監査法人を卒業した後の選択—次のキャリアを描くヒント

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第1章:監査法人から踏み出す理由

監査法人を卒業する背景と動機

 監査法人を卒業する背景は人それぞれですが、共通して見られる動機として、「昇進やキャリアアップの見通しが立たない」「社内の雰囲気が自分に合わない」「より高い年収を得たい」といった理由が挙げられます。また、自分のスキルをもっと発揮したい、違う業界に挑戦したいという意欲も多くの会計士に見られる動機です。

 近年、組織内会計士の数は増加しており、監査法人での経験を活かして企業内で活躍したいと考える人が増えていることも特徴的です。監査法人での業務は専門性が高く、それを発揮できるフィールドを求めて卒業するケースが多いのです。

公認会計士として転職市場での価値

 公認会計士の資格や経験は、転職市場で非常に高い評価を受けています。監査法人での会計税務の知識、監査の経験は、企業の経理・財務部門やコンサルティング会社などで強い武器となります。また、近年は内部監査や経営企画など、専門的なスキルを求める企業が増えています。

 監査法人出身者にとって魅力的な転職先は多く、経理ポジションやコンサルティング、さらにはベンチャー企業のCFOや金融機関といった幅広い選択肢があります。その価値を最大限に活かすためには、自分のキャリアビジョンを明確にすることが必要です。

転職先を選ぶ際の重要なポイント

 転職先を選ぶ際には、いくつかの重要なポイントを押さえておくと成功率が高まります。まずは、自分が今後目指すキャリアパスを明確にし、転職先がそれに適しているかを確認することです。例えば、安定とワークライフバランスを重視する場合は、経理や中小監査法人が選択肢となります。一方で、やりがいや収入の向上を重視する場合は、FASコンサルやベンチャー企業のCFOといった選択肢が考えられます。

 また、雇用条件や職場環境も十分に検討しましょう。具体的には、年収や昇進の可能性、職場のカルチャーなどを確認することが大切です。転職エージェントを活用し、現場のリアルな情報を収集することも効果的です。

監査法人で積んだ経験の活かし方

 監査法人での経験は、転職後のキャリアでも様々な形で活かすことができます。監査業務で培った会計・税務の深い知識はもちろん、クライアントとのコミュニケーションスキルやプロジェクト管理能力も重要な強みです。

 例えば、経理や財務ポジションでは決算業務や予実管理において大きな力を発揮できますし、コンサルティング業界では課題解決能力が重宝されます。さらに、金融機関やベンチャー企業のCFOでは、これまでの経験を基に経営や投資の意思決定に関与することも可能です。

 監査法人時代に身につけたスキルをどのように次のステップで活かすかを前もって整理することが、キャリアアップを成功させるポイントとなります。

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第2章:監査法人からの主要な転職先

一般企業(経理・財務・経営企画)

 監査法人を離れた公認会計士が最も多く選択する転職先の一つが、一般企業での経理や財務、経営企画といったポジションです。経理や財務では、監査法人で培った会計知識や財務データの分析経験を活用することができます。さらに、多くの一般企業では、監査法人出身の会計士を高く評価しており、一定の年収と良好なワークライフバランス(WLB)を両立しやすい環境が整っています。

 一方で、経営企画や戦略策定に関わるポジションの場合、会計や税務の専門知識というよりも、企業の競争環境を分析したり、事業の成長に向けた戦略を立てる能力が求められます。そのため、経営視点や意思決定に必要なスキルを新たに学ぶことが重要です。一般企業への転職では、自身のキャリアプランに合わせて業種や企業規模を選ぶことが、満足度の高い転職の鍵となります。

コンサルティング会社での新たな挑戦

 監査法人での経験を活かして、コンサルティング会社への転職を目指す動きも増えています。コンサルティング会社では、企業の課題を解決するための提案や実行支援を行い、より高度な問題解決能力が求められます。特に、監査法人出身の会計士には、財務に関するコンサルティングやM&A支援、事業再生といった分野でのニーズが高いです。

 若手会計士に人気のあるFAS(ファイナンシャルアドバイザリーサービス)では、財務分析やバリュエーションといった専門スキルを活用する業務が中心です。また、戦略コンサルティング会社では、激務ではあるものの、クライアント企業の中長期的な成長を描くような戦略立案を通じて、幅広いビジネススキルを身につけることができます。コンサルティング会社への転職は、激務を覚悟しながらも、自己成長に重きを置く人に適しています。

金融機関(投資銀行や証券会社)への転職

 金融機関、特に投資銀行や証券会社も、監査法人を卒業した公認会計士にとって魅力的な転職先です。投資銀行ではM&Aアドバイザリー、資本市場の取引支援、企業価値評価など、財務に関する専門知識を最大限に活かせる業務が中心です。一方で、証券会社では金融商品の提案や分析、マーケット業務など、より金融に特化したスキルが求められます。

 金融業界は、高収入と引き換えに非常に激務である点が特徴です。特に投資銀行では、複雑な案件に対応するため、しっかりとした英語力やコミュニケーションスキルが必要になります。それでも、やりがいのある業務や大規模なプロジェクトに関与できるチャンスが多いため、自身のマーケット価値をさらに高めたい人には理想的な選択肢といえるでしょう。

ベンチャー企業やCFOとしての役割

 近年では、ベンチャー企業でCFO(最高財務責任者)としてマネジメントに関わりたいと考える公認会計士も増えています。特にスタートアップや新興企業では、資金調達や事業計画策定など、会社の成長を支える重要なポジションとしてCFOが求められます。監査法人で培った財務知識や意思決定を補佐するスキルがここで大いに活きる場面です。

 一方で、ベンチャー企業への転職は激務であることを念頭に置く必要があります。事業の成長フェーズにいる企業では、資金繰りや人材確保、プロセス構築など多岐にわたるタスクに優先して対応しなければならない状況が多々あります。ただし、高リスク・高リターンな環境であっても、ストックオプションや役員報酬などで高収益が見込める可能性があり、将来的なキャリアパスとしても魅力的な選択肢といえるでしょう。

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第3章:各キャリアパスの特徴と必要スキル

経理や財務で求められる実務経験

 経理や財務の分野は、公認会計士にとって最もオーソドックスな転職先の一つです。このキャリアでは、監査法人時代に培った会計や税務の知識を存分に活用できます。具体的には、決算業務、税務申告、資金繰り管理、予実管理といった業務が中心となります。特に連結決算や国際会計基準(IFRS)に関するスキルがある場合、多くの企業で重宝されるでしょう。

 また、経理や財務のポジションは比較的ワークライフバランスが良いため、働き方の柔軟性を重視する監査法人からの転職者にとって魅力的です。転職に際しては、業界特化型の知識や実務経験を得るため、監査法人時代に監査対象としていた業種の専門性をアピールすることが重要です。

コンサルティング業界で評価される強み

 監査法人からコンサルティング業界への転職は、公認会計士が目指すキャリアパスの中でも人気が高い選択肢の一つです。特に、財務アドバイザリー(FAS)や戦略コンサルティングの分野では会計士としての知識を活かせる場面が多いです。担当業務は事業再生、デューデリジェンス、M&Aアドバイザリーといった高付加価値の分野に集中します。

 この業界では、会計士資格以上に問題解決能力や論理的思考能力、コミュニケーション力が求められます。コンサルティング業界特有のスピード感やクライアントファーストの姿勢に適応するため、如才ない立ち回りや体力面での準備も欠かせません。監査法人での経験を活かすには、企業評価やリスク分析といったスキルを際立たせることが有効です。

金融業界への転職を成功させるには

 金融業界、特に投資銀行や証券会社は、監査法人での経験を持つ方にとって挑戦的でありながらも非常に魅力的な転職先です。この分野では、財務モデリングやバリュエーションといった専門的なスキルが必要とされます。金融業界でのキャリアを築くには、監査業務で得た分析力に加え、マーケットの動向や投資戦略についての深い知識が重要になります。

 また、英語能力はほぼ必須とされるため、国際案件への対応力やグローバルな視点を持つことが大切です。激務な環境である一方、圧倒的な成長機会や年収アップを期待できる点がこの業界の魅力です。転職を成功させるためには、個人の強みが何かを明確にし、それをいかに金融業界に応用できるかを徹底的にアピールする必要があります。

ベンチャー企業での柔軟な働き方

 急成長するベンチャー企業への転職も、公認会計士にとって刺激的な選択肢です。特にCFOとしてのポジションは、資金調達や経営戦略、財務計画の策定など、監査法人では経験できない実務に直接関わることができます。ストックオプションなどの報酬制度も含め、高収入を得られる可能性もあります。

 ただし、ベンチャー企業では即戦力が求められるケースが多いため、監査法人で培ったスキルを幅広く活かせる柔軟性が必要です。また、規模が小さい企業ほど業務範囲が広がるため、会計・財務以外の領域に対応する力も求められます。こうした特徴を理解し、自身のキャリア目標とマッチするかどうかをしっかり検討することが重要です。

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第4章:転職活動の進め方と成功例

転職市場のトレンド把握とエージェント活用

 監査法人を卒業し転職を考える際には、まず転職市場のトレンドをしっかり把握することが重要です。近年では、公認会計士が目指す転職先として、経理や財務、コンサルティング業界、金融業界、さらにはベンチャー企業まで幅広い選択肢があります。これらの職種ごとに求められるスキルや特性が異なるため、事前に業界の動向や市場ニーズをリサーチすることが求められます。

 また、転職エージェントの活用は非常に効果的です。「ハイスタ会計士」や「マイナビ会計士」など、会計士特化型のエージェントを利用することで、自分のキャリアに合った求人を見つけやすくなります。エージェントを活用する際は、自己のキャリアビジョンを明確に伝え、密にコミュニケーションを取ることが成功のカギとなります。

転職活動における履歴書と職務経歴書のポイント

 転職活動において履歴書と職務経歴書は、採用担当者への第一印象を決定づける重要なアイテムです。監査法人での経験を活かすためには、どのようなプロジェクトに関わり、どのような成果を上げたのかを具体的かつ簡潔に記載することがポイントです。特に、監査法人の業務の中で培った問題解決能力やクライアント対応力など、転職先で評価されるスキルを強調しましょう。

 また、自分が転職先企業にどのような価値を提供できるのかを明確に伝えることが重要です。例えば、経理や財務への転職を目指す場合は、会計基準の変更や決算業務への対応経験などを具体的に記載することで、即戦力としてのアピールが可能です。

成功したケーススタディを参考にする

 転職活動の成功率を上げるためには、実際に成功した事例を参考にすることも効果的です。例えば、監査法人からベンチャー企業のCFOに転職し、企業の資金調達や組織体制の構築を主導したケースでは、監査業務で得た分析力やプロジェクト管理能力が活かされています。

 さらに、内部監査部門での経験を活かして外資系金融機関に転職した事例もあります。このような成功例をもとに、自分のスキルセットと希望するキャリアの共通点を見つけることが大切です。転職エージェントやオンラインコミュニティなどを通じて、最新のケーススタディを収集することをお勧めします。

失敗を防ぐための注意点

 転職活動で失敗を防ぐには、いくつかの注意点があります。まず、転職を急ぎすぎることで、自分に合わない企業を選んでしまうリスクがあるため、事前準備に十分な時間をかけることが重要です。また、職務経歴書での情報不足や、過去の経験を適切にアピールできないこともよくある失敗の原因です。

 さらに、希望条件に過度にこだわりすぎると、選択肢を狭めてしまうことがあります。例えば、高年収だけを基準に選ぶと、企業文化や仕事内容が自分に合わず、不満を感じる可能性が高くなります。自分の価値観やライフスタイルも考慮し、総合的に判断することを心がけましょう。

 最後に、転職後のミスマッチを防ぐためにも、面接では転職先の仕事内容や会社のビジョンについて具体的に尋ねることが大切です。情報収集を怠らず、納得したうえで決断することが成功する転職活動に繋がります。

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第5章:キャリアチェンジ後の生活と成長

新しい環境での第一歩

 監査法人を卒業し、新しい職場へと踏み出す際には、最初の数か月が特に重要です。転職先の職場文化や業務フローを理解し、適応することが求められます。監査法人で培ったスキルや知識は通用することが多いものの、職場ごとに独自のルールや慣習があるため、柔軟に対応する姿勢が鍵となります。特に、経理や財務、コンサルティング業界など、「監査法人から転職先」として選ばれる主要な職種では、迅速な適応力が評価される傾向にあります。このような経験を通じて、初期段階で信頼を築ければ、キャリアの成長が期待できるでしょう。

監査法人での経験を活かした成長

 監査法人で得た経験は、転職先でも大きな武器となります。財務諸表監査や内部統制評価で培った分析力や業務の効率化スキルは、経理・財務部門や経営企画でも高く評価されます。また、クライアントへの対応を通じて身につけたコミュニケーション能力は、コンサルティング会社やベンチャー企業のCFOとして、新しい環境での課題解決に役立てられるでしょう。さらに、監査法人で働く中で培われた高い倫理観やプレッシャーへの耐性も新しいキャリアで成長を支える重要な要素となります。

ワークライフバランスの変化

 監査法人での働き方は繁忙期が激務になるケースが多く、ワークライフバランスが崩れがちになることが問題視されています。しかし、その経験を経て転職することで、働き方が大きく改善されることがあります。たとえば、経理や中小監査法人を転職先に選ぶことによって、比較的安定したスケジュールの中で仕事ができる傾向があります。一方で、ベンチャー企業や投資銀行といった挑戦的な環境を選ぶ場合は、再び長時間労働が求められることもあります。そのため、ワークライフバランスをどのように考えるかは、転職先選びにおいて重要な判断軸となります。

キャリアをさらに広げるための自己研鑽

 転職後も、さらにキャリアを広げるためには、継続的な自己研鑽が不可欠です。たとえば、新しい職場で求められる分野に合わせて資格取得やスキルアップを進めることは有効です。経理や財務部門であればデジタルツールの活用や管理会計の知識を深め、コンサルティング業界やベンチャー企業であれば、ファシリテーションスキルやリーダーシップ能力を高めるといった努力が有用です。また、ネットワーキングも重要な要素であり、同業者や異業種の専門家と積極的に連携することで、新たな機会を掴むことができるでしょう。このような取り組みを継続することで、転職後の環境においても安定した成長を遂げることができます。

この記事を書いた人

コトラ(広報チーム)