四大監査法人の意外な公認会計士の人数分布

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四大監査法人の規模と特徴

四大監査法人の現状:名称と規模

 四大監査法人、いわゆる「BIG4」は、日本における監査法人業界の中核を担う存在です。それぞれがグローバルに展開する監査・会計サービスの提供を行っており、有名企業や上場企業の監査を受託しています。四大監査法人には、有限責任あずさ監査法人(KPMG)、EY新日本有限責任監査法人、有限責任監査法人トーマツ(Deloitte)、そしてPwCあらた有限責任監査法人があります。

 2021年のデータによれば、各法人の所属人数は次のように分布しています。有限責任あずさ監査法人が6,173人、EY新日本監査法人が5,686人、有限責任監査法人トーマツが7,005人、PwCあらた監査法人が3,008人という結果となっています。特に公認会計士および試験合格者数では、トーマツが4,369人でトップとなり、あずさ、EY新日本がこれに続いています。このように、四大監査法人は、いずれも数千人規模の従業員を抱える巨大な組織となっています。

公認会計士の人数分布について

 日本国内の公認会計士は2023年時点で約34,436人が登録されており、その中で監査法人に所属している公認会計士は約13,980人とされています。これは全体の約4割を占める割合であり、依然として監査法人は多くの公認会計士にとって主要な職場となっています。しかし、この割合は過去と比較して低下傾向にあり、最近では公認会計士が監査法人以外のキャリアを選択する事例も増えてきています。

 また、四大監査法人に所属する公認会計士は圧倒的な人数を誇り、全体の大半を占めています。この集中現象は、日本の監査業界の特性を如実に示しています。一方で、中小規模の監査法人に所属している公認会計士も少なくはなく、一部の専門性の高い領域では中小法人が重要な役割を果たしています。

四大監査法人への集中の背景

 四大監査法人への公認会計士の集中には、いくつかの要因が挙げられます。まず、四大監査法人はクライアント基盤が幅広く、上場企業を中心とした大規模な監査業務を多数受託しています。そのため、豊富な業務経験を積むことができ、公認会計士としてのキャリア形成に有利な環境といえるでしょう。

 さらに、組織の規模やリソースの豊富さも大きな魅力の一つです。四大監査法人では高度な研修プログラムやAIを活用した監査ツールが導入され、効率的かつ専門的な業務を経験することが可能です。このような環境は、監査法人へ就職を希望する公認会計士にとって非常に魅力的といえます。

中小監査法人との違いは?

 一方で、中小監査法人も日本の会計監査市場で重要な役割を果たしています。中小監査法人は、地域密着型で業務を行うケースが多く、中堅・中小企業や地元企業を中心に監査業務を提供することが特徴です。組織規模は大手と比べて小さいものの、特定の領域やクライアントに対して専門性の高いサービスを提供することが強みです。

 しかしながら、四大監査法人と比較すると、業務範囲の広さやリソースの面で限界がある場合が多いです。また、四大監査法人ほどの豊富なキャリア形成の機会や最新技術へのアクセスが限られていることもあります。そのため、公認会計士のキャリア選択として、中小監査法人では経験の幅が限られることが課題とされています。それでも、クライアントとの密接な関わりやより少人数での柔軟な業務体制を求める人には中小監査法人も魅力的な選択肢となるでしょう。

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地域別に見る公認会計士の分布

首都圏集中型の現実

 公認会計士の人数分布を見ると、首都圏への集中が際立っています。特に東京には四大監査法人の主要拠点が集まることから、多くの公認会計士が首都圏に所属しています。2023年時点で、全国のおよそ13,980人が監査法人に所属していますが、その多くは東京圏に集中しているのが現実です。この首都圏集中は、大都市に多くの上場企業が所在するため、監査や財務報告といった業務ニーズが高いことが背景にあります。また、大規模な監査を担当できる人員やリソースが必要なことから、四大監査法人が首都圏を拠点として強い影響力を持つ形となっています。

地方都市の公認会計士の人数規模

 一方で、地方都市における公認会計士の人数は首都圏に比べると大幅に少ないのが現状です。地方都市にも中小の監査法人がありますが、人数規模は数十人から数百人程度に留まることがほとんどです。例えば、名古屋や大阪といった地方の中心都市には一定数の公認会計士が属していますが、その多くが監査法人よりも個人事務所や税務、コンサルティング業務を行っている場合が多いです。また、四大監査法人の地方支店もあるものの、それらの役割は比較的限定的で、依然として大多数の業務が本社主導で実施される傾向にあります。

都市部以外における需要と課題

 地方や都市部以外での公認会計士の需要は確実に存在します。しかし、課題もまた少なくありません。特に地方企業においては、監査法人が提供する専門的なサービスへのアクセスが難しいケースが多く見られます。また、都市部以外では公認会計士の人数が限られるため、需要に対して人手が足りていない状況も頻繁に発生しています。こうした課題は、地方創生や地域企業の成長を支える上で重要な課題と言えます。今後、公認会計士の活動が地方にも拡大することが期待されるものの、監査法人所属の公認会計士が首都圏に集中している現状を考慮すると、地方での新しい働き方や柔軟なリソース配分が求められます。

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公認会計士市場の課題とは?

監査法人以外の選択肢の増加

 近年、公認会計士にとってのキャリア選択肢が増加しており、監査法人以外で活躍する公認会計士が増えつつあります。例えば、コンサルティングファーム、一般企業の経理および財務部門、さらにはベンチャー企業でのCFOや役員職など、多岐にわたる環境でそのスキルを活かすことが可能です。この背景には、企業の財務戦略に対するニーズの高まりや、経済の多様化が影響しています。

 監査法人に所属する公認会計士は現在約13,980人とされていますが、その割合は登録者全体のおよそ4割に留まっています。多様なキャリアパスを選ぶ公認会計士が増えている理由として、働き方の柔軟性を求める声や、監査業務以外の分野での成長志向が挙げられます。また、AIなどの技術革新も業務の効率化を進める中で、伝統的な監査業務以外のスキルが重視される傾向が高まっています。

監査法人離れの理由

 公認会計士が監査法人を離れる現象もまた、公認会計士市場の課題と言えます。その主な理由の一つは、業務量の偏りと負担感です。特に四大監査法人のような大規模な法人では、大量の会計監査業務に追われる環境が、公認会計士にとってストレスの要因となることがあります。

 また、近年では、働き方の多様化が進む一方で、監査法人内での昇進やキャリアの選択肢に限界を感じる公認会計士も増えています。これに加え、監査業務そのものの魅力を感じづらい若手会計士もおり、よりクリエイティブで自由な働き方を求めて中小企業やベンチャー企業、さらには海外市場への転職を選ぶ例も増えています。

 さらに、監査法人には慢性的な人手不足の問題があります。その理由の一つに、監査法人自体が高度な専門スキルを持つ人材を継続的に確保するのが難しいことが挙げられます。公認会計士試験の合格者数は年々増加していますが、それでも監査法人への応募人数が十分とは言えない状況です。

求められる役割と実態のギャップ

 監査法人や公認会計士に期待される役割と、実際の業務の間には、しばしばギャップが存在しています。公認会計士は、社会全体の会計情報の信頼性を支える重要な存在として期待されていますが、現場ではクライアントとの協議や書類作成に多くの時間が割かれることがあります。これにより、本来の価値である専門知識を活かしたコンサルティングや戦略提案の時間が限られていると感じるケースも少なくありません。

 さらに、監査法人にとどまらず、企業に移った後でも、会計士としての知識と職場での役割との間にもズレを感じることがあります。特に、地方や中小企業で働く場合では、財務管理や経営改善の支援業務に重きを置く一方で、会計士としての専門性が十分に活用されないという声も聞かれます。このギャップには、企業や地域ごとの異なる課題や年々進化する業務内容が背景にあると言えるでしょう。

 こうした課題を克服するためには、監査法人や業界全体において、公認会計士がよりそのスキルを十分に発揮できる環境を提供し、業務の範囲や働き方を柔軟に見直していく必要があります。

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今後の監査法人と公認会計士業界の展望

公認会計士の進路の多様化

 近年、公認会計士の進路は多様化しています。伝統的に監査法人でのキャリアが主流でしたが、現在では事業会社への転職や独立開業といった選択肢が増加しています。この背景には、公認会計士試験の合格者数の増加や、コンサルティングファームや金融機関といった他業界からの求人数の増加があります。また、企業内で財務戦略に携わるポジションや、M&A業務を担うプロフェッショナルとしての需要も高まっています。公認会計士の専門性が監査法人に限らず、幅広い分野で貢献できることが、進路の多様化を促している要因と言えるでしょう。

監査業界の未来予測

 監査業界では、今後も公認会計士に対する需要が高いと予想されています。特に、ESG監査やAIを活用した監査業務の導入が進む中で、新たなスキルが求められる時代に突入しています。また、データの複雑化により、財務や非財務情報の監査の重要性がますます高まると考えられます。一方で、公認会計士の人材不足が続く可能性も指摘されています。2023年現在、監査法人に所属する公認会計士は約14,000人とされていますが、監査法人に求められる業務範囲の拡大に対しては十分とは言えません。そのため、業界全体での効率化や働き方改革が進むことが今後の課題となるでしょう。

地方創生における公認会計士の役割

 地方創生の文脈においても、公認会計士の役割は重要です。現在、公認会計士の多くが首都圏を中心とした都市部に集中しており、地方での人員不足が深刻な課題とされています。しかし、地方には中小企業や自治体、さらには医療法人や非営利組織など、公認会計士の専門知識を必要とする多くの現場が存在します。今後、地方での公認会計士の活躍が期待される分野として、経営支援や補助金申請のサポート、地方企業の財務健全化が挙げられます。また、オンラインツールやテクノロジーの活用により、距離の壁を超えて地方での監査業務やコンサルティングが可能になるとされています。地方創生の推進において、公認会計士が果たすべき役割はますます大きくなるでしょう。

この記事を書いた人

コトラ(広報チーム)