昨今注目される「DXエンジニア」。好待遇の求人も多く、人々の関心が高まっていますが、「どんなスキルが必要で、どんな仕事をするのか」を知りたいという方も多いのではないでしょうか?
さらに、「49%の仕事がAIに取って代わられる可能性がある」と言われる現代において、「DXエンジニア」という職業に将来性があるのか、と考える方も多いでしょう。
この記事では、初心者向けにDXエンジニアの仕事内容や必要なスキル、資格、年収、将来性などについてわかりやすく解説していきます。
DXエンジニアの魅力
DXエンジニアは、高度な能力を求められる職種ではありますが、その分、好待遇でやりがいのある仕事です。自分のスキルを活かし、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進することで、大きな成果を生み出すことができます。
この記事を通して「自分に向いていそう」と思えた方は、ぜひDXエンジニアとしてのキャリアを検討してみてください。
そもそもDXってなに?
DXとは何か
DXとは、Digital Transformationの略称です。一単語ずつ直訳すれば「Digital=電子的に」「Transformation=変形する(変容する)」となりますが、現在では熟語的に特別な意味を持つため、日本語でも「デジタル・トランスフォーメーション」とそのまま訳されるようになりました。
ざっくり言うと、「ITを活用することで、人々の生活をより良くすること」を意味します。2004年にスウェーデンのウメオ大学のエリック・ストルターマン教授によって「ICTの浸透が人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させること」と定義され、広まった概念です。
近年の日本におけるDXの定義
DXの定義は現在においても統一されているわけではなく、使い方も人や場面によって異なります。しかし、総務省の令和3年版 情報通信白書においては、以下のように定義されています:
”Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)企業が外部エコシステム(顧客、市場)の劇的な変化に対応しつつ、内部エコシステム(組織、文化、従業員)の変革を牽引しながら、第3のプラットフォーム(クラウド、モビリティ、ビッグデータ/アナリティクス、ソーシャル技術)を利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネスモデルを通して、ネットとリアルの両面での顧客エクスペリエンスの変革を図ることで価値を創出し、競争上の優位性を確立すること” |
引用元:総務省の令和3年版 情報通信白書
なぜ、DXと略されるの?
Digital Transformation(デジタル・トランスフォーメーション)の頭文字は「DT」なのに、なぜ「DX」と略されるのでしょうか?
その理由は単純で、英語圏では接頭辞の「Trans」を「X」と書く慣習があるためです。知らなくても困りませんが、豆知識として覚えておくと良いでしょう。
DXエンジニアってどんなお仕事?
一般的に「DXエンジニア」とは、企業が競争力を保つために行う変革(DXプロジェクト)を実行するためのスキルを持つエンジニア(技術者)の総称であり、特定の職種を指す言葉ではありません。
DXを実行するプロジェクトに携わるエンジニア全般を指す言葉であり、その役割は企画から実装、保守運用まで多岐にわたります。
DXに対応する人材の分類
IPA(独立行政法人情報処理推進機構)の「IT人材白書2020」では、DXに対応する人材を以下の7種に分類し、説明しています。
DXに対応する人材 (呼称) | 定義 | DXエンジニアとして 求められる技術力 | |
1 | プロジェクト マネージャー | DXやデジタルビジネスの実現を主導するリーダー格の人材 | △:DXに関わる全ての業務を主導するため、技術力だけでなくマネジメントやマーケティング能力も必要とされますが、DX技術の最新動向などの、高い知見も必要とされます。 |
2 | ビジネスデザイナー | DXやデジタルビジネス(マーケティング含む)の企画·立案·推進等を担う人材 | ×:ビジネスと技術の両方に明るい人材が望ましいですが、特にビジネスをよく理解していることが一番に求められるポジションになります。 |
3 | テックリード (エンジニアリングマネージャー、アーキテクト) | DXやデジタルビジネスに関するシステムの設計から実装ができる人材 | 〇:目的に沿ったシステムを設計/実装する為の高い技術力が必要とされます。 |
4 | データサイエンティスト | 事業·業務に精通したデータ解析·分析ができる人材 | 〇:業務理解力と、データ解析/分析ができる技術力が必要です。 |
5 | 先端技術エンジニア | 機械学習、ブロックチェーンなどの先進的なデジタル技術を担う人材 | 〇:先進的なデジタル技術を扱える人材のことですので、高い技術力が必要とされます。 |
6 | UI/UXデザイナー | DXやデジタルビジネスに関するシステムのユーザー向けデザインを担当する人材 | 〇:先進的なデジタル技術を扱える人材のことですので、高い技術力が必要とされます。 |
7 | エンジニア/プログラマ | システムの実装やインフラ構築/保守等を担う人材 | 〇 |
このように、DXに対応する人材のほとんどが、高いIT技術力が必要とされるエンジニアです。
DXプロジェクトの4工程におけるDXエンジニアの役割
DXプロジェクトに限らず、ITプロジェクトの工程には、以下の4つがあります。
企画立案システム開発システムの実行システムの運用と保守管理 |
この4つのフェーズ毎に、DXエンジニアの役割や仕事の内容について解説いたします。
役割1:DXにおける企画立案
DXは企業が競争力を保つために行う変革ですので、まずはその企業が抱える問題を洗い出し、そのための最適な解決策となる企画を考えます。
課題や予算は企業ごとに異なるため、総合的な判断を行いつつ企画を立てる必要があります。
比較的大規模なDXプロジェクトの場合、「プロジェクトマネージャー」や「ビジネスデザイナー」などが、業界動向や自社の状況を多角的に見渡しつつ、プログラマやコンサルタントなどの専門職からの意見を聞きながら実行可能な計画を立てます。
DXプロジェクトは費用も時間もかかることが多いです。課題の緊急度にもよりますが、マネジメント層の承認を得つつ、来年度以降に予算を組む場合や、長期計画を立てて実行することがあります。
役割2:DXのためのシステム開発
システム開発は、計画に基づいたシステム構築作業です。最近はクラウドを利用することも多いので、ネットワーク設計及び構築も含まれます。
まず、テックリード(エンジニアリングマネージャー)がシステム設計やネットワークプランを策定します。
そのプランに基づき、プログラマがプログラミング言語を駆使してシステムを構築し、ネットワークエンジニアが詳細設計や構築を行います。
最後に、テストで動作の正常性を確認します。
新規システム開発の場合、仕事内容が「DXを目的としているかどうか」によって求められる技術が変わることはほぼありません。しかし、DXにおいては旧システムからの移行作業が伴うことがよくあるため、「旧システムとの互換性を意識した設計や構築」が必要な場合があります。この意味で、旧システムに精通し、レガシーな言語も扱えるプログラマは「DXに強いプログラマ」と言えます。
役割3:システムの実行
無事に開発のテストが完了すると、システムの運用が開始されます。
実際に業務データを運用し始めると、設計時に想定していない問題が発生することがあります。この段階でも、開発に携わったDXエンジニアのフォローが必要です。
システムの運用と保守管理
システムが本格稼働した後もDXエンジニアの仕事は続きます。企業のDXを支えるシステムがトラブルで利用不可になると、企業活動に大きな影響を与えます。
そのため、システムの安定運用を監視し、トラブル時には迅速に対応するため保守管理が必要です。
分業として、構築したエンジニアとは別の監視保守体制を組むこともありますが、システム内部に問題が見つかった際には、構築を担当したDXエンジニアが対応することが求められます。
DXエンジニアに求められるスキル
DXエンジニアに求められるスキル
DXエンジニアに求められるスキルは多岐にわたります。すべてのDXエンジニアがすべてのスキルを必要とするわけではありませんが、多くのスキルを身につけることで採用されやすくなり、仕事の幅も広がります。
基本的なIT技術全般に関する知見
どの役割であっても、DXプロジェクトに関わるエンジニアには基本的なIT技術全般に関する知見が求められます。専門外の部分でも、知らない単語が出てきた際に検索して概要を理解できる程度の基礎知識が必要です。
新しい技術を吸収し続ける力
IT業界は成長や変化が激しく、常に新しい技術や考え方が生まれます。エンジニア職すべてに共通することですが、常に最新の動向や先端技術に目を向け、学び、吸収し続ける力が求められます。
データ分析能力
DXプロジェクトは経営に資する必要があります。「初期投資が回収できるか」、「システム導入によって得られる効果」など経営者視点での分析能力も必要です。
プロジェクトマネジメントスキル
DXプロジェクトは多数のメンバーが参画し、長期計画で実行することが多いです。プロジェクトマネジメントスキルはPM(プロジェクトマネージャー)に特に求められますが、他メンバーにも予算管理やスケジュール管理などマネジメント目線を持つことが求められます。
システムの実装スキル
DXを実現するためには、企業のビジネスに合わせたシステム要件を決定し、実装するスキルが必要です。魅力的なシステムの構築計画を立てても、有用なシステムに実装できなければ意味がありません。特に先端IT技術を実装する場合は高いシステム実装スキルが求められます。
コミュニケーションスキル
DXプロジェクトは多くのメンバーが協業するため、コミュニケーションスキルが重要です。経営層からのヒアリングや専門分野の説明、作業分担など、多様なシーンで円滑なコミュニケーションが求められます。
マルチスキルを持つ人材が求められている
DXエンジニアに求められるスキルはたくさんあります。役割によって必要とされるスキルに濃淡はありますが、「システム開発や構築に明るいDXコンサルタント」や「データ分析力を持ち経営層に企業メリットを説明できるプロジェクトマネージャー」のように、マルチスキルを持つ人材が求められています。
一つの先進的な分野に精通するのも良い道ですが、DXエンジニアとして活躍するには、自分の専門分野だけでなく他のスキルも身につけることを意識すると、活躍の場が広がっていくでしょう。
DXエンジニアに有利な資格
DXエンジニアに必須の資格はないが、有利になる資格
DXエンジニアの仕事をするために必須となる資格は特にありません。しかし、高度なITリテラシーや技術力が求められるため、そのポジションに起用されるためには、該当する一定のスキルがあることを客観的に示す必要がある場面もあるでしょう。そんな時に役立つ有利な資格をいくつかご紹介します。
プロジェクトマネージャーや上位工程を目指す人向けの5つ資格
検定名称とURL | 団体名 | 内容 |
DX検定 | 一般社団法人日本イノベーション融合学会 | IT先端技術トレンド(IT)とビジネストレンド(BT)の知識検定 |
プロジェクトマネージャ試験 | 独立行政法人情報処理推進機構 (IPA) | プロジェクトを取り巻く環境変化やステークホルダの多様な要求に柔軟に対応しながら、プロジェクトを確実に成功に導くマネージャを目指す方に最適です。 |
システムアーキテクト試験 | 独立行政法人情報処理推進機構 (IPA) | システム開発の上流工程を主導する立場で、豊富な業務知識に基づいて的確な分析を行い、業務ニーズに適した情報システムのグランドデザインを設計し完成に導く、上級エンジニアを目指す方に最適です。 |
応用情報技術者試験 | 独立行政法人情報処理推進機構 (IPA) | ITエンジニアとしてのレベルアップを図るには、応用情報技術者試験がお勧めです。技術から管理、経営まで、幅広い知識と応用力が身に付き、システム開発、IT基盤構築などの局面で、高いパフォーマンスを発揮することができます。 |
ネットワークスペシャリスト試験 | 独立行政法人情報処理推進機構 (IPA) | ネットワークの固有技術からサービス動向まで幅広く精通し、目的に適合した大規模かつ堅牢なネットワークシステムを構築し運用できるネットワークエンジニアやインフラ系エンジニアを目指す方に最適です。 |
DX検定
2018年7月に創設された、先端IT技術 トレンドとビジネストレンドを幅広く問う知識検定です。
成績優秀者はスコアに応じ、以下のレベル認定証が発行されます。
*スコア800以上 ⇒「DXプロフェッショナル レベル」
*スコア700以上 ⇒「DXエキスパート レベル」
*スコア600以上 ⇒「DXスタンダード レベル」
(※レベル認定は2年間有効)
また、ご参考として、<IPAが定義する「DX推進人材像」と比較した、DX検定での推奨レベル>が以下の通り定められています。
引用:DX検定™とは | DX検定™ (nextet.net)
プロジェクトマネージャ試験
対象者像としては、”高度IT人材として確立した専門分野をもち、組織の戦略の実現に寄与することを目的とするシステム開発プロジェクトにおいて、プロジェクトの目的の実現に向けて責任をもってプロジェクトマネジメント業務を単独で又はチームの一員として担う者”とされています。
引用:プロジェクトマネージャ試験 | 試験情報 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構
システムアーキテクト試験
対象者像としては、”高度IT人材として確立した専門分野をもち、ITストラテジストによる提案を受けて、情報システムを利用したシステムの開発に必要となる要件を定義し、それを実現するためのアーキテクチャを設計し、開発を主導する者”とされています。
引用:システムアーキテクト試験 | 試験情報 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構
応用情報技術者試験
対象者像としては、”ITを活用したサービス、製品、システム及びソフトウェアを作る人材に必要な応用的知識・技能をもち、高度IT人材としての方向性を確立した者”とされています。
引用:応用情報技術者試験 | 試験情報 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構
ネットワークスペシャリスト試験
対象者像としては、”高度IT人材として確立した専門分野をもち、ネットワークに関係する固有技術を活用し、最適な情報システム基盤の企画・要件定義・開発・運用・保守において中心的な役割を果たすとともに、固有技術の専門家として、情報セキュリティを含む情報システムの企画・要件定義・開発・運用・保守への技術支援を行う者”とされています。
引用:ネットワークスペシャリスト試験 | 試験情報 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構
より具体的な技術力を客観的に示せる5つの資格
ここでご紹介する資格は、実際にシェア率の高いクラウドサービスを利用したり、プログラミングなどの構築を行うエンジニア向けのものです。
検定名称とURL | 団体名 | 内容 |
AWS認定 | アマゾンウェブサービス(Amazon Web Services) | AWS 認定は、業界で認められている認証情報でクラウドの専門知識を認証し、学習者が信頼性と自信を築くだけでなく、組織が AWS を使用してクラウドを主導していくスキルのあるプロを識別するのに役立ちます。 |
Microsoft Azure認定資格 | マイクロソフト (Microsoft) | 最新のクラウド環境における技術的な知識と能力を構築し、実証することができます。 |
Google Cloud認定資格 | グーグル(Google) | Google Cloud テクノロジーを使用した特定の職務の遂行能力を評価するものです。厳正に開発された業界標準の手法を使用して、各職務に必要な知識、スキル、能力が評価されます。 |
Scrum Alliance認定Certified ScrumMaster®(CSM®) | 米Scrum Alliance社 | スクラムマスターに必要なスキルを保持していることを証明する認定資格 |
Python3エンジニア認定基礎試験 | 一般社団法人Pythonエンジニア育成推進協会 | Python3の文法基礎を問う試験 |
上から3つは、クラウドベンダー系の認定資格です。
大手クラウド3社である、AWS/Microsoft Azure/Google Cloudは、非常に高いシェアを持っており、今後も利用が伸びる見込みですので、これらが扱える技術力を示すのに、最適な資格となるでしょう。
PaaS/IaaS利用者のAWS、Azure、GCP利用率
(出典)MM総研「国内クラウドサービス需要動向調査」(2022年6月時点)
AWS認定
”AWS 認定は、業界で認められている認証情報でクラウドの専門知識を認証し、学習者が信頼性と自信を築くだけでなく、組織が AWS を使用してクラウドを主導していくスキルのあるプロを識別するのに役立ちます。”
引用元:AWS 認定 – AWS クラウドコンピューティング認定プログラム | AWS (amazon.com)
調査時点で、ベータ版を含め、12種類の認定パスがあります。
Microsoft Azure認定資格
”Microsoft 認定資格を取得すると、世界的に認められた実社会のスキルを持っていることの証明になります。 Microsoft 認定資格は、急速に変化するテクノロジに遅れずについていくことへの確約を示し、仕事上自分が担っている役割においてスキル、効率、報酬が上がる可能性を高めるのに役立ちます。”
引用元:Microsoft Azure 認定資格の概要 | Microsoft Learn
調査時点で、22種類のAzure認定資格があります。
Google Cloud認定資格
”職務ベースの Google Cloud 認定資格は、Google Cloud テクノロジーを使用した特定の職務の遂行能力を評価するものです。厳正に開発された業界標準の手法を使用して、各職務に必要な知識、スキル、能力が評価されます。”
Google Cloud 認定資格の概要 – Google Cloud 認定資格 ヘルプ
調査時点で、11種類のGoogle Cloud認定資格があります。
Scrum Alliance認定Certified ScrumMaster®(CSM®)
”スクラムマスターに必要なスキルを保持していることを証明する認定資格です。
米Scrum Alliance社の認定資格であり、スクラム関連資格において知名度の高い資格となります。”
引用元:Certified ScrumMaster®(CSM®)スクラムアライアンス認定スクラムマスター研修 | TIS株式会社
アジャイル開発のフレームワークであるスクラムの進行役を担う人材を証明する資格のうちの一つです。トレーニングプログラムを受けてから認定試験を受ける必要があります。
Python3エンジニア認定基礎試験
Python3の文法基礎を問う試験で、出題範囲は、オライリー・ジャパンの「Pythonチュートリアル」の掲載内容及び、一般的な知識からとされてます。
参考:基礎試験 | Python試験 (pythonic-exam.com)
Python は、AI や機械学習、ビッグデータやデータ分析、各種自動化、ウェブなど幅広い分野の開発に利用されているプログラミング言語です。
昨今利用率が高まっているというデータもありますので、試験にも人気が集まっています。
「あなたが最も使っているプログラミング言語は何ですか」という設問に対する回答。
グラフには上位10言語を示した(出所:日経クロステック)
引用元:「最も使っている」プログラミング言語で異変、前年首位のJavaが王座陥落 | 日経クロステック(xTECH) (nikkei.com)
DXエンジニアの年収は?
DXエンジニアの年収は、一言で言えば高水準です。ただし「DXエンジニア」は、「DXプロジェクト」を行うためのスキルを発揮するエンジニアの総称であり、年収もそれぞれのポジションやキャリアによって大きく変わります。
参考にできるデータとしては、IPAの「IT人材白書2020」に掲載されている「先端IT従事者、先端IT非従事者の現在の年収」が挙げられます。
IT人材の中でも、「先端IT従事者」の方が年収が高めであることが読み取れます。
「先端IT従事者」とは、具体的にはAIエンジニアやデータサイエンティストのようなAIやIoT、ビッグデータなどの最先端技術に精通し、付加価値の創出や業務効率化に貢献するIT人材のことですので、DXエンジニアに含まれています。
DXエンジニアの将来性
以下は、2015年の野村総合研究所のレポートからの引用です。
“英オックスフォード大学のマイケル A. オズボーン准教授およびカール・ベネ ディクト・フレイ博士との共同研究により、国内 601 種類の職業について、それぞれ人工知能やロボット等で代替される確率を試算しました。
この結果、10~20 年後に、日本の 労働人口の約 49%が就いている職業において、それらに代替することが可能との推計結果 が得られています。”
引用元:日本の労働人口の49%が人工知能やロボット等で代替可能に (nri.com)
「49%の仕事がAIに取って代わられる可能性がある」と言われる時代の中で、「DXエンジニア」という職業に、将来性はあるのでしょうか。
AIに代わられる可能性は?
ロボットやAIが得意とする分野は、単純な繰り返し作業や、膨大なデータからより良い答えを導き出すといった比較的単純な作業です。AIは膨大なデータを迅速に検索する能力においては人間を凌駕しています。
しかし、出された答えが適切かどうかの判断や、新しいものを創出するためには、最終的には人間の判断力が必要です。
一方、DXは「劇的な変化に対応」し「変革を図ることで価値を創出する」非常にクリエイティブな営みです。DXに携わるDXエンジニアの仕事は、役割によって濃淡はあるものの、常に最新技術や社会情勢に目を向けてアップデートし続ける必要があり、クリエイティブな側面を多く含みます。
そのため、DXエンジニアの仕事をAIで代用することは難しいと考えられます。
DXエンジニアをとりまく現状
経済産業省は2018年に「2025年の崖」という警鐘を鳴らし、多くの企業がDXの必要性を理解しつつも対応が追いついていない現状があります。
DXが進められない要因の一つに人材不足があります。6割以上のIT企業でDXエンジニアが不足していると言われています。
そのため、今後もDXエンジニアへの需要は高まり続けると予想されます。
2025年の崖とは
経済産業省が2018年にDXレポートにて、DXの必要性を訴えるべく、警鐘を鳴らす意味で使われた言葉です。
“複雑化・老朽化・ブラックボックス化した既存システムが残存した場合、2025 年までに 予想される IT 人材の引退やサポート終了等によるリスクの高まり等に伴う経済損失は、 2025 年以降、最大12兆円/年(現在の約3倍)にのぼる可能性がある”
引用元:DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~
未経験でDXエンジニアになる方法
DXエンジニアに未経験から挑戦する3つの方法
DXエンジニアは人手不足の現状もあり、未経験者でも挑戦できる求人は存在します。様々なケースが考えられますが、ここではよくある3つのパターンについてご紹介します。
1. 新卒でDXを担うIT業界の会社に就職
大学や大学院で情報工学や理学を専攻し、DX事業を担う会社に就職するルートです。DX業務には特別な学歴や資格は必要とされませんが、業務をこなす上で高度な知識や技術が求められます。
特にAIなどの先進分野のエンジニアについては、大学院の修士や博士課程を修了している人が多く採用されています。
2. DXの技術を身につけて転職や異動を目指す
現在IT業界以外で働いている人がDXエンジニアを目指すのはハードルが高いかもしれません。しかし、自分に合っていて目指したいと感じる場合には、スクールや独学でDX技術を身につけ、資格を取得することで転職を目指す方法があります。
3. プログラマやエンジニアとして経験を積み、昇格する
プログラマやエンジニアも人手不足のため、未経験採用の可能性があります。未経験で一足飛びにDXエンジニア職を目指すのにハードルが高い場合には、まずはプログラマやエンジニアとして経験を積み、その後に昇格を目指すという方法もあります。
まとめ
DXエンジニアという職業について、初心者向けに仕事内容、必要スキル、資格、年収、将来性などについて解説しました。
国も警鐘を鳴らすほど、日本のDXは急務となっていますが、人手不足が続いています。DXエンジニアは高いスキルが求められますが、待遇も良くやりがいのある仕事です。この記事を通じて、DXエンジニアを目指す方が一人でも増えることを願っています。