近年、多様化・複雑化するリスクに対して横断的なマネジメントを行う、「CRO(最高リスク責任者)」について解説します。
CROとは
CROとは”Chief Risk Officer”の略で、「最高リスク責任者」を指します。
企業において、リスクへの対応や危機管理など、多様化するリスクに対して、横断的なリスクマネジメントを担う最高責任者です。日本ではまだあまり馴染みがありませんが、欧米の金融機関などではCROの設置はすでに一般化しています。
また、CROはCFOなどとともに、CEOを補佐するCxO(経営幹部)の一員として、時にCEOに対する“ブレーキ役”も担います。CEOが企業の成長に責任を負うのに対し、CROは「企業の健全な経営に対して責任を負う」立場にあるので、CEOが推進する経営方針に対し、リスクマネジメントの観点から見直しを迫ることもあります。
CRO導入の背景
近年、ビジネスの現場が多様化していることから、企業がさらされるリスクも多様化、複雑化しています。
またIT化によって、企業はサイバーリスクとも常に隣り合わせの状態です。
このような中で、常にリスクを把握しトラブルの損害を最小限に留めることは、企業経営にとって必要不可欠です。適切なリスクマネジメントを行わず、損失を拡大させてしまった場合は、「経営に問題がある」と認識されてしまうケースもあり、企業は損害を被るだけではなく、ブランドイメージも傷ついてしまう可能性があるからです。
信頼関係を守り、トラブルで経営が傾くのを防ぐためにも、リスクマネジメントは、大企業に限らず、中小企業も力を入れたい重要な課題のひとつとなっています。
そのため、国内でも大企業をはじめとして中小企業でも、CROを置くことにより、リスクに対して積極的・戦略的に対応できるようにしようという動きが拡大しています。
CROの仕事内容
CROの主な仕事内容であるリスクマネジメントは、「リスクコントロール」と「リスクファイナンス」に分類されます。
リスクコントロール
✔リスクを伴う活動そのものを取りやめる「回避」
✔損失の発生を未然に防ぐ対策を取る「損失防止」
リスクファイナンシング
✔保険や契約などを通して第三者から損失を補助してもらう「移転」
✔損失が発生した際に資金の積み立てなどで自己負担する「保有」
CROは多様化・複雑化するリスクに対して、リスクコントロールや、リスクファイナンシングを適切に行うことで、リスクマネジメントを円滑に進めていく必要があります。
企業を守る非常に責任のある職務ですが、それと同時に経営幹部として企業経営を支える、やりがいも大きな仕事と言えます。