです。また、改善項目の具体性を重視し、担当者の役割や実施期限を明確化することで、スムーズな改善プロセスを進めることができます。

業務プロセスの再設計と導入方法

 発見された課題をもとに、業務プロセス全体を再設計する手段を検討します。この段階では、効率性と内部統制の両立を意識することが重要です。たとえば、リスクポイントをカバーする新たなコントロールを導入するだけでなく、既存の業務手順を簡素化することでコスト削減や作業効率化も図ることができます。さらに、新しいプロセスの導入時には、従業員への適切なトレーニングや、試験運用(パイロットテスト)を実施することで、スムーズな定着を促進します。

継続的改善のためのモニタリング手法

 ウォークスルーの結果を活用し、その後の業務プロセスが適正に運用され続けているかをモニタリングすることも欠かせません。具体的には、リスク・コントロール・マトリックス(RCM)を活用してコントロールの有効性を定期的に評価したり、重要業務のKPIや監査指標を設定して継続的な監視を行う手法が有効です。また、監査法人との定期的な協議を通じて、外部の視点から改善のためのフィードバックを得ることも重要です。このように継続的なモニタリングを実施することで、業務プロセスの盲点を再度見逃すことなく、内部統制の成熟度を段階的に高めることができます。

この記事を書いた人

コトラ(広報チーム)