「tsuzumi」とは?NTT独自開発の“大規模言語モデル”を徹底解剖

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1. tsuzumiとは何か?その概要と背景

tsuzumiの開発の経緯

 「tsuzumi」は、日本電信電話株式会社(NTT)が2024年3月25日に発表した独自開発の大規模言語モデル(LLM)です。この開発の背景には、AI技術が急速に進化する中で、日本語を中心とした高度な自然言語処理の需要が高まり、地域に特化した言語処理技術を商用化する必要性がありました。「tsuzumi」は、約40年にわたり蓄積されたNTTの自然言語処理技術を基盤とし、これに最先端のAI技術を融合させることで誕生しました。このように、日本国内での実環境での課題を深く理解したモデル構築が開発の大きな特徴となっています。

NTT独自の技術基盤とは

 「tsuzumi」の背後には、NTTが長年培ってきた自然言語処理技術が存在します。この技術基盤の強みは、特に日本語に特化した処理性能にあります。日本語特有の文法構造やニュアンスを正確に理解し、応答生成や情報要約などの高度なタスクを実現できます。また、NTTは軽量化されたモデルアーキテクチャを採用しており、少ないリソースで高精度な応答が可能です。この点は、グローバルなLLMとの差別化ポイントでもあり、高い計算効率性と低コストを実現しています。

他のLLMとの違い

 「tsuzumi」は、他のLLMと比較して几帳面に設計された日本語対応モデルである点において独自性があります。特に、軽量性が大きな利点となっており、学習コストをGPT-3対比で軽量版で25分の1、超軽量版では300分の1まで削減可能とされています。また、推論コストも非常に低く抑えられており、サーバーコストの最適化が可能です。さらに、「tsuzumi」は、高度なセキュリティが求められる環境でも動作可能となっており、医療や自治体業務などの特定分野での利用が進んでいます。他の汎用LLMが持つ巨大なモデル規模を抑えつつ、実用性を重視した設計が特徴です。

tsuzumiの名称に込められた意味

 「tsuzumi」という名称には、日本の伝統文化を象徴する「鼓」(つづみ)が由来として込められています。鼓は、対話やリズムを奏でる道具として、日本文化において重要な役割を果たしてきた楽器です。この名称には、「人とAIの対話が豊かにリズムを刻んでいく未来を創造する」という願いが込められています。また、日本発の技術として国内外で価値ある存在となることを意識し、名称に日本の文化的背景を反映させています。「鼓」と同様に、コンパクトでありながら大きな影響力を備えたモデルを目指して「tsuzumi」という名が付けられました。

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2. tsuzumiの具体的な特徴と技術的進化

高度な日本語処理能力の強み

 NTT版LLM「tsuzumi」は、特に日本語処理において世界トップレベルの性能を誇ります。約40年にわたる自然言語処理技術の蓄積を基盤に開発されており、日本語特有の表現や文脈把握の精度が非常に高い点が大きな特徴です。多様な日本語表現や言い回しに対応できるため、顧客サービスや教育など、幅広い分野で実用的な応用が期待されています。また、英語にも対応しており、グローバルな展開にもポテンシャルを持っています。

小型軽量モデルとしての利点

 tsuzumiは、モデルの軽量化を徹底追求しています。軽量版では学習コストがGPT-3と比較して25分の1、超軽量版では300分の1にまで低減されています。さらに、推論コストも軽量版で20分の1、超軽量版では70分の1と、利用環境に合わせた効率的な運用が可能となっています。このような小型軽量化により、企業や自治体などがコストを抑えて導入できる点は、大きな利点として評価されています。

柔軟なカスタマイズ性

 tsuzumiは、その柔軟なカスタマイズ性も注目ポイントの一つです。少ないリソースでのチューニングが可能であり、個別の業務要件や特定の分野に特化した活用が容易です。例えば、企業独自のデータを用いたファインチューニングを行うことで、目的に合った高精度なアウトプットを実現可能です。また、NTTはAzure AI Studio上でのファインチューニングやビジネスアプリケーション開発もサポートしており、さまざまな業界での適応性をさらに広げています。

tsuzumiが目指す社会実装の方向性

 tsuzumiは、単なる技術提供に留まらず、社会実装を通じて実質的な課題解決を目指しています。医療DXやコンタクトセンターの効率化、行政業務のIT化など、さまざまな分野での導入が進められています。また、NTTグループ全体が連携してtsuzumiの普及を強化しており、多くの企業や自治体がその可能性に期待を寄せています。さらに、セキュリティの高い環境でも動作可能であることから、データ保護の必要性が高い分野への応用も増加しています。

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3. tsuzumiの活用事例と展開

業界で進む導入事例

 NTTが開発した大規模言語モデル「tsuzumi」は、多様な業界での導入が進んでいます。その特長である高精度な日本語処理能力とコスト効率の高さにより、製造業や流通業、さらには金融業界などの分野で活用が広がっています。具体的には、製造業での生産工程の最適化や、流通業での顧客問い合わせへの対応強化、金融業界でのリスク分析支援に役立てられています。NTT LLM「tsuzumi」は、特定業界ごとのニーズに応じた柔軟なカスタマイズが可能であり、その適応性の高さが他のLLMとの差別化要因となっています。

医療分野でのDX推進事例

 医療分野でも「tsuzumi」は重要な役割を果たし始めています。例えば、NTT西日本と三重大学が連携し、医療DX推進に向けた電子カルテ要約の実証実験が行われました。これにより、医師や医療スタッフの業務負担を軽減し、より多くの時間を患者ケアに充てられるようになります。また、「tsuzumi」はセキュリティの高い環境下で動作可能であるため、医療データの安全管理を維持しながら効率的なDX推進を実現できる点でも注目されています。

企業DX支援における活用シナリオ

 企業DX支援において、NTT版LLM「tsuzumi」は、顧客体験(CX)や従業員体験(EX)の向上、さらにはIT運用サポートの分野で活用が進んでいます。例えば、顧客サービス部門では、「tsuzumi」を導入することで、自然言語による問い合わせ対応を効率化し、顧客満足度の向上を図っています。また、IT運用では、障害発生時の迅速な原因分析や予防策の提案に役立てられています。このようなシナリオを通じて、企業全体の業務効率化とデジタルトランスフォーメーションを推進しています。

自治体業務の効率化への応用

 自治体業務の効率化にも「tsuzumi」は大きな貢献をしています。地域住民からの問い合わせへの対応や、多岐にわたる行政書類の作成支援などの分野で、その優れた日本語処理能力が活用されています。具体例としては、自治体の窓口業務でのAIチャットボット導入や、会議議事録の自動要約ツールとしての利用が進んでいます。これにより、職員の業務負担を軽減するとともに、住民サービスの向上が期待されています。NTT LLM「tsuzumi」を活用したこれらの取り組みは、地域社会のデジタル化を推進する一助となっています。

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4. tsuzumiが切り開く未来の可能性

生成AI市場へのインパクト

 NTT独自開発の大規模言語モデル(LLM)「tsuzumi」は、その高度な日本語処理能力と軽量性によって、生成AI市場に大きなインパクトを与えると期待されています。特に、学習コストや推論コストの大幅な低減が可能な点は、業界内での競争力を高める要因となっています。他のLLMと比べて圧倒的な効率性を誇るtsuzumiは、企業にとって運用面での負担を減らしながら、より精度の高いサービスを提供する支援役として注目されています。また、日本語と英語両方に対応することで、多言語にわたる展開を通じてグローバル市場にも影響を及ぼすことが見込まれています。

ビジネスと社会の未来を拓く可能性

 tsuzumiの技術は、さまざまな業界や社会課題にイノベーションをもたらす可能性を秘めています。例えば、医療分野では電子カルテの要約やリソース効率化が実現され、自治体では業務の効率化を支援します。これらは、社会全体の生産性向上や働き方改革を後押しする大きな力となります。それに加え、生成AI技術を活用した新しいビジネスモデルの創出も期待され、企業がさらなる成長を遂げる土台を築くサポート役としてtsuzumiが活躍するでしょう。

連携が生み出すエコシステム

 tsuzumiはNTTグループ各社だけでなく、さまざまな企業や機関との連携を通じて、ユニークなエコシステムを形成する可能性があります。例えば、Microsoft Azure上での従量課金サービスを活用することで、開発者や企業はより自由度の高い環境でアプリケーションの開発やファインチューニングを行うことができます。また、NTTデータが提案する「Model-as-a-Service(MaaS)プラットフォーム」による提供は、他社LLMとの差別化を図りながらパートナーシップの強化につながります。これらの連携により、顧客価値が最大化されると同時に、生成AIの普及促進が期待されています。

今後のアップデートと展望

 NTTはtsuzumiの将来的な進化に対しても力を注いでいます。マルチモーダル対応や少リソースでの高精度なチューニング、さらにセキュリティ強化などの取り組みにより、tsuzumiの使い勝手がさらに改善されていくでしょう。また、2027年度には売上目標1,000億円を掲げており、この目標達成に向けた積極的な技術開発や市場展開が期待されています。さらに、ユーザーのフィードバックを取り入れることで、より現実的な課題を解決できるアップデートが継続的に提供されていく見込みです。tsuzumiが日本発の生成AIとして、世界規模で存在感を高めていく未来が目の前に広がっています。

この記事を書いた人

コトラ(広報チーム)