監査法人の選び方ガイド:規模・特徴・働きやすさを考える

heart - 監査法人の選び方ガイド:規模・特徴・働きやすさを考えるloading - 監査法人の選び方ガイド:規模・特徴・働きやすさを考えるお気に入りに追加

監査法人とは?基本情報を押さえよう

監査法人の定義とその役割

 監査法人とは、公認会計士法に基づいて設立された法人であり、公認会計士が集団で業務を行う組織形態です。その主な役割は、企業の財務諸表が正確であることを第三者の立場から保証する「会計監査」にあります。また、会計監査は公認会計士にのみ許可されている専門業務であり、監査法人はその担い手として社会的に非常に重要な存在です。

 加えて、監査法人は会計監査にとどまらず、業務内容として内部統制の評価や税務コンサルティング、さらには新たに注目されているサステナビリティ関連の報告書の保証業務なども手がけています。監査法人が提供するこれらのサービスは、企業の透明性や信頼性を向上させ、経済全体の安定に寄与しています。

監査法人の規模別分類(大手/中小/地域密着型)

 監査法人は、その規模によって大手、中小、地域密着型に分類されます。大手監査法人では、所属する公認会計士や職員の数が数千人規模に達し、特に「四大監査法人(BIG4)」は圧倒的な規模を誇ります。これらは日本国内だけでなく、海外にも拠点を持ち、グローバルなクライアントを対象とした監査やコンサルティングを行っています。

 一方、中小規模の監査法人は、数十人から数百人ほどの構成員で運営されており、クライアントの規模や業種も多岐にわたります。また、地域密着型の監査法人は、特定の地域で展開し、その地域に根ざした企業支援を特色としています。中小や地域密着型法人では、大手と比べて柔軟な組織運営が可能であり、個別のニーズに応えるきめ細やかなサービスが強みとされています。

公認会計士が所属する監査法人の現状

 日本の公認会計士の約70%が監査法人に所属しており、その多くが四大監査法人に集中しています。2023年現在、四大監査法人には約21,500人の公認会計士が所属しており、日本の全公認会計士の半数以上を占めています。一方で、中小規模の監査法人には相対的に少数の公認会計士が所属しており、それぞれの規模や役割に応じた活動を展開しています。

 公認会計士の総登録者数は2023年時点で約40,000人に達しており、近年は特に会計監査以外の分野でも需要が高まっています。そのため、監査法人の枠を超えた多様なキャリアパスを選ぶケースも増加しています。

監査法人と他の会計事務所の違い

 監査法人と他の会計事務所は、その業務範囲や役割において大きく異なります。監査法人は法定監査を行うことが主な役割であり、高度な専門性が求められる一方、他の会計事務所(税理士事務所やコンサルティング会社など)は税務申告や中小企業向けの経営支援を主としています。

 また、監査法人の業務は公認会計士が主導するのに対し、他の会計事務所では税理士や経営コンサルタントが中心的な役割を果たします。そのため、監査法人では公認会計士資格が必須となるケースが多く、業務内容や求められるスキルセットにも違いがあります。

監査法人の重要性と社会的な影響

 監査法人は企業の財務情報の信頼性を担保することで、投資家や取引先などの利害関係者に対して重要な情報を提供しています。このように企業活動の透明性を確保する役割を果たしているため、経済全体の健全性や信頼性に直接影響を及ぼす存在です。

 さらに、監査法人は企業のガバナンス強化を支援する役割も担っています。特に現代では、サステナビリティやESG(環境・社会・ガバナンス)が重視される傾向にあり、監査法人の専門性がこれらの分野にも広がっています。その結果、監査法人は社会的必要性とともに影響力がますます高まっているといえます。

転職のご相談(無料)はこちら>

大手監査法人の特徴と強みを知る

四大監査法人(BIG4)の概要

 四大監査法人(BIG4)は、大手監査法人として世界的に認知されており、日本国内でも圧倒的な規模と影響力を持っています。具体的には、有限責任監査法人トーマツ(Deloitte)、有限責任あずさ監査法人(KPMG)、EY新日本有限責任監査法人(EY)、PwCあらた有限責任監査法人(PwC)で構成されています。これらの監査法人は、所属している公認会計士や合格者の人数、売上高、提供するサービスの範囲の広さからトップクラスの地位を誇っています。

業績や規模感から見る大手監査法人

 四大監査法人は、その規模感と業績面で他の監査法人を大きく上回っています。2021年のデータによると、たとえば有限責任監査法人トーマツでは総人数が約7,000人に達し、そのうち公認会計士や合格者数は約4,300人でした。このような大人数を背景に、多様なクライアントに質の高いサービスを提供することが可能です。また、監査法人全体の所属人数の約50%が四大監査法人に所属しており、業界をリードする存在であることが明らかです。

専門性の高さとキャリア形成の魅力

 四大監査法人では、規模の大きさを活かした多様な業務経験や専門知識の習得が魅力となっています。複雑な経営環境にある大企業やグローバル企業をクライアントとするため、会計監査だけでなく、リスクマネジメントや税務コンサルティング、サステナビリティ関連の業務など幅広い分野で専門性を高めることができます。また、海外拠点での経験を積むことも可能であり、キャリア形成の面で大きなメリットがあります。

大手監査法人ではたらくメリットとデメリット

 大手監査法人で働くメリットは、何よりも業務経験の幅広さやブランド力によるキャリアアップのしやすさです。四大監査法人の名前は、転職市場や海外での活動でも大きな武器となります。ただし、一方で労働時間が長くなる傾向があり、忙しさに耐える必要があるのも事実です。また、巨大な組織であるために個人の裁量が制限される場合もあります。これらのポイントを考慮し、自身に合った職場環境かどうかを見極めることが重要です。

海外展開している監査法人の特徴

 四大監査法人はグローバル規模での展開を行っており、国際的なネットワークを活用して多国籍企業へのサービスを提供する点が特徴です。日本の拠点においても、海外チームと連携する場面が多く、国際会計基準(IFRS)やグローバル監査手法について学ぶ機会が広がっています。また、海外派遣や現地法人への転籍など、国際的なキャリアを目指す公認会計士にとって魅力的な選択肢となることが多いです。

転職のご相談(無料)はこちら>

中小監査法人の柔軟性と働きやすさ

中小監査法人の特徴と規模感

 中小監査法人は、従業員数が数十名から数百名規模と、大手監査法人よりも比較的小規模な組織です。日本にはこのような中小規模の監査法人が多数存在しており、それぞれが地域や業界特性を反映したサービスを提供しています。公認会計士が働く環境として、きめ細かいサポート体制やアットホームな職場雰囲気が特徴とされており、特定の分野で専門性を深めたい方に適している場合があります。

中小規模ならではの業務範囲の特徴

 中小監査法人では、クライアント企業の規模や数の関係で、業務範囲が多岐にわたることが一般的です。会計監査に加えて、税務コンサルティングや内部統制支援、経営アドバイザリーサービスを手がけるケースも多く見られます。このため、幅広い業務経験を積みやすい環境が整っている点が特徴です。一方で、一人ひとりの会計士が担う責任範囲が広がるため、マネジメント能力やクライアントとのコミュニケーション能力も重要となります。

働きやすさ・福利厚生の視点から見る中小監査法人

 中小監査法人では、個々の社員に対する柔軟性のある働き方が比較的容易に実現されているケースが多いです。例えば、ワークライフバランスを重視した働き方を推進している法人もあります。また、福利厚生面でも、育児休暇やテレワーク制度の導入など、社員一人ひとりのライフステージに寄り添った取り組みを導入している法人が増えています。その一方で、大手に比べて予算制約があるため、施設や研修機会の充実度に違いが見られる場合もあります。

地域密着型監査法人の実態

 地域密着型の監査法人は、地元の中小企業や地方自治体を中心にサービスを提供することに特化しています。そのため、監査業務以外にも、地元企業の経営支援や経理相談、内部統制の改善といった幅広い役割を果たしているケースが多いです。このような法人では、地方特有の業界知識や法規制の専門知識が求められることもあります。また、地域に根ざした活動のため、社員の地元愛や地域社会とのつながりが重視される傾向があります。

キャリアの選択肢として中小監査法人を選ぶポイント

 中小監査法人をキャリアの選択肢に入れる場合のポイントとして、規模が小さい分、若手でも責任あるポジションを任され、自分の意見が反映されやすい環境が挙げられます。また、人数が少ないため、社員同士のコミュニケーションも取りやすく、チームでの協力関係を築きやすいです。さらに、特定分野での専門性を極めたい方や、地方での就業を希望する方にとっても魅力的な職場となるでしょう。一方で、大規模クライアントに携わる機会が限定される場合があるため、自身のキャリアビジョンに適うかどうかを慎重に検討することが必要です。

転職のご相談(無料)はこちら>

監査法人を選ぶ際のポイントと注意点

キャリアパスと専門性の観点で考える

 監査法人を選ぶ際には、まずキャリアパスや専門性の側面を重視することが重要です。大手監査法人では、多様なクライアントに触れることができるため、高度な専門性を身につける機会が豊富にあります。特に、IPOやM&Aといった専門領域を経験することで、スキルを磨き長期的なキャリア形成に有利に働きます。一方で、中小監査法人では、幅広い業務経験を積むことが可能なため、より実務的な能力を習得することができます。自分の将来像を明確にしたうえで、どの法人がその目標に適しているかを考えることが重要です。

勤務環境と働きやすさを比較する

 働きやすさは監査法人選びにおいて重要なポイントです。大手監査法人は、規模が大きいため福利厚生が整備されている傾向がありますが、繁忙期には業務負荷が高くなることがあります。一方で、中小監査法人や地域密着型の監査法人は、規模が小さい分、柔軟な働き方が可能な場合もあり、ワークライフバランスを重視したい人に向いています。それぞれの法人で働く環境や制度を事前に比較し、自分のライフスタイルや価値観に合った選択をすることが大切です。

クライアント規模・業種の多様性を考慮する

 どの規模の監査法人を選ぶかは、担当するクライアントの規模や業種の多様性を考慮することも重要です。たとえば、四大監査法人(BIG4)などの大手では、国内外の大規模企業や上場企業を多く担当し、グローバルな経験を積む機会があります。一方で、中小監査法人や地域密着型の法人では、中小企業や非上場企業を中心に担当するため、地域経済の実態や特定業種の深い知識を得ることが可能です。自身の興味のある業界や規模に応じて選択すると良いでしょう。

法人文化や価値観の適合性を確認する

 選択する監査法人が自分の価値観や働き方に合った文化を持っているかどうかも、大事な要素です。法人ごとに存在する独特の風土や働き方のスタイルは、長期的な働きやすさに大きな影響を与えます。大手は特に組織が大規模なため、チームごとに雰囲気が異なる場合もありますが、全体的にはグローバル志向で先進的な環境が多い傾向にあります。中小法人は経営層と近い距離で働けるため、フラットな職場環境を好む人に合いやすいでしょう。面接や見学を通して法人の文化を感じ取り、価値観の適合性を見極めることが重要です。

複数の選択肢を比較する際の注意点

 監査法人を選ぶ際には、複数の候補を比較検討することが望ましいですが、比較基準を明確にすることも重要です。給与や福利厚生、業務内容、働く地域に加えて、将来的なキャリアパスについても考えるべきです。また、各法人で働く公認会計士の人数や、法人の規模感も参考にすることで、自分がどのような環境で働くか具体的なイメージを持つことができます。また、口コミや評判を過信するのではなく、公式ウェブサイトや直接の説明会を通じて正確な情報収集を行い、自分の目で確かめることも重要です。

この記事を書いた人

コトラ(広報チーム)