キングジムが挑む!M&A戦略で未来を切り開く老舗文具メーカーの勝負

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キングジムの歴史と成長の軌跡

創業90年以上の老舗文具メーカーとしての歩み

 キングジム株式会社は、1948年に設立され、長い歴史を持つ老舗文具メーカーです。創業以来、文具や事務用品を中心に製品を展開し、日本国内のみならず海外市場にもその需要を広げてきました。「顧客第一主義」を掲げ、時代の変化に迅速に対応しながら成長してきた同社は、90年以上にわたる信頼と実績を築いています。また、2023年現在で約2,000人を超える従業員数を誇り、多様化するニーズに応えるための体制を整えています。

独自商品「テプラ」や「キングファイル」で築いたブランド力

 キングジムといえば、代表的な製品としてラベルライター「テプラ」やファイリング用品「キングファイル」が挙げられます。「テプラ」は、1988年に発売されて以来、ビジネスシーンを中心に広く活用され、現在ではラベル印刷の代名詞ともいえる存在です。また、「キングファイル」は、高品質で機能的なデザインが特徴で、企業のオフィスや教育現場で長年愛されている定番商品です。これらの独創的な商品開発によって、ブランド力を高め、競合他社との差別化に成功しました。

ペーパーレス化時代の課題と挑戦

 近年、ペーパーレス化の進展やデジタル化の加速により、文具・事務用品市場は従来の需要構造に変化が生じています。在宅勤務や少子化の影響にも直面しながら、キングジムはこの激動の時代に対応するため、さまざまな施策を講じています。近年では、「テプラ」といった製品のデジタル機能を強化するほか、海外市場への進出や、新規分野への展開を進めています。こうした挑戦を通じて、同社は時代の変化に即応し、着実な成長の軌道を描いています。

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M&Aを活用したキングジムの成長戦略

M&A開始の背景と目的

 キングジムがM&Aに本格的に取り組み始めた背景には、文具・事務用品市場の構造的な変化が挙げられます。在宅勤務の普及やペーパーレス化が進む中、同社の主力製品である「キングファイル」や「テプラ」の市場拡大には限界が見え始めています。また、少子高齢化や学校教育でのデジタル化といった社会の大きな潮流も、従来の成長モデルに課題を投げかけています。このような状況下で、キングジムは既存事業の補完及び新規事業の開拓を目的としてM&Aによる事業拡大戦略に取り組み始めました。

実施された主な買収案件とその効果

 キングジムはこれまでに複数のM&Aを実施し、事業領域の拡大と多角化を進めてきました。例えば、2001年にはフォトフレームの製造を手掛ける長島商事(現ラドンナ)を買収。さらに2021年には雑貨やルームフレグランスを取り扱うライフオンプロダクツを、2022年にはキッチン用品の販売を行うエイチアイエムを子会社化しました。このような戦略的買収により、文具・事務用品を中心とした事業から、家具・雑貨・生活用品へと事業領域が広がりました。

買収先とのシナジー効果の具体例

 キングジムが行った買収は、事業の多角化に留まらず、他の事業とのシナジー効果を生み出すことに成功しています。例えば、雑貨やインテリア事業を手がけるライフオンプロダクツの買収により、「テプラ」といったラベルライターの用途が家庭内や個人利用分野へと広がる可能性が見出されています。また、2020年に作業手袋を製造するウインセスを買収したことで、オフィス用品と安全用品を組み合わせた新たな市場セグメントにも進出しました。このように、各買収案件が相乗的な価値を生み出す設計がM&A戦略の特長となっています。

競合との差別化に繋がる新規事業の展開

 M&Aを通じて新規事業に参入することで、キングジムは競合他社との差別化にも成功しています。特に、インターネット家具販売事業を行う「ぼん家具」の運営開始や、デザイン性に優れた造花を扱うアスカ商会の買収は、「文具メーカー」という枠を超えた新たなブランド価値を創出しました。また、雑貨や家具といった多様な製品ラインナップを通じて、家庭やオフィス環境でのライフスタイル全体を提案できる企業としての姿勢を打ち出しています。

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M&A戦略が支える経営の転換点

赤字脱却を目指す経営施策の全体像

  キングジムは近年、ペーパーレス化や少子高齢化などの社会的変化により、文具市場の縮小という課題に直面しています。この厳しい環境の中で同社は、従来の事業に頼らず収益の柱を多角化することで赤字脱却を目指しています。その中心に位置づけられているのがM&A戦略です。同社は2024年6月期予測で一時的な営業損益の赤字転落を発表しましたが、2025年6月期には黒字化を目指す計画を掲げています。これに伴い2027年6月期までの間に35億円をM&Aに投じる方針を明らかにしており、経営体制の立て直しに全力で取り組んでいます。この戦略は、単なるコスト削減ではなく、新たな市場や成長分野への積極的な進出を意味しており、同社の未来への挑戦を象徴する施策といえます。

組み立て式家具や雑貨市場への進出

  キングジムはM&Aを通じて家具や雑貨市場への進出を積極的に進めています。特に注目を集めているのが、組み立て式家具やインテリア雑貨です。例えば、2014年に買収したインターネット家具販売を手がける「ぼん家具」や、2021年に子会社化した香り製品を扱う「ライフオンプロダクツ」などが挙げられます。同社は文具市場におけるノウハウを活かし、機能性だけでなくデザイン性にもこだわった商品展開を図っています。従来の「事務用品メーカー」という枠を超え、ライフスタイル分野への進出を進めることで、同社のさらなる成長をサポートしています。また、雑貨市場は文具業界とは異なる顧客層を持つため、新たな収益源の確保にもつながる重要な取り組みとなっています。

財務戦略と収益構造の変革

  キングジムは収益構造の変革にも注力しており、財務面の強化を重要な戦略の一環としています。従来の文具・事務用品に依存した収益モデルから脱却し、新たな事業分野での収益の柱を構築することで、経営の安定化を図っています。同社は近年のM&Aによる新規事業の買収効果を最大化しながら、既存事業の効率化やコスト削減といった施策を進めています。また、買収した企業とのシナジー効果を積極的に追求することで、収益性を向上させています。さらに経営資源を効率的に配分するための財務戦略に基づき、中長期的な視点での収益改善を目指しています。これにより、不安定な市場環境においても持続可能な成長を実現しようとしている点が同社の注目すべきポイントです。

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キングジムが描く未来と成長モデル

「攻め」と「守り」を併せ持つ経営方針

 キングジムは、文具メーカーとしての基盤を守りながらも、新たな市場や事業領域に果敢に挑む「攻め」と「守り」を融合させた経営方針を掲げています。老舗メーカーとして培ったブランド力や信頼を大切にしつつ、M&Aを活用した成長戦略を展開することで、企業価値を高める狙いがあります。このバランスの取れた姿勢により、既存顧客の需要を満たしつつも、新たな顧客層を獲得する取り組みを加速しています。

M&Aを通じたさらなる事業領域拡大の可能性

 キングジムは近年、M&A活動を通じて事業領域の拡大を積極的に進めています。2021年にはライフオンプロダクツ、2022年にはエイチアイエムを子会社化するなど、文具にとどまらない多様な分野で新たな販路を築いてきました。同社のM&A戦略は、既存事業と相乗効果を発揮する事業を狙う「土地勘のある隣の土地を開拓する」アプローチを重視しています。この一貫した方針により、異業種にもスムーズに進出できる仕組みを構築し、さらなる成長の可能性を高めています。

デジタル化時代に対応する製品開発の重要性

 デジタル化やペーパーレス化が進む中、キングジムは市場の変化に対応する新しい製品開発に注力しています。「テプラ」や「ポメラ」などの独創的な商品を開発することで、これまで同社が築き上げた革新性をデジタル時代に応用しています。また、デジタルとアナログの融合を進めることで、従来製品の価値を高め、市場での高い競争力を維持しています。これにより、デジタル化時代における顧客ニーズを的確に捉えた商品展開が可能になっています。

グループ全体での市場価値最大化を目指す

 キングジムは、M&Aによる事業拡大を通じてグループ全体の市場価値の最大化を目標としています。特に、各事業間でシナジー効果を発揮できるような体制整備を進め、それぞれの強みを生かした多角的な事業運営を実現しています。同時に、経営リソースを効率化し、新たな市場開拓への投資を積極的に行っています。このような施策により、同社は日本国内にとどまらず、グローバル市場における競争力を高め、長期的な成長を目指していきます。

この記事を書いた人

コトラ(広報チーム)