高度な数理的知識を生かす、年金数理のプロフェッショナル「年金数理人」

高度な数理的知識を生かす、年金数理のプロフェッショナル「年金数理人」
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68 - 高度な数理的知識を生かす、年金数理のプロフェッショナル「年金数理人」

年金数理とは

年金制度において、長期的な財政計画を立てる際の数学的理論や計算方法などの数学的手法を総称して「年金数理」と言います。年金数理は、「大数の法則」、「収支相等の原則」の2つの基本原則に基づいています。

また、「年金数理人」は年金数理のプロフェッショナルとして、高度な数理的知識をはじめとする専門知識を活用し、年金数理書類の適正性の確認・年金財政状況の診断や運営のアドバイス・年金制度のリスク管理(年金ALM)・企業会計(退職給付会計)における退職給付債務の評価や制度設計コンサルティング等の業務などに携わっています。

年金数理人になるには

年金数理人になるには、次の4つの要件を満たし、厚生労働大臣の認可を受ける必要があります。

1.知識

  1. 公益社団法人日本アクチュアリー会が実施する試験(資格試験)の全科目に合格
  2. 公益社団法人日本年金数理人会が実施する試験(能力判定試験)の全科目に合格
  3. 「資格試験」と「能力判定試験」に関して、以下の要件を全て満たす
  • 資格試験の「数学」及び「損保数理」(平成19年度以前については資格試験の「数学」)または能力判定試験の「基礎数理Ⅰ」に合格
  • 資格試験の「生保数理」または能力判定試験の「基礎数理Ⅱ」に合格
  • 資格試験の「年金数理」または能力判定試験の「年金数理」に合格
  • 資格試験の「会計・経済・投資理論」または能力判定試験の「会計・経済・投資理論」に合格
  • 能力判定試験の「年金法令・制度運営」に合格

2.経験

確定給付企業年金等の年金数理に関する業務に5年以上従事した者であること。

3.責任者たる経験

年金数理業務の責任者として、年金数理業務に2年以上従事した者であること。

4.社会的信用

十分な社会的信用を有するものであること。

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年金数理人の業務内容の変化

従来、年金数理人の主な業務は、厚生年金基金・国民年金基金・確定給付企業年金から厚生労働大臣へ提出される「年金数理に関する書類」の適切性を確認し、継続的に年金財政状況をチェックし、財政運営のアドバイスを行うというものでした。
しかし、社会や経済環境の変化に伴い、近年は年金数理人の業務範囲も大幅に拡大しています。
特に、2000年4月の「退職給付会計基準」導入以降は、退職給付債務等の評価や確認業務、退職金や企業年金および人事制度設計などのコンサルティング業務、年金制度の債務や資産運用のリスク管理業務(年金ALM、LDI)など、数理的専門知識を必要とする業務の拡大に伴い、年金数理人の業務内容も多様化しています。

年金数理人の活躍の場

年金数理人の業務範囲拡大を受けて、年金数理人の活躍の場も広がってきています。
これまで、年金数理人の活躍の場は主に信託銀行、生命保険会社などでした。
しかし現在では、年金数理人が有する確率・統計学を中心とした数理的専門能力に対する社会の需要が高まっており、保険会社、銀行、証券会社、コンサルティング会社、シンクタンクや監査法人などにも活躍の場が広がっています。

年金数理人の将来性

日本では今後、一層拍車がかかる少子・高齢化により、公的年金とともに企業年金の役割はますます重要なものとなっていきます。
2017年1月には確定給付企業年金制度において、リスク対応掛金やリスク分担型企業年金の導入が可能になりました。さらに2024年12月の確定拠出年金制度の改正により、拠出限度額のおいて他制度掛金相当額等が反映されることとなり、確定給付企業年金制度においても他制度掛金相当額を適切に算出することが求められる予定です。
また、昨今の経済のグローバル化により、2009年に国際財務報告基準(IFRS)の任意適用が開始され、その適用企業は年々増加しています。

この様な様々な状況の変化に伴い、多方面での年金数理人の需要は今後もますます高まっていくものと思われます。このため、年金数理人は従来の業務に加えて、数理的専門能力を最大限活用し、より幅広い分野での活躍が期待されています。

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この記事を書いた人

村上慶

東北大学法学部卒。東海銀行(現三菱UFJ銀行)及び子会社にて有価証券運用、債券投信のファンドマネージャーを担当。地方銀行及びトヨタファイナンシャルサービスにて市場リスク管理に従事。年金コンサルティング会社で資産運用アドバイザーを担当。日本証券アナリスト協会認定アナリスト、CFA協会認定証券アナリスト、FRM。
[ 担当業界 ]
投信投資顧問、金融フロント、マーケットビジネス、リスクマネジメント